第4話 これから

 後から駆けつけて来た裁判官や担当本なども、ドデカイ打ち上げ花火を見上げるようにして見送っていた。そして裁判所がこれからどうなるのかを思い思いに口にしながら、仕事へと戻って行く。


「……」


 俺らは執務室に戻ることとした。 

 廊下を歩く時にも沈黙が流れていて、如何に堪えているのかは、震わせる肩が周囲にそれを伝えていた。


 そうして、扉を閉めると同時に・・・


 爆笑ーーーーーーーーーー!


 俺は絨毯の上で腹を抱えて笑い転げる!


「やべーー! お腹ヨジれるぅぅぅぅ!」


 シーレさんは自分の机に額を打ちつけて怪しい歓びの咆哮を上げる!


「もっとぉぉぉぉ!」


 涼ちゃんは一人壁際で背中を向けてうずくまり、体を震わせて噛み締めている!


「花魁の書……四十八手の手引き……ぐふっ!」


「それにしても、まさか【聖:法の書】が花魁キャラだったとは!? それも行かず後家ってなんだよ!?」


 我慢できずに、只ひたすら笑い転げる俺――!


「マイマスター! 曲がりなりにも世界の秩序を保っていた偉大な御方ですぞ! そのように笑って……は……ブッ! ――失敬!」


 シーレさんが更に激しく打ちつけ、悦びの鮮血を噴出する!


「103冊……相手はだれ? シングルマザー? くくく……」


 涼ちゃんの妄想が止まらない!


 ――そしてそんな俺たちとは反対に、サーシャは女の子座りで号泣していた。


「わ、わだぢ!? 立派な母親から生まれた子だって! みんな〈サーシャぢゃんも、お母さんみたいに立派にならなぐちゃだめだよ〉っで! 言ってくれてだのに~~っ!!」


 その様子に気が付いたシーレさんが真顔に戻し歩み寄り、片膝を付いて頭を撫でてやりながら、「サーシャ殿、花魁だって立派な職業です。何故ならば客人の為、あんなことやこんなこと……はたまた……はぁ、はァ、ハァ……想像するだけで体中にあざが出来てしまいそうです!」と、本来の悦びとするものに感情を爆発させて昇天☆


 するとそれを見ていたサーシャがまた泣きじゃくるので、俺は涙を拭きながら声を掛けた。


「この世界に対しての貢献度は計り知れないんだから、別にいいじゃん」


「で、でも~~……う″っ、ぶわぁぁぁぁん!!」


 逆効果でした★


 サーシャは涙と鼻水を。

 シーレさんはよだれ恍惚こうこつとした表情を。

 そして涼ちゃんは冷静になるのが一人早かったようで、気が付けば俺の法服の肩口に、『涼命』という字を暇潰しのようにして縫い始め、俺はどうしたもんかと困ってしまう。


 そんな感じで各々が好き勝手なことをやっていると、執務室の扉が勢いよく開いた――


「た、大変です!」


 他所よその若い男性事務官さんが、顔を覗かせてきた。

 よほど焦っていたのか、黒系のソックスを履いているとはいえ、スーツ姿に裸足だ。


「どうがしまじたぐわっ!?」と、体に比べて3倍サイズに腫れ上がった顔でサーシャが尋ねると、その様子に事務官さんは怯みつつも「大勢の裁判官の方が、〈状況が変わったらまた呼んで〉と言って、帰ってしまわれました!」と、俺らに知らせる。


「なんで?」


威光ホーリーが流れ込んで来ない為、仕事にならないそうです!」


「へ?」


 サーシャへ顔を向けてみた。


「ざきぼどから、威光ホーリーが感じられないでず」


「は?」


「【Mother】がいなくなっで、威光ホーリーが消失じだようなんでず」


「……ん? ということは?」


制約レギュルスが掛かりまじぇん!」


「……へー。仕事にならない、か」


「ばび(はい)!」


 フム。ということは、俺がこの世界に残っていても意味がないということだよな……そうか、それじゃあ――


「あの~……」


 三人が俺の方を向く。

 どうやら俺が謂わんとすることに、既に気が付いているようだ。


 もの、すっごい、目で、俺を見ている……。


 サーシャは行かないでという眼差しで。


 シーレさんは苛めてという双眸で。


 涼ちゃんは呪い殺すという諸瞳で――。


「わ、わかったよ! とにかく居ればいいんでしょ!?」


 三人が勢いよく抱きついて来た……って、ちょっと涼ちゃん!? 何時の間にそんな派手な色を使ってたわけ!? ……シーレさん、地味に家畜と呼べと耳元で囁かないでください。

 そしてサーシャ。どさくさ紛れに俺の法服で鼻をかまんでくれ……ハァ~、こりゃ相当メンドイ。


「それで、今後予期されそうな事って、ある?」


 鼻声のままに、サーシャが話す。


「【Mother】の威光ホーリーが消えるということは、判決の結果やその効果が継続中のもの、また、未履行のものも制約レギュルスが解けてしまうと思います。そして、当然ここセントーリア最高裁判所の権威もなくなってしまうでしょう。それに私達、本の存在も危ぶまれます……」


「このあいだ言ってた【Mother】の威光ホーリーを裁判官が担当本に供給しなかった、生命を維持する手段が無くなって消滅するっていう、あれ?」


 サーシャが頷く。

 なんでも威光ホーリーを受け流してもらうことと、担当している裁判官から必要とされるという、二つの事柄が合わさって生存が出来ているらしい。


「それってさ~、裁判が全く無いなんて時は、どうだったの?」


「今までそういったことは無かったはずなので分かりません……でも緊急用にと、魔法使いさん達がマジックボックスを作ってくれていますので、大丈夫かもしれません」


「かもしれない?」


「はい。残念ながら試作段階だそうで、効果の程は定かではないそうです。それに保管されてしまうので、流射芽さんのお役に立てなくなってしまいます」


「ふ~ん……まぁ、別にそれは……!? な、何でもないです……じゃあ、この世界に秩序が無くなってしまうということ?」


「各国それぞれ統治する能力は当然にありますので、秩序が無くなるということはないと思います。けれど真っ当な裁判がなされるのかどうかは、その国の裁量に委ねらてしまいます。そうすると身分が下に行けば行くほど、理不尽な目に遭うことも考えられます……」


「なるほど……」


 サーシャの話から、公平な裁判を執り行うセントーリア最高裁判所の重要性が改めて認識される。

 まだほんの少ししか滞在していないが、ここのシステムは評価に値するものがあると思う。

 そんな場所を見す見す終わらせてしまうというのは、やはり勿体ない。

 それにどうせ残るんだったら、何か役に立つことはないかと思い「これからどうする?」と、サーシャに尋ねてみた。


「まずは状況確認の為に、街へ行ってみましょう」


 ということで、俺らはエウティアの街へ足を運んでみることにした――。


 裁判所の正面玄関を出た直ぐ前には噴水があって、綺麗な水飛沫を上げている。

 そしてその横を半円を描くようにして通り過ぎ敷地の外へと出てみると、そこには敷地内と同じようにして、石畳で綺麗に舗装された大きな路があり、目の前に映る街並みを華やいだものとしていた。


「この路はセントーリアを起点に東西南北へと真っ直ぐに延びていて各国に続いています。そして目の前にあるのがサウスバイラという、真南へ延びている路です」


「交通の便が良さそうだなぁ」


 サーシャの説明によると、東はイーストクリマという路でダーヴェル公国があり、西はル・ウェスタットと云ってファーランド王国、南はサーラハという名でコラルド連邦。

 そして北はノーシェバイムという路で、ブシャーラ帝国に続いているのだそうだ。


「……考えたくはないのですが、ここセントーリアは交通の要所だけに軍事的にも重要な拠点となり得ます。そうすると、この機に乗じて制圧しようと目論む国々が現れてもおかしくはありません。もしそんなことになれば争いが起きてしまい、多くの犠牲者が出てしまうことになるでしょう」と、憂う思いを瞳に宿して、サーシャは悲しげな表情で石畳へと目を落とす。


「ま、そんなことにはならないように、チャッチャと打開策みつけよう!」


 俺はその様子に、サーシャの背中をパンと叩いて喝を入れた。


「はい!」


 □


「特に変わりは……ありませんな」


 シーレさんが後ろ手に歩きながら状況を告げる。


「まだ、気付いてない……」


 涼ちゃんが欠伸をしながら眠たげに述べた。


「ふむ。平和だな」


「そのようですね……」


 俺らは辺りの様子をキョロキョロと確かめながら、昼過ぎの賑わいを眺めていた。

 この街は色んな国の地方から人が集まって来ているらしく、その外見や建築様式など面白いほどに様々だった。


 それでも見分けてみると東方出身者は端正な顔立ちが多く、西方は柔和。それから肌の色が浅黒く彫が深いのが南。そして色白で目鼻立ちがシャープな印象を受けるのが北側からの人々だった。


「ふ~む」


 建築物に目を遣れば、ロッジ風や石造りにレンガ造り、はたまた遊牧民の人が使っていそうなゲルやパオにも似たものまである。

 そして何となくそうなっていったらしいのだが、皆それぞれが母国に近い方に拠点を置いて行ったようで、東にはロッジ風の三角屋根が多く、西には陸屋根が目立ち南には石造り、そして北にはゲルやパオ。それからまばらにレンガ造りといった街並みが広がっていて、俺に其々の国の風景を連想させる。


 まぁ、こうしてただ歩いているだけだと、異世界観光をしているような、そんな気分になってきてしまう。


「なぁ、サー……」


 俺は、サーシャをまじまじと見て、ひと言。


「透き通るような白い肌だとは思っていたが、ホントに透き通っていたとは……」


「違います~!? こんなに早く症状が表れるとは思いませんでした!? このままだと私、消えちゃいます!」


「……」


 俺は目顔でシーレさん涼ちゃんと話し合うと、それぞれが迅速に行動に移り、サーシャの墓標を立ててやることにした――。


「まだ死んでませーーーーん!」


「あ、涼ちゃん。その石じゃ小さ過ぎるよ」


「やめてくださぁぁぁい!」


「シーレさん、縄は自分用にしてください」


「ヒエェェェェン!」


 □


「で、どうする? 裁判所もどる?」


 俺らは小さな公園のような芝生が広がる隅のスペースで話し合うことに。


「まずはマジックボックス以外の方法で、サーシャ殿の消滅を回避する方法を考えたいですな」


 腕組みするシーレさんの胸元が激しく盛り上がる。


「裁判……」


 両膝を抱えてしゃがみ込む涼ちゃんが述べる。


「じゃあ、戻ってなんか裁判やってみるか」と、俺はそう思ってみたのだけれど、


「てかさ、威光ホーリー流れ込んで来るのかな?」


 サーシャにしかめっ面で言ってみた。


「どうでしょう……でも【Mother】は〈必要な時は声をかけて〉と、言っていましたし……」


 寂しげな表情でサーシャが言う……が、先ほどのことが蘇り、「いや、サーシャ。必要な時は声をかけて、〈くりゃれぇ~~〉だ!」と、ついニヤリとしながら訂正を入れてしまった。するとサーシャはフェ~ンッ! とまた一泣きして、更に透明感を増していた――。


「……グスン。でも、こちらから求めれば、応じてくれるのではないでしょうか?」


「でもさ、他の裁判官ひと達ダメだったから帰ったんでしょ?」


「かもしれませんが、やってみる価値はあると思います」


「そうだな……じゃあ、試しにサックリと出来そうなのからやってみるか」


「……というと?」


(小さい揉め事ってことだよな~……お!)


 俺は目の前で追いかけっこをして楽しそうに遊んでいる無邪気な男の子達に目がいった。


「よし、あれだ」


 皆が小首を傾げている。


「まー見てなさい」


 得気にしながら俺は下を向き、目に入った木切れを拾い上げると其れをヒョイと片方の子へ放り投げた――


「イタイ! 今なんか投げたでしょう!?」


 追い駆けられていた子が立ち止まり、頭の天辺を押さえながら振り返る。


「そんなことしてないよぉ!」


 追い駆けていた子が心外だとばかりに、口論が始まった――。


 ヨシ、俺らの出番だ! ……って、なんなのだ、その呆れ顔は?


「や~や~君たち。どうしたんだい?」


「この子が、何か投げたんだよぉ!」


「やってないよぉ!」


「よ~し、わかった! お兄さんは見ての通りの裁判官だよ。君たちのお話を今しっかりと聞いてみたところ、お兄さんに任せて裁判するのが、一番だと思うよ? ということで、ボク、この大きい……!? ち、小っこい本に手を翳してくれるかな?」


 見れば小指の先サイズとなっている【法の書 《サーシャ》】へ俺は指を差した。 

 すると補佐役の二人が不安気にコソコソと話をした後、「私たちはサーシャ殿から間接的に威光ホーリーを利用することぐらいしか通常は出来ませんぞ!」と、シーレさんが耳打ちするようにしてサーシャに伝え、「頑張って供給します!」と、サイズの割にデカい声で担当本は彼女に答えていた。

 

 そうして被害者のその子が頷き手を翳す……お!? 経緯が薄っすらと流れ込んできた。うん、間違いなく犯人俺★

 そして、もう一人の子にも翳してもらおうとするが、後ろ手にして渋ってしまった。


「別にいいけどぉ、この子の言うことが、ぜ~んぶ正しいことになっちゃうよ~? 君、ワルイ子になっちゃうよぉぉぉぉ!?」


 大人のやらしさ全開でそう言うと、その子もイヤイヤ手を翳した。


「それでは、裁判をはじめまーす!」


 いつもと順序が変わってしまったが、どうにか進められた。

 俺はコネクトしない動線を動かすようにして、【Mother】を探し求めてみる……。


(……)


 暗闇の中を当てもなく彷徨っているかのようだ。

 まったく見つかりそうな気がしない。

 今まで気付かなかったが、コネクトするということが、この世界そのものと繋がり網羅しているような、そんな感覚だったことに気付かされた。


(ここじゃない……)


 場所……というか空間。または世界そのもの。

 なんともよく分からないが、とにかく他へ、意識を傾けてみよう――


(…………!?)


 漠然としながら探っていると、【Mother】が安置されていた場所へと意識が吸い寄せられるようにして飛んでいき、其処から勢いよく引き上げられるようにして昇って行った――


(なんだ……ここ)


 ――其処はまるで、音の無い闇の世界。


 その中を駆けているような感じだった。

 方向感覚が曖昧になり、上に進んでいるのか下に落ちていっているのかさえも、よく分からない……。


(?)


 けれどそんな中、遠く向こうの方に、一筋の光が射している場所があった。

 それはとても眩しく雄大で、心安らぐ、そんな輝きだった。


(――あの煌めきに、触れてみたい)


 そんなふうに思い、自分の意志で近づけているのかも分からないままに距離を縮めてみると、その光りは大きさと強さを増していって、俺のことを包み込んでくれようとする……。


(最高だ……)

 

 その温もりに包まれていると、俺そのものが、まるで光となっていくような気がした。

 すると全ての事がどうでもよく思えてきて、その幸福感に心満たされ脱力していると、


「(――しっかりせぬか)」


 という声が聞こえてきた。


(!?)


 俺は、その声に自分を取り戻す……そう。自我を失い掛けていたのだ。そして肉体も。

 もしも、何ら目的が無かったとするならば、聞こえたものなど無視して甘んじて取り込まれていたかもしれない。


(危ねぇ……)


 俺は目的を呼び起こして、こなすべきことに集中した……。

 

 そうして――


『い……たーーーー!!』


 ほんの微かではあったが、包まれた光の更に奥の方に、何か路のようなものがある気がして、そこに【Mother】の残り香とでも云うべきものがあった。

 何処というのは分からなかったけれど、とにもかくにも其れを引っ掴むようにコネクトして、皆が居る処へと意識を戻していく――!


「――サーシャァァァァ!」


「はいぃぃぃぃーーっ!」


 俺は共鳴するサーシャへ威光ホーリーを受け流した!

 が……めっちゃ僅か!

 それでも必死になってサーシャはその威光ホーリーを二人へと供給していき、その期待に応えるようにして、二人は途轍もなく小さな法廷陣と文書作成編集機を形成することに成功した……が、


「いや~、判決まで辿り着けんだろ……」


 シーレさんは全神経を集中させながら、子供達の足元へとへばり付き、未来ある少年に聞かせたくはない独り言を荒い息遣いで平気で繰り返し、脆そうな法廷陣を必死で展開している。

 涼ちゃんはイライラしながら小指の爪の先でタイプしていて、節目節目で唾を吐き出しながら今にも職務放棄してしまいそうなほどに機嫌が悪くなってしまっていた。


(しゃーない。グレード下げよ)


 甘く堕ちてくような先ほどの体験と、そこから助けてくれた声の主が誰なのかを頭の片隅へと追いやって、目の前の事柄に集中した。


「君達……仲良しだよね?」


 二人は声を揃えて笑顔で頷く。


「そうかそうか! じゃあ何も白黒つけてどっちが悪いかなんてする必要はないよね!? ここは一つ……調停ということで、和解成立といこう!」


 一番エネルギーの掛からない方法に切り換えてみた。

 俺はミニチュアサイズの調停調書をサラリと作り出し、この人達だいじょうぶ? という顔を向ける子供達にソソクサとそれを飛ばして、別れを告げて退散した。


 □


「サーシャ、どうよ!?」


 サーシャが姿を戻す。


「はい! やり方はゲスですが、間違いなく効果はありました!」


 ゲス言うな……。


「それにしても、流射芽さんも少し元気になったみたいですね……」


「ん? ああ。やっぱり何かやってる時の方が、調子いいみたい」


「そうですか……」


「どした?」


「……今までの裁判のことを考えていたのですが、流射芽さんは、もしかしたら【Mother】が威光ホーリーを発現させる為の媒介ではなくて、ご自身の力の拠り所としているのではないでしょうか?」


「どういうこと?」


「先程は調停でしたが、それでも直後は消耗するものなんです。ところが流射芽さんには、そういった様子がありません。これは威光ホーリー自体が流射芽さんのエネルギーの源となっている可能性がある、ということです」


「……へ~、それは何か良いことそうだ!」


 じゃあ早速もっと頑張ろう! ということで、俺らは子供達が仲良くしているにも関わらず、火のない所に煙を立ててコツコツと調停に励んだ!

 そうして三日目ともなると、ようやくサーシャの体も透けなくなり、簡易な裁判ならば可能なくらいにまでなった。


 そしてこれを踏まえて分かったことは、サーシャがもとの姿に戻れば戻るほど、制約レギュルスを掛けられる相手が増える、要するに抗制約アンレギュルスの資質者に対する行使力が上がるということと、今までのような絶対的な力を求めることは至難の業で、それでもそれに近づく為には、俺の裁判官としての潜在能力ポテンシャルが何処まであるのかということ、それとこの世界での経験を増やしていくしかないということだった。


「それでもやるべきことは見つけたんだから、粛々と熟そう!」


 とは云うものの、この頃には、街の子供達が明らかに俺らを敵視しているということは、自明の極みであった……。



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