第4話 会話をしよう

 居るかどうか、居たとしても声が届くかどうかも分からないけど、とにかく叫び続けた結果、焦げ茶の髪が特徴的な男か大剣を背に凪いてやってきた。絵本で読んだ冒険者みたいな格好をした男だ。


 その男は目の前まで来るなり、険しい表情でわたしを見つめた。どこかで出会った覚えがないのにどうしてだろう――――あ、そっか!挨拶だ。


 あまり誰かと合う機会はないかもしれないけれどもし人と出会ったらまずは挨拶しなさいってお婆ちゃんが言っていたのを思い出した。


 だから、わたしは挨拶をした――――



 「こんにちは!」


 「……ああ」



 元気よく笑顔で挨拶したにも関わらず反応があまり芳しくない。何か間違えたのだろうか。もしかしたら作法があったりするのだろうか?


 眉を潜めた男は胡散臭そうにわたしを眺め、そして次第に警戒するかのような姿勢を取った。いつでも抜刀あるいは回避できるような、そんな雰囲気を感じた。



 「・・・?」


 「単刀直入に聞く、お前はどこの誰だ?名前と所属と目的を言え!」



 「名前?わたしはアスピ。所属は……ありません!あと、目的……?牧場を横断させてほしいなぁって……ダメ、ですか?」


 「そ、そうか………少し、考えさせてくれ」



 小首を傾げてそう言うわたしの顔をしばし見つめる男。すると、警戒した面持ちから一変、今度は思案げに困惑した表情を浮かべる。全くもって状況が分からない。とりあえず聞けば分かるかも!



 「あの、どうかしましたか?」


 「お前はなんでこんなところに居る?」


 「森を抜けたら牧場があったんです!すごいですよね!牛さんがいっぱい!」


 「……本気で言っているのか?」


 「本気です!」


 「……はぁ、まぁいい。とりあえず俺についてこい。だが妙な真似をしたらどうなるか解ってるだろうな?」


 「えっと、どうなるんですか・・・?」



 どうなるのか、さっぱり分からなかったわたしは素直に聞くことにした。分からないことはきちんと聞くことが大切だとお婆ちゃんに教わったから――――。だけど、男はより一層溜息を吐くとわたしの疑問を無視して後ろを振り返った。



 「いくぞ」


 「はい!」



 こうして男の後をついて行ったわたしは木造の建物が幾つも並んだエリアへと辿り着くのであった。

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