第4話 和食屋

貼り紙の代わりにいつものメニューが出ていた。やっていたのだ。建物の工事のために足場を組んでいただけであった。自転車を店の脇に止めよう。おかしい、自転車はどこにあるのか。誰も近くを通りはしなかったのに、メニューを眺めた一瞬で。何者の仕業か。


念のため店舗と隣の建物の隙間も確認すると自転車はあるが私のそれではない。ここでふと、背中が汗ばんでいることに気がついた。自転車で来たならむしろ少し寒いはずなのに、である。一抹の可能性を感じてコートのポケットをすばやくまさぐると、可能性の頻度は1になった。紛れもなくこれは自転車の鍵である。これが手元にあるなら自転車は私の管理下にあると言っていいだろう。


今日は歩いてきた。


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