エピローグ
その後は、白猫のお話の正史に綴られている通りである。ツチノコが提案したコイントスにより、クロとスナネコの運命が決まった。
結果、スナネコはツチノコと共に旅をすることになった。クロは、スナネコと別れることになった。
その後、彼は一年ほどゴコクをふらつくことになる。キョウシュウに帰る気も起きず、ゴコクの旅を続けることにしたのだ。
その旅の話を、後日談としてほんの少し綴らせていただこう。
スナネコに振られたクロが最初に訪れたのは、バリーの元だ。まだ、バリーがクロの旅を離脱してから一週間と少ししか経っていなかったので、クロの来訪にはバリーも驚きの顔を見せた。しかし、驚いた一番の理由は再会の速さではない。
「クロユキ、その顔は一体どうしたんだ?」
充血した腫れぼったい目で、頬には泣き跡が酷いという状態でクロはバリーの元を訪れた。事情を説明すると、バリーはこう言いながら頭を撫でてくれた。
「やっぱり、私には恋心というのはよくわからない・・・でも、君の心が酷く傷ついているのはよくわかる」
クロの母親譲りなくせっ毛をくしゃくしゃと撫でている手を離して、「それと」とバリーが付け加える。
「結果はどうであれ、三ヶ月間よく頑張ったな」
そう、親指を立てた拳を見せてくれた。
「私は、恋愛の神ではないのでそちらの方は疎いのですが・・・」
次に訪れたのは、ジャパリ神社。つまり、オイナリサマのところだ。
クロは挨拶がわりに参詣しに来たつもりだったが、自身の結界内に入ったクロを感知してオイナリサマの方から顔を出してくれた。本当はそんなに外に出るべきではないらしいが、やはり泣き跡の酷いクロを放っておくことはできなかったらしい。
「稲荷神として教えることとすれば、幸せというのはお腹が満たされてないとやってこないということです。私の秘蔵の物を授けましょう」
そう言って持ってきてくれたのは、顔と同じくらいの大きさの丼型のもの。紙のようなもので蓋がされており、やたら軽い。
「これにお湯を注ぐと、ふっくら美味しいおうどんが出来上がりますよ。ジャパリまんばかりでなく、熱々のものも食べましょう?」
クロはありがたくそれを受け取り、オイナリサマにお礼をして神社を後にした。その晩、お湯を沸かしてオイナリサマから授かった物を食した。クロには新鮮な味だったが、久々に父の料理が食べたいな なんてことを思わせた。
島を巡るうちに、色んなフレンズから頼まれたことがあった。ライブの再演だ。前回使ったステージなどを再利用し、もう一度ライブを開くことができた。
ステージ上で、前のように挨拶をする。スナネコとツチノコは見つかったことなどを話し、礼をしてからギターの演奏を始める。
その日は、「ようこそジャパリパークへ」を弾き語りしていたのだが、途中で観客席に幼少期から見知った人を見つけた。尻尾や獣耳が当たり前のフレンズの中では、そのどちらもない彼女はやけに目立った。
カコ博士である。
ライブの次の日、クロは彼女の家も訪れた。旅の全てを話した。バリーと旅したことや、スナネコに振られたことなど。カコは親身になってそれを聞いてくれて、泣くクロを慰めてくれた。
と、この他にも一年ほどの旅で色んな出来事が起きた。様々なフレンズと友達になったりもした。
以上が、白猫のお話で語られることのなかった部分を求めた素人が、周りと比べてほんの少し新しい紙に綴った物語である。
こんな旅があったかもしれないし、なかったかもしれない。
以上である。
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