第12話 読んで理解できたら天才な本

「読んで理解できたら天才な本」

「うわあ、めんどうくせえ」

「読んでもさっぱり理解できないけど、理解できたらそれなりに意味のあることをいってる本があります」

「げろろろ」

「こう見えても、自分に理解できない本などないとたかをくくっていたぼくは、じぇんじぇん読んでも意味のわからない本を十冊くらい知っています」

「マジ無理」

「古い哲学書とかでいいなら、本当に簡単に十冊くらいでてくるんですけど」

「カントとかな」

「二律背反ですね。ちなみに、ぼくはカントの二律背反を理解するのに、八回読んで死にそうになりながら要約しました。一時期は、ぼくがネットに書いた要約が、日本語ウィキのカントの項目にのってたんですよ」

「自慢すんな」

「それじゃあ、読んで理解できたら天才な本」

「まあ、実は何かわかる」

「たぶん、そのままズバリです」

「レムの後継者だろ」

「はい」

「SFの極北の」

「そうですね」

「ああ、わかったわ」

「それです。では、じゃかじゃーん」

「はいはい」

「グレッグ・イーガン「ディアスポラ」です」

「まあ、いちばん難しいSF小説っていわれてるやつな」

「ええ、もう二十年以上古い小説になってしまいましたが、ぼくが追いかけて読んだのはごく最近です」

「イーガンはすごいな」

「理解できたら自慢できますね」

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