第9話 泣ける話その2

「泣ける話その2だあ」

「おれは絶対に小説なんかでは泣かないから、早くすすめてくれ」

「それではいくぞ」

「ばっちこーい」

「ゼラズニイの短編「十二月の鍵」、短編集「伝道の書に捧げる薔薇」収録」

「おう」

「グレッグ・ベアの短編「姉妹たち」。短編集「タンジェント」収録」

「おう」

「ティプトリーの短編「そして、わたしは失われた道をたどり、この場所を見出した」、短編集「愛はさだめ、さだめは死」収録」

「おう」

「ケン・リュウの短編「文字占い師」。短編集「紙の動物園」収録」

「おう」

「中国SFアンソロジー「折りたたみ北京」」

「おう。SFばっかりだな」

「まだまだ、SF。ル・グインの短編「セリムの首飾り」、短編集「風の十二方位」収録」

「やめやめやめ。きみはどれだけ涙もろいんだよ」

「オースン・スコット・カードの長編「エンダーのゲーム」と「死者の代弁者」」

「それくらいでいいよ、もう」

「読んだ人にしかわからない」

「そんなもんで泣くか。無駄無駄無駄無駄」

「うーん、でも、1800冊読んで、本当に感動して泣いたのは、この八個くらいの小説しかない気がする。それ以外の小説で泣いたのは眼精疲労」

「眼精疲労って、ちょっと無理があるだろう」

「いいえ、ぼくの本音では、この小説群以外で泣いたのは、読書で目がつかれただけのただの眼精疲労」

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