第17話 ごめん
「綾乃ちゃん、急に呼び出してごめんね」
「……大丈夫だよ」
次の日、公園には幸哉と彩乃がいた。
「じ、実は……今まで記憶を失ってて、昨日思い出したんだ。……全部。
それで……あの、記憶を失う前に……つ、付き合ってた人がいて……」
幸哉は彩乃に向き合い言葉を詰まらせながら話しだした。
「うん……。つ、付き合ってた人って……お姉ちゃんだよね……?」
綾乃は幸哉の言葉を遮った。
──その瞳には薄らと光るものがあった。
「え……な、なんで知ってるの……?」
「前にね……お姉ちゃんの部屋で見たんだ……。写真には、お姉ちゃんと幸哉くんが一緒に写ってた」
「え、でもそれだけじゃ……」
「うん、それだけだとわからなかった……。でもね、お姉ちゃんからも直接聞いたんだ。付き合ってたって……。今はどうなのか教えてくれなかったけど……」
「そう、なんだ」
幸哉はその事実に驚きを隠せずにいた。
「うん……。き、記憶が戻ったってことは……お姉ちゃんのこと……す、好きなんだよね?」
綾乃は震える声を抑えながら問いかけた。
「えっと……あ、うん。俺から告白したのに……ごめん。でも、夢乃が好きなんだ」
幸哉は言葉を詰まらせながらも最後は綾乃の目を見てハッキリと答えた。
「……やっぱりお姉ちゃんには勝てないか。幸哉くん記憶、戻ってよかったね。
短い間だったけどありがとう。楽しかったよ」
「ごめんね。今までありがとう。
よかったらこれからも友達としてよろしくお願いします」
「……っ! よろ、しくね。先に帰っていいよ……」
「うん、じゃあね」
見送った彩乃は精一杯の笑顔を見せた。
そして、幸哉の姿が見えなくなると俯いた。
「……うっ、友達か。……まだ付き合ってたんだ。なんでお姉ちゃんあの時、言ってくれなかったんだろっ……。お姉ちゃんごめんなさい……っ。」
──誰もいない公園では彩乃の泣き声だけが聞こえていた
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