第18話 ゆめ



***




「もしもし」


公園から自宅に向かった幸哉は夢乃に電話をかけた。


「あ、もしもし。これからこっち来れる?」


「えっ、こっちって……幸哉の家?」


「そう」


「わかった今行く」


そして、電話が切れた数分後──


幸哉宅のインターフォンが音を鳴らした。


その音が耳に届くと同時に幸哉は部屋を飛び出した。


「お邪魔します」


「どうぞ」


幸哉は平然を装いながら夢乃を自宅へ招き入れた。


「今日はどうしたの?」


幸哉の部屋にあるソファーに2人で腰掛けると夢乃が問いかけた。


「えっと……今までごめん」


「え、なになに? 何がごめんなの? どうしたの?」


突然謝ってきた幸哉に夢乃は戸惑った。


「夢乃……ゆめ」


「えっ、ゆ、幸哉……。記憶、戻ったの?」



──"ゆめ"これは幸哉が記憶を失う前の呼び方だ。



それを聞いた夢乃は幸哉の記憶が戻ったのだと理解したのだった。


「うん、戻ったよ」


「う、嘘っ……。うっ、よかっ、た……」


「夢乃ほんとごめんね。心配かけたね。ゆめ、好きだよ。もし、夢乃さえ良ければ……これからも俺の彼女でいてください」


「え……。あ、彩乃は?」


「記憶失ってたとはいえ、妹の彩乃ちゃんと付き合っちゃってごめん……。今日別れてきたよ……」


「そう、なんだ。また、幸哉と一緒にいれるの?」


「そうだよ」


「嬉しいっ……これからもあたしの彼氏でいてくださいっ!」


──こうして、夢乃と幸哉は再び付き合うことに。


「幸哉、誰か来てるの?」


ドアがノックされると同時に幸恵の声がドア越しに聞こえた。


「あ、幸哉……言ってきな」


「うん……」


夢乃に背中を押された幸哉は立ち上がるとドアへと向かった。


「お母さん……」


「え……」


ドアを開け母の名前を呼ぶ幸哉。


その声がいつもと違うことに気づいた幸恵。


これは母の感というものなのか。


「お母さん、俺……記憶戻ったよ。全部……心配、かけてごめんね……」


「え……も、戻ったの……! よ、よかったっ……!」


幸哉の言葉を聞き涙する幸恵。


その光景を見ていた夢乃もまた静かに泣いていた。


それから晴也が帰宅し幸哉の記憶が戻ったことを伝えた。


晴也は子供のように泣き喜んだ。


幸哉と幸恵、晴也が抱き合いながら泣いている横を夢乃は静かに通り過ぎその場を後にした。


帰宅した夢乃が向かった先は……。




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