第16話 走馬灯

 そして、帰宅した幸哉はバスで聞いた話をネットで検索した。


「3月19日(土曜) 9時35分に××交差点内で起きた。───死傷者……20名」

「バス……っ! ま、前にも乗ったはず。たしか、たしか……バイト……! バイトに行く時に乗って、それから……それから……バスが何かにぶつかって……頭、ぶつけた……」


 幸哉は思い出したことを口にだして自分に言い聞かせていた。


 そして、事故のことを思い出し思わずぶつけた頭を触った。



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「"あ、えっと……川上です。よろしくね"」


「"……中西です。よろしくお願いします"」



 ──え、あ……中学1年生のとき、ゆめと初めて話した時だ。


 記憶戻ってきた……?


「"えっと……なんて言ったらいいんだろ……? えっと……俺、中西さんがすごい好きです"」


「"……えっ……?"」


「"俺と……つ、付き合ってください"」


「"うそっ……。あ、えっと……あたしもっ……! あたしも川上くんがす、好きですっ……。よろしくお願いします"」



 ──こんな大事なことを忘れて、たんだ……。



 中学2年生の時、公園で僕がゆめに告白して……。


 あの時のゆめ……凄いびっくりしてたな。



 けど、同じ気持ちだったのが嬉しかった……なの、に……。



「"夢乃……お誕生日おめでとう!"」


「"幸哉ありがとう!"」



 ──クリスマス……僕の家でゆめの誕生日をお祝いした……。


 また、お祝いできるかな……。


 ゆめ……。



「"着いたー! 幸哉早く早く!"」


「"ゆめー走ると転ぶから"」


「"大丈夫大丈夫……あっ!"」


 ──あ、3年記念で行った遊園地……。


 ゆめ、凄いはしゃいでて言った側から転んでた……。


 そっか、今日遊園地に行ったときの微かな記憶……やっぱり、ゆめと行った時のだったんだ。



「"あ、そろそろ頂上だ"」


「"夢乃、大好きだよ。3年間一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしく"」


「"え、嘘……"」


「"手、貸して"」


「"ありがとう……幸哉"」


「"夢乃……"」



 ──ゆめと乗った観覧車。



 だから、ハートのゴンドラの記憶があったんだ。

 頂上で指輪見せたら驚いてたな……。

 ピンク色したハートの指輪ゆめに似合ってたな……。


 ゆめ……あの時の指輪まだ持ってるかな……?


 今さら、遅いかな……。


 これが、僕の記憶が無くなる最後の記憶……。




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「ゆ、ゆめ……夢乃。ご、めん……うっ、うわぁぁん……っ! ゆめっ! ……っ」


 幸哉は夢乃と出会った時から付き合っている3年目に行った遊園地等を走馬灯のように思い出した。


 そして、子供のように泣きじゃくっていた。


「俺、ゆめと付き合ってたのにっ……彩乃ちゃん、夢乃の妹と付き合うなんて最低だっ……思い出すならもっと……早く、早く思い出したかった……」


 そして、幸哉には後悔が募るばかりだった。


「なんでっ! なんで今なんだよ……。こんなことなら思い出さずにいた方がっ……! あ、それだと夢乃が余計辛い思いするのか……」



 ──だが、1番に思うのは夢乃だった。



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