第11話 一緒にいたい
***
「川上くん、ここってどうやるの?」
「ああ、ここは……──」
「ありがとう」
夢乃と幸哉が中学1年生の時、席替えをし隣の席になった2人はジャンケン以来仲良くなった。
そして、隣の席ということもあり夢乃はよく幸哉に勉強を教えてもらっていた。
そして、中学2年生になった2人は再び同じクラスになった。
この日の2人は図書室で勉強をしていた。
「あのさ……テスト最終日の放課後って空いてる?」
幸哉は隣に座る夢乃に問いかけた。
「最終日? 空いてるよ」
「ほんと……! じゃあ、その日空けといてね」
──そして、テスト最終日。
「やっと終わった……」
テストが終わると夢乃は机に伏せた。
「お疲れ様」
「……お疲れ様! 川上くんが教えてくれたとこ出来たよ」
幸哉に声をかけられた夢乃は返答する為、顔をあげた。
「よかった。じゃあ帰ろっか」
「……うん」
そして、2人は学校を後にした。
テスト期間中は午前授業のみのため、2人はファミレスで食事をした。
そこでは他愛もない話をし1時間ほどで店を出た。
「えっと……公園行っていい?」
「うん、いいよ」
幸哉の自宅近くにある公園に2人は向かった。
そこは夢乃の自宅近くでもあった。
ベンチに座り沈黙が続いた。
「て、テストお疲れ様」
その沈黙を破ったのは幸哉だった。
「お疲れ様。ほんとありがとうね」
「どういたしまして……。えっと……。中西さん……」
「なに?」
幸哉の呼びかけに目線を合わせる夢乃。
「えっと……なんて言ったらいいんだろ……? えっと……俺、中西さんがすごい好きです」
幸哉は夢乃の目を見つめそう言った。
「……えっ……?」
突然の告白に戸惑いを隠せない夢乃。
「俺と……つ、付き合ってください」
「うそっ……。あ、えっと……あたしもっ……! あたしも川上くんがす、好きですっ……。よろしくお願いします」
夢乃は目に涙を溜めながらそう言うと頭を下げた。
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「ん……あ、夢だったんだ」
幸哉が自宅に来た次の日の朝、目を覚ました夢乃の瞳からは一筋の涙が流れていた。
「あの時から付き合い始めて3年……。懐かしいな。……っ、なんで……幸哉の記憶戻らないの……? 好きなのに……友達は辛いよっ……」
幸哉に告白された夢を見た夢乃は朝から静かに泣いた。
──それから数日後。
夢乃のは幸哉の自宅を訪れていた。
「幸哉、これ……彩乃が幸哉に渡してって……」
「え、いいの? 嬉しい……」
「うん……」
「(あたしには記憶のない幸哉をここまで笑顔にできないよ……。彩乃はすごいな……)」
夢乃は落ち込んだのであった。
幸哉が夢乃から受け取った物は1冊の本だった。
これは書籍化された小説で夢乃がお気に入りの1冊との事。
「うわぁ、すごい……あとで読もう」
「ぜひ、読んであげて……あ、のさ……」
「なに?」
幸哉は手にした本から夢乃へと視線を向けた。
「本好きなんだよね……? もし良かったらあたしが1冊プレゼントするから……本屋さんに一緒に行かない?」
「(断られるかな……。もうどんな理由でもいい、幸哉と一緒にいたい……)」
夢乃は震える声を抑えながら幸哉に問いかけた。
「本屋……? いいよ。行こう」
「ほんと! よかった……。いつにしよっか?」
断られなかったことに安堵した夢乃。
「いつがいいかな? あ、彩乃ちゃんはいつ空いてるの?」
だが、夢乃の喜びはその一言によってなくなった。
「え……。彩乃?」
「うん、彩乃ちゃんも行くんだよね? あれ? 違かった?」
「……あ、ううん。違くないよ……」
本当は"2人"で行きたかった夢乃。
だが、幸哉は彩乃を含めた3人で行くつもりでいた。
「じゃあ予定合わせて行こう」
「……うん」
"2人で"とは言えず……結局3人で行くことになった。
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