第12話 本屋
そして、数日後──
時刻は午前11時5分。
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫だよ」
遅れて来た幸哉に夢乃は笑顔で答えた。
待ち合わせ場所は最寄りの駅。
そこから本屋までは10分もかからずに着く。
「彩乃ちゃん、あれ見た?」
「あれ?」
「サイトの新作で彼氏が記憶喪失になっちゃうやつ」
「あー! 見た見た! すごい感動するよね」
「だよね。実際にそんなことがあったら耐えられないよ……」
「(いや、それ実際に起きてるからね。自分が記憶喪失だっていうの忘れてない? それとも"彼氏"がの部分が耐えられないのかな?)」
駅から本屋へ向かう道中幸哉と彩乃は2列に並び仲良く話していた。
その後ろに夢乃が1人ついて歩いていた。
幸哉の言う新作はまるで幸哉自身だなと思う夢乃であった。
「着いた! ここだよ」
「おお! 広いねー! 沢山ある!幸哉くん行こう行こう!」
「あ……うん」
着いた本屋はとても広く色んな分野に別れ本が置いてあった。
本屋を見た彩乃は興奮し幸哉の手を引きそのまま中へ入って行った。
「(あたしが幸哉誘ったのにな……。もう2人の世界じゃん。なんであたし、ここにいるんだろ……)」
なかなか2人の世界に入れないでいた夢乃は一人落ち込むのであった。
そして、幸哉と彩乃は本棚が並ぶ隙間を歩いていた。
夢乃はその後をただ付いて行くだけだった。
「幸哉くん、それあたしが買ってあげる!」
幸哉が気になった本を1冊手に取ると彩乃がそう声をかけた。
「え、でも……」
彩乃は幸哉に本を買う気でいたが幸哉は夢乃との話を覚えていたようで夢乃に視線を向けた。
「彩乃」
「なに、お姉ちゃん」
「幸哉に本買うって前にしてたからあたしが買うよ」
「あたしが買いたいの!」
「……じゃあ、あたしは別の本を幸哉に買うから彩乃はそれね」
「え、あ……うん」
「幸哉、他に欲しい本ある?」
「……あ、あれ欲しい」
幸哉はそう言うと本棚が並ぶ隙間をすり抜け奥の方へ向かった。
その後を夢乃は追った。
「これ」
「すごい分厚いね」
「これずっと欲しかったんだ……」
「じゃあ、これをプレゼントするね」
「ありがとう」
幸哉が選んだ本は単行本3冊分程の厚さがあった。
「お腹空いた」
「僕も……」
「じゃあお昼食べ行こっか」
お腹を空かせた彩乃と幸哉を引き連れ夢乃は本屋から歩きだした。
「ファミレスでいい?」
「いいよー」
「うん」
夢乃の問いかけに彩乃と幸哉が了承した。
そして、3人は近くのファミレスへ入って行った。
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