第2話 遊園地
それから数ヶ月後──
「幸哉! ごめん、お待たせ」
「大丈夫。今来たとこ」
「よかった……」
駅前で待ち合わせをした夢乃と幸哉。
夢乃は待ち合わせ時間に5分遅れて到着した。
だが、幸哉は待ち合わせ時間の10分前には着いていた。
今来たとこなんてカッコつけていたが実際は15分も待ち春なのに、幸哉の体は冷えていた。
きっとそれは幸哉なりの優しさなのだろう。
「楽しみだね、遊園地」
「うん。雨振らなくてよかった」
数日前の天気予報では雨マークだったが、曇りマークに変わったのだった。
遊園地までは電車とバスで1時間かかる場所にある。
「着いたー! 幸哉早く早く!」
遊園地に着くなり夢乃は先を歩き幸哉が来るのを待っていた。
「ゆめー走ると転ぶから」
「大丈夫大丈夫……あっ」
そして、幸哉が近くにくると走り出した夢乃は……転んだ。
いや、つまづいたという言い方が正しいかもしれない。
どうにか持ち越した夢乃は怪我をせずにすんだようだ。
「ほら……言ってる傍から」
「ごめん……」
それから2人は仲良く手を繋ぎジェットコースターの列に並んだ。
「楽しみだね」
「ゆめ、ジェットコースター好きだもんな」
「うん! 大好き」
夢乃達の順番になり2人はゴンドラの先頭へ乗り込んだ。
ゴンドラが動き出すと傾斜面を上り始めた。
「幸哉、あたしは……好きだよ」
ゴンドラがまもなく頂上に着く頃、夢乃は幸哉の手を握った。
「夢乃……」
「キャー!」
幸哉は夢乃の名前を呼ぶも……ゴンドラが急降下し乗客の叫び声によってかき消された。
「楽しかったね」
「俺は怖かったな。一回転した時はもうダメかと思った」
「あはは。一回転しても落ちないから大丈夫だよ」
ジェットコースターを降りた2人は互いに感想を言い合っていた。
「あ、入る?」
夢乃に問いかけた幸哉は悪巧みをしているような顔をしていた。
「いい! 入らない!」
幸哉の視線の先を見た夢乃は首が取れそうなくらい左右に振った。
「なんでー? 入ろうよ。大丈夫、俺が付いてるから!」
「もう、あたしがお化け屋敷苦手なの知ってるくせに」
幸哉が誘ったのはお化け屋敷だ。
夢乃は毎回断るも幸哉に負けてお化け屋敷に入ることとなる。
そして、必ず入ったことを後悔するのであった。
「──や、やっと出れた!」
「お疲れ様。怖くなかったでしょ?」
お化け屋敷から脱出できた夢乃は恐怖で、しがみついた幸哉の腕から離れることが出来ないでいた。
「どこがよ! 怖いよ……。幸哉いなかったら、あたし……絶対に入らないんだから」
そう訴える夢乃の瞳には薄らと光るものが……。
余程怖かったのであろう。
「それは俺とだから入ってくれるの?」
「……ほ、ほら……怖い時にすぐ掴まれるでしょ……?」
幸哉の問いかけに夢乃は視線を泳がせながら答えた。
「ふーん。怖い時じゃなくて初めから俺の腕にしがみついてたよ。」
「そ、それは……」
「でも、俺以外とお化け屋敷入ったり腕にしがみつくのはダメだよ」
「幸哉以外とはしないよ」
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