止まれ

止まってしまえばと願うこと。

確かにどこかにあっただろうに、

どうして、今では何処にもない。


海が通り過ぎて、雪が溶けて、桜が散って、

わたしはまた読書をする。


変わっていくものに、

すべてが置いていかれるような気がしてしまうけれど、

本当にわたしを置いていくのは、わたしだけだ。


春が閃いて、

そうしてわたしは、春を置いていく。

過去に笑った君を、抱えたわたしが、夏で泣いているから。

だけどその夏は、

もう遠の昔に置いてきてしまったんだ。


欠けらが、身体の中に刺さって、

コーヒーを飲んで、一日が始まる。


遠くで吠えた犬のように、

なにもかもがそこにはいて、

わたしはだから、

いつもすべてを置いていく。

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