スクランブルエッグ

スクランブルエッグ。

ぐちゃぐちゃにされた命。


カルピスソーダの気泡がぷかぷかと浮かんできて、

宇宙で新しく星が生まれる。


ぐちゃぐちゃになった原子が核融合を起こして、

宇宙を照らしている。

そのおこぼれに、私たちは必死でしがみつく。


広大な宇宙に浮かぶ、ちっぽけな地球。

私たちの生のためにぐちゃぐちゃになったもの。

その代償は何だろう。


君がどこかに行ってしまって、

電子回路の先。

もう現れることのない夕暮れを、

永遠にリバイバルしていく。


自我を持ち始めた電子回路が形作る、

この悲しみが、私たちの代償なのだとしたら、

それはきっと、甘やかすぎる。


だって、悲しいことは嬉しくて、

痛いことは幸せでしょう。

そう感じるようになってるのでしょう、

私たち人間。


たくさんの原子が混ざり合ってできた唇から、

愛の波動を生み出して。

その愛は原子で構成されていないから、空っぽだね。

からっぽだけど、

言葉は空気を揺らして鼓膜を揺らして、

私たちにさざ波を起こす。

ぎっしり詰まった私たちに、

ゆっくりと振動が浸透していく。

空っぽな愛。


だから、

空っぽをやり取りするとき、

私たちはいつもぎっしり詰まっていなくてはいけなかった。


愛に必要なのは、銅鑼のような密度。


振動が君に伝わって、

僕たちの距離をゼロにする。

混ざり合ったシンフォニーは心地よいでしょう。

君とともに、宇宙に出ていけるくらい。


孤独になった先、

確かに奏でる君のメロディーは次元を歪めて。

いなくなった君はゆがんだ次元の間にずっと横たわっていられる。


あの日見た橙色。

後に続くあいよりも綺麗だったのよ。

心の糸を、私がほつれるほど投げかけるから、

だれか掴んで手繰り寄せて。

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