死が彼を包んだ

人が死んだ

あっけなく死んだ

死の危険を微塵も感じさせないところで、

きっと数瞬前までは死ぬことなんて考えていなかったのに


私たちは、いつも死に気がつかない

常に周りにうっすらと蔓延する死を、

私たちは見つけられないで生きている


玉突き事故のように起こった死という現象が、

その小さな可能性が、

それでも確かに存在しているということを、

私たちは時折しか発見できない


人が死んだ

人が死んでいる

私の知らない場所で、人は確かに死んでいる


死が彼を包んだ

死は、いつも包んでいる

死に向かおうとしなくても、死は確かに私たちを包んでいる


だから、ふらっと揺れたその次元の狭間で、

死に突き刺されるようにして、

私たちは終わる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る