ソーダの泡


ソーダの泡がはじけるような恋だった。

濁った湖の中で、

それでも確かに透明なのだと、信じていた。


真夏の海岸。

暑い暑いと騒ぎながら、裸足で砂浜を駆ける君を、

閉じ込めておきたくて、貝殻を瓶に詰めた。

人間に、記憶なんてなければよかったのにね。


もう、秋が来ている。


確実に存在していた夏の日を、

それでも痛く思ってしまうのは、

ぼくが、今、

狂おしいほど、

あの夏の日を想っているからだ。

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