3.11
名前しか知らない何処かで、
名前も知らない誰かがたくさん死んだのだということ。
命というものは、
角も簡単に吹き壊れるのだと、知ってしまったこと。
どれほど弔っても、
私はあなたのことを知らないままだけど、
しかしそれは、確実に奇跡ではなくて、
日常的なもので、
憎らしいほど硬いと思っていた人間という殻が、
死ぬときは呆気なく、
紙切れのように壊されてしまうから。
知らないあなたが、
知っている誰かに変わるような魔法を、
私はずっと、
テレビの中から受け取っていたのです。
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