恋の微睡みの中で

相も変わらず冷たいままの空気から、

冬の香りが抜けているのを感じて、

冬が、たんたんと、

遠ざかっていることを確認する、朝。


春の香りにはまだ早く、

しかし確かに、甘い可能性を秘めて、

空気が轟いている。


恋の幕間のように、

人生に燦めきが増えて、

呼吸困難に陥ったころ、

君は、その柔らかい両手で、

猫を撫でている。


木から猿が落ちるように、

あの日の思い出が降っていくから、

恋は、

私たちの心を休めてはくれないみたいだ。


思い出が、

燦めきだけを残して息をし始めたら、

また歩いていきましょう。

あの、

遠くにかかる、夕焼けまで。

そのきらめきでだけで、

私たちは、前に進めるから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る