白いきみ

笑っている君を見ると、

過去は私の頭の中にしか存在しないのだということを、

確認します。


暖かい日光の下、鮮やかな思い出が古ぼけて、

大切に仕舞われていく、世界の片隅に、

きみは息をしている。


冬の海岸が、夏の光を見せるから、私は沖へと足を進めた。

冷たい海の呼気が、私の足の裏から、全身を侵していく。


こうして夕陽を見ていると、君のことを思い出します。

私の一部を持っていってしまった、君のことを。

前に進み続ける君と、私と、進んではくれないきみ。


過去の記憶。


青い鳥にばかり価値があるから、白い鳥が飛んでいく、

こんな世界で、

そんなことすらわからないから、

私は今日も、きみを見ています。


白い雲、白い月、白いきみ。

白が三拍子揃ったら、

やっと私は、海に溶けていける、

気がした。

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