月の光

月がさした木陰の隅に佇む、小さなシミのような君だから、

蛹が創り出す音に攫われて、どこかに行ってしまう。


月はいつも誰かを奪っていく。


幼い頃の私が、月に手を伸ばして、空へと飛び出していくように、

みんな、月へ行ってしまう。


春の音、月の音、海の音、

そのすべてを耳の中に遺して、旅立ってしまう。


私は、ひとり、砂漠に立っていて、寒さなど、知らないよう。

グズグズと墓場で足踏みをしていた、幼い頃の私が、お狐様に連れていかれた。


君の本音はなんですか。

そう尋ねた人は、もういなくて、

私はいつか追いつけなくなって、時間に取り残されるのだろう。


物足りない何かを忘れて、二酸化炭素を取り込む。

酸素が消えても気がつかない私たちは、いつのまにか、眠るように死んでいる。


ねぇ、ここが天国じゃないなんて、誰が言ったの。

みんな、月へ、行ってしまったのに。

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