檸檬の搾り滓
魂を置いてきてしまった。
夏の日に。あの、青い匂いのする季節に。
抜け殻が、酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出している。
ただ、それだけ。
反応のように感情を返して、海へと溶けていく。
熱い塊。マグマのような、轟き。
花畑の奥に巡る、生命の息吹。
あの夏の日が、まだ胸の中で、息をしている証。
花は何よりも美しい。それは、嘘だらけのこの世界に存在する、数少ない真実だった。
私たち、いつ、花を好きになったのだろう。
好きの理由なんて、もう、覚えてはいないよ。
私とあなたの間に挟まっていた、好意の源泉は、いつの間にか姿を消していて、
私はその存在すら忘れて、あなたを好きでいる。
無責任な、好意のカケラ。残り滓。
檸檬の搾り滓にも味があるんだってことを、忘れないで。
口に残る苦味が、いつかの甘さを消していく。
だから、私はもう、甘い香りを追いかけて、宇宙に飛び出さなくてもいい。
彗星が地球へと巡ってきて、私たちの一部を連れていく。
それは期待だとか、願いだとか、祈りだとか、そういうもの。
そういうものを、みんな抱えて、太陽へと向かう。
太陽を見つめる時、たしかに、私たちの気持ちが降ってくるから、みんな目を細めるのでしょう。
希望なんてものは、眩しすぎて、見ていられない。
どれだけ言葉で飾り立てても、それは孤独だった。
いつだって、孤独を指していた。
頰を流れる涙が、君に届くことはない、だから、
零れ落ちた涙が、いつかの雨になって、君に降り注ぐことを、祈ってしまうよ。
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