侵食

海に侵食されていく大地が、月の光を返して、海月だねと笑った掠音が空にこだまする。

ポツリと落とされた朱色が、水をすくったコップの淵にこびりついて、いつかの装飾に変わる。


コップに水を注いだ。

ベッドの上で、残滓に打ちひしがれたビニル袋を手に抱いて。


冬の空が海へと駆けて行って、私をドボンと落としていく、充足。

あの日笑った君の顔が、月の裏に隠れる太陽のようだった。


手を伸ばした時、確かに感じた熱が、怒りという名の恋に変わった。


生まれてから、与えられ続けてしまったから、今、確実に、何かが足りない。

海の冷たさと一体化できる体だったのなら、満足だったのだろうか。


君と二人、怒りに身体を燃やす夜は、痛くて仕方がないです。

それでも、私は、原子が絡まるように君を求めてしまうから。

宇宙を飛び出すまで、私の隣にいて。

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