キャラメル

キャラメルの溶けゆく温度が、私の指も溶かしていくようで、私の中の、何かが埋まっていく、そんな錯覚をしている。


キャラメルの甘味が風に乗って、街に充満していくのだから、コーヒーが酸化していくこの世界で、酸化しても甘いこの気持ちが、それでも確かに、ずっとわたしに宿っていた。

誰かを熱烈に愛したい甘味だけが、私の胸の中で、息をしている。


あなたに出会ったとき、どこか感じた既視感を、忘れられないまま、あなたに恋をしました。


きっと一人でも生きていける。


キャラメルの焦げる香りが、それでもどこか胸を傷ませるから、その甘味を愛と信じていた頃の、あの幼いわたしを、捨てることができないのです。

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