第2節

シャロンを一言で表すなら「太陽」だろう。いつも優しく元気をくれる。

なら俺を一言で表すなら、間違いなく「影」になる。

正直なところ俺はかなり無口なのだ。よくネットにいるTwitterとかではめちゃくちゃ喋るのにリアルでは喋れない典型的なやつだ。たまに思うのはシャロンは俺のどこを好きになったのだろう、というつまらないことだ。


「ねえカガリ!友達が今から家に来るって言ってるんだけどカガリも一緒に遊ぼうよ!」

シャロンの部屋で散らばったカードの整理をしていたら、リビングで電話をしてたシャロンが戻ってきて突然言い出した。

「別にいいけど、俺なんか居て迷惑じゃないか?あとこんな散らかってる部屋見られても大丈夫なのか?」

デッキ構築をシャロンと考えていたらカードが足りないということで探していたら、いつの間にかカードが辺りに散らばってしまっていた。それを1時間半くらい片付けついでに整理していたのだ。

「カガリが居るのは問題ないけど、散らかってるのはちょっと困る...かな」

「ならとりあえずあとのカードは適当にしまっておこう。シャロンはリビングを綺麗にしておいで」

「うん!」

俺はカードを箱の中へと入れると乱れたベッドを綺麗にし、散らかったシャロンの服やパジャマを乾燥機に入れた。うん、とりあえず部屋の見た目は綺麗になった。これなら見られても問題ないだろう。

「シャロン、こっちは終わったよ」

「ありがとう〜、こっちもいいよー」

ゴミを袋へとまとめ終わり準備は完璧。

「あ、お菓子とかあったっけ?」

「うーんと、チョコレートが冷蔵庫の中にあったような」

冷蔵庫の中を確認すると確かにアーモンドチョコが2箱あるがそれ以外に出せるのはお茶くらいしか無い。

「少し少ないな、俺ちょっとその辺でなんか買いに行ってくるよ」

「うん、お願い。あ、ついでに夜ご飯に使ううどんも買ってきて〜」

「はいはい、ジュースは何がいい?」

「オレンジとりんご!」

「わかった、じゃあ行ってくる」

俺は上着を羽織ると近くのコンビニへと向かった。11月、季節的には寒い時期だがまだ日中は暖かい。それでも極度の寒がりの俺には充分寒いのだが。

コンビニでお菓子とジュースと頼まれていたうどん麺を買った俺はシャロンの家へと戻る。

「ただいまー」

戻った俺は玄関に見慣れない靴が一足増えていることに気づいた。リビングへ向かうと1人の眼鏡をかけた女の子がシャロンと話をしていた。

「カガリ!おかえりー」

「お、お邪魔してます」

見た目は一言で言えば普通の女子大生っぽい、頭良さそうな人だなと思った。あと、知っているような感じもした。以前会ったことあるような...

「うん、ただいま。シャロンのお友達だね、こんにちは」

「は、はい!私、山下美月といいます」

「俺は御影カガリ」

「美月は同じクラスなんだー、頭が良くて優しいんだよー」

見た目通りの娘か、しかしどこかで見たことある顔だな、知り合いでは無いはずだが。

「とりあえず、はいこれ、バウムクーヘンとポテチ買ってきたから」

「ありがとう〜、美月も食べよ食べよー」

「す、すみません、ありがとうございます」

美月さんはどうやら控えめな性格らしい。まあ騒がしい人よりは遥かに良いが。

それからしばらくはお菓子を食べながら会談を楽しんだ。と言っても基本的にシャロンと美月さんが喋っているだけで俺は携帯でゲームをしながら話を振られたら答えるだけだったが。元々人との会話が苦手なので特に初めて会った人がいると余計喋れなくなる。

「あの、カガリさん」

ポテチを箸でつまんで2つに割って食べやすくしていた時に美月さんから呼ばれる。

「ん?」

「えっと、その...シャロちゃんとはどうやって知り合ったんですか?」

いつの間にかシャロンは席を外していたらしく、こっちに話をしたという感じだった。多分トイレにでも行ったのだろう。

「近くの小学校でやってるソフトボールのチームの助っ人にシャロンが来たんだよ、そこで知りあったってわけ」

「そうなんですかー、シャロちゃん学校でいつもカガリさんの話してるんですよー」

「ふんふん、どんな話を?」

「ゲームが強くてとても優しい人だって、私には話してくれました」

「なるほど」

変な事を言われてないことだけは安心した。

「美月さんはシャロンとはどうやって仲良くなったんです?」

「シャロちゃん、最初はみんなから距離置かれてたんです。日本語は留学生の中でも上手だったけど...ほら、ちょっと元気過ぎるしゲームの話しかしなくて、話についていけなかったみたいで」

「まあ、なんとなく想像はつきますね」

「私はゲームが好きでたまたまシャロちゃんと趣味も合ったので、話すうちに仲良くなりました。たまに遊戯王やシャドウバースを一緒にやったりもするんですよ」

カードゲーム好きの女の子というのもなかなか珍しい。大学生なら友達とカラオケに行ったりボーリングとかゲーセンでわいわいやっているものだとばかり思っていた。

「ん?今シャドバもしてるって言った?」

「はい、騒乱パックの時からですが」

シャドウバースとは携帯アプリのカードゲームのことだ。アプリゲームでのカードゲームの中では恐らく1番人気で公式の世界大会が開かれるくらいだ。

「店舗大会とか出たことは?」

「1度だけですが、あります。決勝で負けちゃいましたけど」

やはり、俺は美月さんと以前会ったことがあった。

「それ、もしかして昨年の10月くらいだよね?確かESのアンリミの時のやつ」

「は、はい...そうですけ...あっ!」

美月さんも気づいたらしい。

「思い出した!あの時のサングラスの人!カガリさんだったんですね」

「そういえばグラサンかけてたね」

その日、友達と悪ふざけでサングラスをかけて俺達は店舗大会に出たのだ。当然店の人から注意されたが。

「怪しい人たちがいるって思ってとても緊張してたんですよ、案の定プレミしちゃって負けちゃいましたし」

「ごめんごめん、友達がどうしてもっていうから」

「今では懐かしい思い出なのでいいですよ。けどあの時の優勝限定スリーブ欲しかったなぁ...」

店舗大会で優勝すると普通では貰えない特別なゲーム内で使えるエンブレムとスリーブが貰えるのだ。そしてその時のスリーブというのがかなり人気の高いモンスターがデザインされていたやつでそれ目当てにその時の大会はかなり人が集まっていた。

「何の話をしているの?」

「うわっ!?びっくりしたーいきなり抱きつくなよ」

トイレから戻ったシャロンが俺の背後からいきなり抱きついてきた。思い出話に夢中で全く気が付かなかった。

「ちょっとした世間話だよ、あとはシャロちゃんのこと」

「えぇー、カガリ変な事言ってない?」

「言ってないよ、あと暑い」

「やーだー、離れたくないー」

「ふふっ、本当仲良しですね」

「えへへー、ダーリン大好きよ」

人前で恥ずかしがる俺を他所にシャロンと美月さんはおかしそうに笑った。

続 く

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青春の無い堕落男と青春を忘れた外国人美女に幸福の鐘が鳴る 御影カガリ @KagariVtuber293

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