第1節

終章はまだまだ先の物語ですよ。


「カガリ!ここ行きたい!」

いつもの事だがシャロンは唐突に、完全に何も考え無しに突然何かを始めたりどこかへ行きたがったりする。携帯の画面に映し出された場所は沖縄。夏休みは終わっているとはいえまだまだ暑い日が続いている、まあ季節的にも適切ではある。

「うん、俺も行きたい」

「でしょ!行こうよ!」

「いや、行くって交通費とか泊まる場所とかどうすんだよ」

「パパに頼んでみる!」

シャロンはどこかに電話をかけている。いやいくらなんでもそう簡単にどうこうできる問題じゃ...



「いやいや...」

その日の昼間、つまり数時間後。俺とシャロンは那覇空港に到着した。



シャロンの家族のことは正直今でもよく分かっていない。お姉さんがいるということは聞いている。だがシャロンの両親が何の仕事をしているかとか母親は日本のどこで産まれたのかとかそういう事はシャロンからは聞いていない。聞いたところで何かある訳でもないからな。けれどこれだけは言える。

彼女の家はかなりの金持ちだ、ということ。



「私ね、こっちに来る時ママに猛反対されたんだ。ソフトボールでそこそこ良い成績残して、地区の代表にも選ばれて、そのキャリアを捨てるような道に進んで本当にそれでいいのか?って。

それでも、憧れだったから、どうしても来たかった。ママが生まれた国で、私が知らないこと、写真でしか見たことない物、いっぱい見たかった!だから、ママにもパパにも感謝してる。そのままオーストラリアの大学に通ってたら、カガリにも出会えなかった」

「そうかもな。俺も大学に通ってたら、金髪で背が小さいくせにやたら胸と声がでかい元気いっぱいのアメリカ人の恋人には出会えなかったかもな」

「DDTかスタイルズクラッシュかロックボトムかF5好きなの選んでいいよ?」

「笑ってない笑顔で4の字固めキメながら聞くのやめてください俺が悪かったです許して(泣)」

この後アームバーキメられて腕折られそうになった。




「なあ、これさーどっちの方がいいと思う?」

「私そういうのわからないけど、こっちの方が可愛いと思う」

「いやー、けどこっちも捨てがたいんだよなぁー」

「迷ったら神様に聞くのがいいんじゃない?」

「こういうのって神頼みするようなことか?」

「何か違う気がしてきた」

「シャロンが言ったんだろうが...」

「うーん、けどカガリは絶対こっちの方が好きそう」

「その心は?」

「女の子が好きだから」

「よくおわかりで」

結局右手に持った百合系恋愛ゲームを買うことにした。

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