014 冬の寒さに打ちひしがれずにXIV
ビギナーズラックだ————あまりに下手くそな人やいつもやこういったことをやらない人がたまたまラッキーなことに当ててしまう事を意味する。
「ま、そういう時もあるか……」
俺は嬉しそうにしている桜を見て、微笑むことしかできなかった。
すぐに取ったぬいぐるみをカートの中に入れて、他に何かないか探し回る。
一周したところであまり欲しいと思った商品は出ておらず、諦めて帰ることにした。
時刻は午後四時四十八分————
駅の駐輪場に自転車を止めておいた俺達は、買った食材のレジ袋を自転車のかごの中に入れ、鍵を解除すると、サドルにまたがり、そのまま前進した。
「あ、桜。のどが渇いたからそこら辺にある自動販売機でジュースでも飲んで帰るから先に帰っておいてくれるか? すぐに追いつくから……」
「分かりました。それじゃあ、先に行っていますからすぐに追いついてくださいよ」
「ああ、飲んだらすぐに行くよ。後、そのぬいぐるみは分かっているだろうな?」
「分かっていますよ。帰ったら部屋に飾らずに選択するんですよね」
「そうだ。ああ見えても、中は汚いし、誰が触ったのかも分からない。服とは違って、ぬいぐるみはあまり使う時が無いからな……」
「じゃあ、先に帰っておきますね……」
左手で軽く手を振り、駅から東側の方へと桜は漕ぎ始めた。
いつもは一緒に帰っているか、冬になると、何故か人を見送るのがどれだけ悲しくなるのかそんな気分を味わったような気持だった。
俺は彼女の姿を見送ると、駅の
桜と別れてから十分後————
ウゥウウウウウウウウウウウウ!
と、パトカーのサイレンの音と、救急車のサイレンの音が近くで鳴り響き、一定の距離を保った後、音が消えた。事故がこの近くであったのか。そう思った俺は、すぐにスマホを開いて、SNSで『交通事故』と検索をした。
すぐにさっきの交通事故の情報が流れていた。どうやら野次馬が次々とSNSに投稿しているらしい。
その中で一人の投稿者の画像を見た。
時間的にも『まさか……』と思った。でも、そんな事を信じたくないと、他の投稿者の写真や動画を見ていくうちに確信していった。
そこには見覚えのあるクマのぬいぐるみが地面に転がっていた。
血の気がスッと抜けて青ざめていく俺は自転車を方向転換させ、すぐに事故現場へと急いで足を運んだ。
信号を三つ進んだ先に救急車とパトカーが止まっており、周りに大勢の人が立っている。
嘘だ、嘘だと思いながら自転車をすぐ近くにおいて、人の壁を横入りしながら前へと歩いていく。
すると、そこには思ってもいなかった現実が舞い込んできた。
やはり、あの髪型と体型、それにあの自転車やぬいぐるみが同じだ。
桜……!
俺は目から涙を流しながら彼女の元へ歩み寄る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます