013  冬の寒さに打ちひしがれずにXIII

 買った商品を一緒に入れられたレジ袋に重い食材から入れていく。


 大袋が大体三枚ほど入っており、それだけ買っている食材が多い事に思い知らされる。手順よく仕分けをして、さっさと入れるとカートとかごを集めている場所に戻す。


「あ、かける君、ありがとうございます。それじゃあ、行きましょうか!」


 両手に塞がったレジ袋を桜はさっと一つ取り上げて両手で持ちながら歩く。三階まではエスカレーターで上がり、そこから再び三界に置いてあるカートと買い物かごにレジ袋を入れると、すぐ近くにあるゲームセンターに向かった。


 メダルゲームとUFOキャッチャーの二つに分かれており、小学生や中学生のほとんどはメダルゲームをする人が多いが、今日は平日、それに高校生が下校時にゲームセンターによる時は、ほとんどUFOキャッチャーか、格闘ゲーム、リズムゲームなどの高校生にピッタリな遊びをするのだ。


「それにしても毎回来ると音が大きいですね。私一人だったら絶対に来ないですけどね……」


「そうだよな。俺は一人でも気楽に来ることがあるからそこまで思はないけど……。さて、一つでも多く落としていくか……」


 そう言って、財布の中身を確認する。今月はお年玉というボーナスが入ったのはいいのだが、欲しいものに買ってしまい、財布の中身は野口が五枚と福沢が一枚しか入っていない。小銭は少しあるが、あまり使わないでおこう。


 俺はカートを押しながら何か新商品が出ていないかUFOキャッチャー台をぐるりと、廻ってみる。


「翔君、このぬいぐるみ可愛いですね。これって私でも取れますか?」


 目を輝かせながらその可愛いクマのぬいぐるみを欲しそうに見つめている。


 確かに取れそうな位置にはあるが、問題はサイズだ。両腕で抱えるような大きさで、このUFOキャッチャーのアームから計算すると、そう簡単にとるのは難しい。それよりもこれにふさわしい言葉がある。


 UFOキャッチャーはある意味、大きな貯金箱ちょきんばこである————


 だが、逆にこういったのは首辺りを狙うか、後ろの方から体を起こして、金を何度か投入して落すという方法が一番ノーマルな方法である。


「まぁ、言われてみれば取れそうに見えるが、これにはかなりの技術がいるぞ。せめて五百円玉を投入して……何回かプレイしないと……」


「あ……取れた!」


「え、うそ……」


 いつの間にかプレイしていた桜は、自分のお小遣こづかいでその大きなクマのぬいぐるみを落としていた。


 俺はポカンと、それを見ていて唖然とする。

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