012 冬の寒さに打ちひしがれずにⅫ
「それにしても大体一週間分で今、どれくらい食材に費用が掛かっているんだ?」
俺はどんどん買い物かごに入れていく桜を見て、試しに訊いてみた。
「そうですねぇ……一週間分だと、大体一万円くらいは掛かりますよ。それに牛乳やお茶は艇的に買っていますし、せめてプラス五千円といった所ですかね……」
要するにそれを約三、四週間分加算すると、七万円は食費として消えていくことになる。他にも服や洗剤などを入れると月に十万程度、親父の給料からすると大体一割が消えていく計算になる。一年間に直すとそれは約百二十万円だ。
金を稼ぐのにも大変だな……。これでも節約はしている方だと思うけど……。
「お前も大変だな。親父がくれた生活費から考えて通帳から金を下ろし、それで買い物をしないといけないから……」
「最初のうちは大変でしたけど、今になっては当たり前になってきていますからどうでもないですよ」
「……。俺も将来、一人暮らしになったらそうしないといけないんだろうな……」
思ってもいない事を口にした。
将来の事なんてこれっぽっちも考えていない。これから先、一人暮らしが始まるのは明らかに事実である。この家を出て行き、一人で家事やこういったことをしなければならないだろう。
だが、家にいれば桜がいつも世話してくれる。そんな当たり前だと思っている自分がいつの間にかいて、それでもいいかと思ってしまうのだ。
「だったら私が毎日、
「そうかい……」
どうやら地の
自分の人生を俺なんかに使われても悪い気はしないが、時々、それでもいいのかとも思う。
だから、暦姉はそれを悟って、俺に相談したのかもしれない。
「でも、ほどほどにしてくれよな。お前にだってお前の人生があることだしな……」
「そうですね。翔君はたぶん、私がいないと全てがダメダメだと思いますし、心配になるんですよ」
と、俺よりも
そんな話をしながら食品コーナーを一周ぐるりと回り終えると、レジにカートを押して、かごをレジ台に置いた。俺は先に前の方に出て桜が精算し終えるのを待つ。
時間の流れは戻らない。今も一秒ずつ未来へと向かっている。それがどんな分岐点に分かれるのか、そんなの俺達人間には分からない。もしかすると、神様がそれを試練として与えるのだろう。
「合計で一万三四〇六円となります」
レジ係の店員のお姉さんにそう言われると、桜は財布の中から言われた金額より少し上乗せして出した。
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