010 冬の寒さに打ちひしがれずにⅩ
腕時計で確認すると、時刻は午後二時五十四分————
今から買い物をして家に帰るまで計算に入れると大体五時前後になりそうだ。
「
「別にいいじゃない。問題ないでしょ? それにそこの男が女に関する事に敏感だということに私だって隠し通せるものではないでしょ」
「それもそうだけどさ……」
俺と小泉は互いに溜息をついた。
確かに
「翔君、帰りましょうか?」
俺達は教室を出て、靴箱へと向かい、靴に履き替えると自転車を止めている駐輪所へと向かった。
「颯太、言っておくが今回だけはお前を家に入れるつもりはないぞ。そこのところは小泉から聞いているんだろ?」
「ああ、もちろん。今回は、俺も手を引くさ。だけど、本当に大丈夫なんだろうな? その件に関して……」
「話さないと分からねぇよ」
「そうか……」
「翔君、颯太君。帰りますよ!」
小泉と前に歩いている桜が言った。
俺と桜は隣同士に自転車を止めており、すぐに見つけられる。颯太と小泉も同じように少し離れた場所に一緒に置いていた。
自転車のキーで
「それじゃあ、行くか……」
「はい……」
俺達四人は自転車に乗って校門を出ると、坂道を下り、下校する。
橋を渡り二つ目の交差点に差し掛かると、颯太と小泉はここで別れることになる。
「翔、じゃあな……」
「ああ、また、明日な……」
俺は颯太に別れの挨拶を告げると、桜と二人、真っすぐ自転車を漕ぎ続けた。
冷たい風が自転車のスピードに合わせて肌に伝わってくる。首に巻いているマフラーが宙を舞い、後ろに流れて行く。
「翔君、今日は暦姉さんと何を話していたんですか? その颯太君と話しているのを聞いていて気になったので……」
「ああ、その事か……。家に親父がいないのに二人で大丈夫なのか、みたいなことを聞かれたんだよ。暦姉は一応、ああ見えて教師だからな……」
「そうですか……。そうですよね、高校生の男女二人が同じ屋根の下、二人っきりだと誰でも心配しますよね」
桜は頬を赤くしながら恥ずかしそうに言う。何を考えているのか、大体は想像できる。
「それでなんだが……今週末、暦姉が泊まることになってな……。もう一人分の料理もお願いしてもらってもいいか? 親父が連絡もなしに勝手に許可したらしくてな……」
俺はバツが悪そうに桜のご機嫌を窺いながら話した。
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