005 冬の寒さに打ちひしがれずにⅤ
俺と桜は今まで喧嘩したことが無い。それ以前に喧嘩をする理由が見つからないのだ。
家の掃除も週末にはしっかりとやってくれるし、朝昼晩と、バランスの取れた料理を遅くまで仕事で帰ってくるのが遅い俺の親父の分までしっかりと作っておいてくれるのだ。他にも色々とやらせっぱなしで実の息子である俺は、朝起きて、食べて、学校に行き、帰宅して、食べて、勉強して、寝ると、ごく普通の繰り返される生活を永遠に繰り返している。
「それにしてもネックレスって今時の女子高校生はこういうのが好きなのか?」
「さぁ? 俺は買わされた時は『ええ?』と思ったけど、これはこれで後々、可愛い所があるんだなと思ったよ」
「ま、変なぬいぐるみとか、アイドルのCDなどを買わされるよりか俺はいいと思うぞ」
今日は綺麗に晴れた空から冬の太陽がストーブ代わりに地上を照らし、暖かな光で外から教室へと舞い込んでくる。
「翔君、今日は帰りに買い物して帰るんですけど……どうしますか? できれば荷物を持ってほしいのですが……」
桜が箸を風呂敷の上において俺に話しかけてくる。
「うん? ああ……別に用事と言った事はないからたぶん大乗だぞ。で、どこのスーパーに行くんだ?」
「駅前にあるショッピングセンターです」
「あそこか……。うん、分かった……」
俺はあっさりと彼女の頼みに承諾した。いつも暇なのは変わりなく、この時ぐらいは彼女の役に立っても悪い気がしないと思っている。
「あなた達、普通に買い物とか行くって淡々に言っているようだけど、周りからすれば……特に菅谷君、男子生徒たちから憎まれている事が分からないの? 彼女でもない桜を独占していること自体罪なのよ……」
小泉は颯太と同じことを言う。そんなに俺が悪いのだろうか?
俺は静かに冷たいご飯を口の中に入れた。
「
それを心配そうに見つめる桜。
そもそも桜の人気が高いのは可愛い、性格がいい、頭がいい、料理がうまいなどの三拍子以上の完璧と憎めない事からである。それを俺だけが独占、恋人、彼氏ではない事から恨まれ続けているのだ。
大まかに言えば、桜にとって俺は男避け、魔除け代わりになっているから気にしてはいない。
「小泉、俺は憎まれたって、恨まれたっていいんだよ。もし、桜に彼氏ができた時は俺が身を引けばいい事だけだしな……」
「本当に鈍感男ね……。颯太よりもイラつくわ」
小泉は弁当を食べ終わると、どこかへさっさと姿を消してしまった。
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