002  冬の寒さに打ちひしがれずにⅡ

「あ、うん……。かける君が頑張っているなら私はそれでいいと思いますよ。人は結果もそうですが、努力していればいつかは実ると思いますよ」


 と、優しい言葉を並べながら羽咲桜はねさきさくらが微笑を掛けながら言った。


 肩の位置まで伸ばした赤髪の入った茶髪のセミロングに、前髪の左の一部を白い髪留めで結んでいる。


 その笑顔は人を幸せにする感じを漂わせ、彼女のファンクラブが男子の間であるほど人気がある。


 そして、羽咲桜は俺の幼い頃からの幼馴染であり、家も隣同士で家族ぐるみも多かったが、今から約五、六年前。桜の両親は飛行機事故で命を落とした。丁度、学生時代の同窓会で二人は同じ地元だったため、共に帰郷していた頃だった。乗っていた飛行機が山に墜落し、その後、天涯孤独てんがいこどくとなった桜は行くところが無く、俺と俺の父である宗次郎が桜を引き取ったのだ。俺の母親は俺を生んだ後、病死しており、二人家族だった一軒家に桜が加わり、にぎやかな三人家族となったのだ。


「それにしてもよぉ……翔はこんなに出来のいい幼馴染がいるのに恋心が彼女に動かないってどういうことだよ? お前、桜ちゃんの事、本当はどう思っているんだ?」


「どうって……そりゃあ、出来のいい妹というかお姉さんというか、そんな感じのただの幼馴染だよ」


 俺は桜を見ながら思ったことを口にした。


「はぁ……お前、最低だな。桜ちゃん、この回答に対してどう思う? いつも家事洗濯をして、おまけに昼の弁当まで作り、結構あいつに尽くしているとは思っているんだが、これは俺的にはひどいと思うぞ」


 颯太そうたは額に手を当てながら深々と溜息を漏らした。


「まぁ、それが翔君ですから……。私も好きでお世話しているわけですし、いいんですよ。でも颯太君はいいんですか? こんな所を彼女さんに見られたらたぶん、セクハラとかで誤解されますよ」


 桜は笑顔でそう返した。本人曰く、本当にそう思っているから恋心も抱かないのかもしれない。


「いいんだよ。あんな冷徹女、間違って付き合ってしまったようなものだし……。それに願うならもう一度、あの日に戻りたいと何度後悔したことやら……」


 颯太は暗い顔をして話し出した。


 颯太の彼女は、まじめな性格なのだが、気が強くて、桜とは話が合う少女である。


「そうですか……。颯太は、私の事をそんな風に思っていたのね? 告白してきたのはそっちの方だったでしょ!」


 と、背後から怒りを表にしている声が聞こえてきた。


 颯太は恐る恐る振り返ると、そこにはものすごい顔で堂々と仁王立ちしている少女がいた。


「あ、友理奈ゆりなちゃん……。こ、これはですねぇ……言葉の綾というかなんと言うか、そんな感じみたいなものです。はい……」


 段々小声になっていく颯太を見て、俺はやれやれと思うしかなかった。

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