第1章 冬の寒さに打ちひしがれずに
001 冬の寒さに打ちひしがれずにⅠ
高校一年の冬、一月下旬————
俺の通う南ヶ丘高校は少し寂しい時期を迎えていた。
この時期になると三年生のほとんどは国立試験や私立試験でほとんど学校にいない。そして、無事に合格すると高校から姿を消し、自宅自習期間に入ってしまうのだ。だから、校舎内も普段と違って物静かである。
いつの間にかスリッパしかない靴箱。傘置き場には忘れ物が二、三本置いてある。
彼らの教室に用があった時、偶然にも見てしまったカウントダウンの数字。
高校生の三学期は長いようで短い時期だと思い知らされるのだ。
そして、中央校舎の一階には一年生の教室が一組から六組までずらりと並んである。
俺が在席しているクラス、一年三組は靴箱からスリッパに履き替え、中央校舎に入り、左に曲がると、男女トイレのすぐ隣に位置する。
今日の空の天気は晴れ。だが、少し、雲行きが怪しいのが微妙である。
俺の席はいつも通り窓側の席の最後尾の場所にある。ほとんどの生徒が、後ろの席で窓側の席を狙っているのは明らかであり、くじ引きになると、運試しの戦争が起こる。
「
と、俺に昨日の数学の小テストで高得点を自慢してくる男子生徒がいた。
眼鏡をかけており、茶色の短髪で、顔の方はまあまあの少しうざったいノリのいい少年である。
彼の名前は
「あ、そう……」
「なんだよ。ノリが悪いな。お前の見せてみろよ!」
俺の机の上に置いてある小テストの用紙を颯太は奪い取った。
そして、テストの結果を知ると、小声で笑いながらお腹を押さえている。彼の奪ったテスト用紙を奪い返すと、不服そうに机の中に入れる。
「いやー、悪い、悪い。まさか丁度平均点の三五点丁度だったとは思わなかったよ。気を落とすなよ……。小テストは日々の復習がいかに重要かを教えてくれるものだからな」
「その満点を取れなかったお前が俺に言う資格でもあるのか?」
俺は颯太の痛々しい所を突いていく。
「うっ……それを言われると、言い返す言葉ないなぁ……。
颯太は苦笑いをしながら翔の隣の席に座って次の授業の準備をしている少女に話しかけた。
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