第2話ジョージ・マイケル2
本社は
ちなみに、2118年現在。主流の運輸方法はドローンである。2020年ごろから普及し始めたドローン配送は順調に成長し、今では大型荷物のみトラックで配送している。
コードネームは上から順に
紅人は地下1階に着くとコードネームを持たない者たち「ノーネーム」に席を外すように伝える。彼は、今回の仕事はまだ裏社会の仕事に慣れていない者には重いと判断した。
「ノーネームに席を外させた理由は他でもない。政府の仕事をするためだ」
紅人は先程大臣から受け取った資料を
「政府からの依頼はこの男の
大まかな説明を終えると1人の男が手をあげる。
「
「期間はどのくらいですか?」
「作戦期間は予備を入れて11日。2週間以内に羽田に送れとの指示だ」
期間の短さを聞いて一部の部下は厳しい表情を浮かべる。彼らが不安に思うのも無理はない。この手の作戦は普通1ヶ月以上の準備期間を
「日程は厳しいが私はやれると判断した。総員準備にかかれ」
「了解」
紅人の部下は彼に一礼すると各々の準備にかかる。
「紅人さん。今回はどの飛行機で行きますか?」
先程とは違い言葉遣いを整えた
「中型輸送機で行く。
「了解であります」
大方指示を出し終わった紅人も自分の装備を点検するため、奥の社長室へ入る。
社長室はシンプルな作りで家具は大きな机と応接室セットがあるだけだ。彼は備え付けのクローゼットを開くと中からケースを2つ取り出す。大きなケースには87式
今になっても兵士の主力武器は第二次世界大戦の時から変わらず銃器だ。ほとんどの銃器が100年前と同じで、火薬を使って弾丸を飛ばすものである。しかし、最近になって火薬を使わずに弾丸を飛ばす
『どんな
次に80式拳銃を分解して汚れを丁寧に拭き取っていく。拳銃の
銃の整備を終えた紅人はそれぞれの
弾倉を作り終わると社長室のドアが「失礼します」という声とともに開かれる。
「紅人さん。今回の目標についてわかったことがありマス」
外国人
元日本軍サイバー科のエースハッカーで、彼にかかれば一度でもオンライン上に出てきたことのある情報は全て
「教えてくれ」
「ターゲットは警察ではなく軍人に守られていて、国外逃亡の危険があるなら
「ありがとう。下がっていいぞ」
タクミは一礼して社長室を後にする。本当は紅人に仕事を断って欲しかったのだが、それは無理なようだ。だったら気持ちを切り替えて前向きに行くしかないとタクミは思った。
どうやら官邸で思い浮かべた最悪のビジョンが現実になりそうな予感がしてきた。
次の日。紅人は朝7時に本社最上階の社長用仮眠室で目覚めた。キングサイズのベットで1人で寝るには大きすぎる程だ。
日本有数の企業の社長である
その分普通より多くテストを受けさせられているが、頭はいいので問題ない。自慢ではないが、全国模試ではいつも2位を取っている。ちなみに、1位は乾あかりという毎回全教科100点を取る上に、15歳でノーベル賞を取ったことのある
紅人は自動調理装置「ディッシュメイカー」の電源を入れるとタッチパネルでトーストを注文する。この100年で人間が家事をする必要は無くなった。食事は材料を買ってきて機械に突っ込めば勝手に出来上がるし、掃除はロボットがやってくれる。
「食事が出来上がりました。お召し上がりください」
ディッシュメイカーは
朝食を済ませた紅人は紅茶をすすりながら端末を開き、お金の整理をする。今日は早退した後、母の元を訪ねて生活費とその他のお金を渡さなければならない。
戦前、紅人から見て祖父にあたる者を早くに亡くした父は、最強の人間を作ることを強く望んだ。その結果、『デザインチャイルド』と呼ばれる遺伝子組み換え人間として生まれたのが紅人だ。実験のため、紅人の父と母は結婚せず彼を作った。言うなれば種と土壌の関係だ。
遺伝子組み替えで生まれた彼を自分の子として見られなくなった母は、彼が3歳の時妹を連れて出て行った。その後、別の男と結婚して2人の子供を授かった母だが、実験に協力する
「そろそろ行くか」
彼はベットの横の引き出しから80式拳銃を取り出し、腰の後ろのガンベルトに収める。ブレザータイプの制服の左の内ポケットに予備弾倉を2つ入れる。2118年現在も一般人の
エレベーターを降りた紅人はマークの付いていない
時刻は8時40分。9時には職委員室に行くと伝えてある。ナビで調べると学校までは30分。間に合うためにやるべきことは1つだ。彼はいつもよりアクセルをふかして学校へ向かう。
道路交通法を大幅に
「失礼します」
紅人は職委員室に入ると担任の先生の元に向かう。
「体調は大丈夫なのか?
天城というのは
「大丈夫と言いたいところですが、明日から2週間ほど治療のため欠席させていただきます」
紅人は担任に
「辛いかもしれないけど、最後まで諦めず頑張るんだぞ!」
先生の
職委員室を後にした紅人は保健室に立ち寄る。病弱という設定を
「失礼します」
「あら、紅人くん。久しぶりね」
「山中先生、今は
山中はいたずらぽい笑みを浮かべる。
彼女は
「
友美は着ていた白衣を肩まで下ろし、豊満な胸を半分あらわする。普通なら顔を赤らめて恥ずかしがるか、
「先生、18歳の私からしたら、26歳の先生の色気は大人びすぎて気が引けます」
それは遠回しに「ババアの体を見ても
「それより、今のアメリカについて教えてください」
紅人は丸椅子に腰掛ける。その間に友美は下ろした服と白衣を元に戻す。
「私なんかより紅人くんの方が詳しいんじゃないの」
「たしかに国内のネットワークにはいくらでも介入出来ますが、海外はそうはいかないんですよ」
タクミの腕を使えば海外の機密情報にアクセスできないことは決してないだろう。しかし、確実に足がつく。国内にはオリジナルの脱法回線を構築しているタクミだが、海外の情報にアクセスするときにはせいぜい、公共の回線を迂回して足取りをつかみにくくすることぐらいしかできない。だから、リスクを追って調べるより公安のおねーさんに聞いた方が
「最近は政権交代で言論に対する弾圧が強くなったかな。後は軍備拡張のスピードが早まってきたかな」
「うちの政府はそれを黙って見ているのか?」
「今は選挙前でそれどころじゃないんだよねー」
「野党に政権を取られるとめんどそうだな〜」
今の与党は戦前から政権を取っているためいろいろと
「だから、最近のアメリカ空軍はフランス空軍並みの力を蓄えてるかな」
「敗戦から3年で国力を取り戻すとは、さすがアメリカですね」
「私が知ってるのはこんなもんよ」
「ありがとうございます。また来ます」
紅人は椅子を戻して保健室から出て行く。
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