第二十一話 喧嘩するほど仲が良い


「二人とも、そろそろ落ち着いた?」


「ええ、落ち着いたわ……」


「アタシも落ち着いたよ……」


「もう、二人ともすぐに喧嘩するんだから……次に喧嘩したら、あー君に言いつけるからね!」


 温厚な夕空が珍しく語気を強めて言った。


「ごめん、悪かったからそれは勘弁して……」


「反省したから、それだけはやめてぇ……」


「本当に反省したならいいよ。ほら、仲直りの握手」


「嫌だけど、分かったわよ……」


「うぅ……言い争いなんかするんじゃなかった……」


 夕空に促され、真昼と夕優は握手をした。


「それじゃあ、私は夕飯の仕度するから、二人は適当にくつろいでて」


「くつろぐっていっても、何をしようかしら」


「うーん、特に思いつかないなぁ……」


「あ、それじゃあ、アンタの車のカスタムの考えようか」


「ナイスアイデアだよ!じゃあさ、私の部屋で考えよ!さ、早く行こ!」


「はいはい、分かった分かった」


「ご飯できたら呼びに行くから、ほどほどにしてね」


「はーい」


 ………

 ……

 …


「あー、美味しいかった。流石は夕空ね、プロ顔負けの腕前だわ」


「そんなに褒められると照れちゃうよ」


「お姉ちゃん、自信を持って!今すぐお店をやっても、大繁盛間違いなしだよ!」


「もう、ゆーちゃんまで……そんなに褒めても、何も出ないからね」


「それはそれとして、ルームシェアの件、お許しが出て良かったわね。住人が一人増えたけど。急に自分も住むって言い出すから、ビックリしたわよ」


「だって、ルームシェアってなんか楽しそうじゃん!」


「ふふふ。三人で暮らすの、凄く楽しみだね」


「まずは、物件を決めないとね。今日内見した所でもいいんだけど、

 三人で暮らすなら別の物件も見たいかな。二人は何かリクエストある?」


「うーん、アタシは特にないかなー。強いて言うなら、お爺ちゃん家から近い所がいいかな。そしたら、朝陽ちゃんにすぐ会えるじゃん」


「私はキッチンが広い部屋がいいな。三人分の食事を作るなら、広い方が色々便利だからね」


「お爺ちゃん家から近くて、キッチンが広い物件ねぇ。多少家賃が高くなっても、良い物件探してみるわ」


「家賃とか食費はアタシも出すから、高くても大丈夫だよ」


「そう?それじゃあ、家賃は気にしなくていいわね。早速検索サイトで見てみましょう」


「じゃあさ、アタシの部屋に行こうよ。いつまでもリビングにいるわけにもいかないしさ」


「そういえば、アンタってパソコン持ってたわよね?モニターの大きいやつ」


「うん、持ってるよ」


「それじゃあ、そのパソコンで検索しようか。それならみんな見やすいからね」


「オッケー!じゃあ先にいって起動しとくねー!」


 夕優はドタバタと階段を上がっていった。


「ゆーちゃんたら、まーちゃんがいて余程楽しいみたい。あー君が泊まった時より楽しそうかも」


「そうかしら?私にはいつもの夕優にしか見えないけど、姉のアンタが言うならそうなのかもね」


「ふふふ。それなら、まーちゃんといる時のゆーちゃんは、きっといつも凄く楽しいんだよ」


「まあ、そう言われると悪い気はしないわ」


「おーい!お姉ちゃんも真昼も、早く上がってきなよー!」


「ふふふ。ゆーちゃんが待ってるし、そろそろ行こうか」


「そうね、行きましょう」


 夕優の部屋に向かって、真昼と夕空は階段を上がっていった。


 ………

 ……

 …


「なかなか良い物件ないねー。やっぱり、お爺ちゃん家から近いっていうのがネックなのかな」


「そうね。あそこはちょっと田舎だから、どうしても候補が限られるのよね。いっそのこと、戸建にしようかしら」


「うーん。3人で戸建は広すぎるんじゃないかな」


「アタシは真昼に賛成かな。戸建ならお爺ちゃん家に近いのもあると思うし」


「あ、この物件はどう?お爺ちゃん家から近くてキッチンも広いし、築浅だし、ここの内見いってみない?」


「うん、ここならちょうど良いかもね。掃除は頑張らないとだけど」


「アタシも出来る範囲で手伝うから大丈夫だよ!」


「私は何も出来ないから、申し訳ないけど家事は夕空達に任せるわ」


「ゆーちゃん、ありがとう。まーちゃんも気にしないで、家事は私はするって約束だったしね」


「さてと。めぼしい物件もとりあえず決まったし、今から何する?お風呂入って寝る?」


「うーん、まだ寝るような時間じゃないしなー。ゲームでもする?」


「あら、いいわね。ゲームなら朝陽に鍛えられてるから、結構自信あるわよ」


「朝陽ちゃんにボコボコにされたけど、真昼には負けないよ!」


「ふふふ。じゃあ、私は二人の応援しようかな」


「えー、お姉ちゃんも一緒にやろうよー!」


「うーん。私、あんまりゲームならやった事ないから、見てるだけでいいよ」


「そう言わずに夕空も一緒にやりなさいよ。みんなでやれば楽しいからさ」


「真昼の言う通りだよ。お姉ちゃんでも出来るゲームにするから、一緒に楽しもうよ!」


「それじゃあ、お言葉に甘えて混ぜてもらおうかな。二人とも、ありがとうね」


 この後、夕空がゲームにハマってしまい、三人が寝たのは、空は白み始めた頃だった。

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