第四話 帰郷

「ふあぁぁぁぁぁあ……」


 1時間半のフライトを終え、降機してロビーに出た途端大欠伸が出た。


 そりゃそうだ。


 ほとんど寝てない上、痛みを伴う最悪の目覚め方。


 すっきり最高な目覚めなわけがない。


 ほんと最悪。


 痛いわ眠いわ腹ペコだわで、感傷に浸る事さえ出来ない。


 ほんと、なんでこんな目にあわなきゃいけないんだ……。


 まあ、自業自得なんだけどさ。


 さて、と。


 後悔しても仕方ない。


 頭を切り替えて、カフェに行って朝食を摂りながら叔母さんを待とう。


 ………

 ……

 …


「ふぅ」


 食った食った、大満足。


 定員さんおすすめのラテとホットドッグが美味しかった。


 腹も膨れたし、あとは叔母さんが来るまで時間を潰すだけだ。


 とりあえず姉ちゃんがくれた冊子を読んだり、買い物リストでも作ろうか。


 ………


 ……


 …


「大体こんなものかな」


買い物リストができた。


 結構買わなきゃいけない物がある。


 生活必需品だけじゃなくて、家具家電も必要だ。


 なんせ、テレビと炊飯器、冷蔵庫以外はクーラーすらない家だからな。


 どんな秘境だよ。


 現代っ子が住むには過酷な環境すぎる。


 幸い稼ぎは良い方だから、資金には余裕がある。


 最新家電で最高の環境に改造してやるぜ。


 しかし、一つだけ問題がある。


 それは移動手段。


 近くにコンビニもスーパーもないから、食料の調達には町に降りて来る必要がある。


 一応実家から陸送で愛車が届くけど、バイクなんだよな。


 流石にバイクに大量の荷物は載せられないし、買い物の度に叔母さんに助けてもらうわけにはいかないし、どうしたものか……。


 ………。


 車、買おうかな……。


 どうせしばらくこっちで生活するんだし、買って損はないんだけど……何を買えば良いのか全くわからない。


 軽?普通?値段以外何が違うの?


 セダン?ミニバン?SUV?形以外何が違うの?


 FF?FR?4WD?もう意味わからん。


 姉ちゃんに相談しても、どうせ自分のと同じ車種にしろって言うだけだし当てにならない。


 ………。


 駄目元で姉ちゃんに電話してみるか。


 ♪〜♫〜♫〜♪〜♪ 、♪〜♫〜♫〜♪〜♪。


『もしもし』


「あ、姉ちゃん。朝陽だけど」


『どうしたの?もしかして、もう寂しくなって電話してきたとか?』


「違うよ。ちょっと相談があるんだけど、今大丈夫かな?」


『大丈夫だけど、相談ってなに?』


「実は車を買おうと思ってるんだけど、どんなのがいいかな?」


『車?何で車?』


「いや、車が無いと不便みたいだからさ」


『まあ確かに不便だろうねー。あんたのバイクじゃ買い物も出来ないだろうし』


「そうなんだよ。でも車に詳しくないから、何買ったらいいかわからなくて」


『そうだなー。私と同じ車種って言いたいけど、あれは買い物向きではないから、何がいいかな?』


 あれ?


 絶対自分と同じやつって言うと思ってたのに、意外な反応だ。


『おすすめはSUVかな。荷物沢山載せられるし、走破性も高いし。ただし、お値段も高いけどね』


「SUVか……なるほど、参考になったよ。ありがとう」


『どういたしまして。しかし、車買うなんて、そっちに移住するつもりじゃないでしょうね?』


「まだそこまで考えてないよ。でも、買って損はないでしょ。家族ができたら、どうせ必要になるんだし」


『家族はもういるじゃない。私という最愛の姉がね』


「いや、家族って奥さんや子供の事だからね?」


『照れなくてもいいのよ?たとえ姉弟でも、愛があれば問題な___』


「ありまくりだよ!」


 大声でツッコミを入れてしまった俺を、周囲の人達がじっと見ている。


凄く恥ずかしい……。


「はあ……とにかく、相談にのってくれてありがとう。また何かあったら電話するよ。じゃあね」


『ちょ、待って___』


 姉との電話を無理矢理終了して、急いでカフェから飛び出した

 はぁ……。


 途中までまともだったに、最後の最後でこれか……。


 まあ、今回は自業自得だな……。


 しかし困った。


 もうカフェには戻れないし、待ち合わせどうしよう?


 ロビーの椅子に座ってたら気づいてくれるかな?


 とりあえずトイレに行ってからロビーに行くか。


 用を足してロビーに行くと、空いてる椅子に座って一息ついた。


 さて、今何時だ?もういい時間だと思うんだけど。


 時計を確認すると、約束の時間を少し過ぎていた。


 あれ?


 叔母さんって時間に正確だったはずだけど、何かトラブルでもあったのか?


 まあ、いいか。


 そんなに急ぐ事はない。


 少しうとうとしながらゆっくり待つとしよう。


 俺は椅子に深く座り、目を閉じて周囲の喧騒に耳を傾けながら微睡に身を委ねた。

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