第8話─雲休宿
2人は話に夢中になり、もう何時間も歩いていた。
が、外の風景は一向に変わらない。
冷たい風が顔に打ち付け、太陽は沈みかけていた。
「ねぇ、まだ着かないの?全然風景変わらないし、疲れたわ」
「この都市は中心街以外、全部こんな感じの風景なんだ。我慢してくれ」
風景が一向に変わらないのには、実は理由がある。この都市には、魚や家畜が一切存在していないため、ここに住む天空人は約1ha(100m×100m)もの大きさの畑を所有し、野菜を育てている。よって、家と家との距離がとても離れているのだ。
それから2人は、出口の見えない道をひたすら歩き続けた。
やがて太陽は完全に沈み、辺りが暗黒と化した頃、2人はようやく中心街に着いた。
「あ、コノハ。光る噴水だ!」
目の前には、眩しく光る泉があった。水に光が通っていて、何とも神々しい。周りには、先程まではいなかった人々が沢山いる。
話をする者、店に入って夕食を取る者、デートをしている者……
先程の長い道と比べると、まるで別世界の様な光景がそこにはあった。
「ようやく着いたわー」
コノハは完全に疲れ切っていて、その場にしゃがみ込んだ。 勿論、僕も疲れている。
「よし、ここに泊まろう」
叶人は、目の前にある巨大な宿を指さした。光輝くこの街の中でも、特に輝いていて、とてつもない存在感を放っている。
「なんとも高そうな宿ね」
「そうだな」
宿の上を見上げてみると、まるで遥か遠くの月に届くのではないかという程の高さをしていてる。
見るからにヤバい宿だ。
「じゃあ、行こう」
僕はコノハを連れて、その巨大な雲休宿に入った。
「うゎ、これは凄いな」
「そうね、暑苦しいわ」
宿に入ると、エントランス付近に大勢の人々がたむろっていて、暑い空気がその場に立ち込めている。
「よし、まずは受け付けに行くぞ」
まず、宿を借りるため、僕たちは受付に向かった。今晩、この宿に宿泊する大勢の人混みを掻き分けながら、必死に前へと進む。
バンッ
とその時、ある1人の男が僕たちの前に立ち塞がった。
「おい、お前まさか叶人か!?」
その男を見た瞬間、僕は驚きのあまり硬直してしまった。
信じられない。
目の前にいたのは、龍我だった。
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