第7話ー光る都市

2人が扉をあけると、そこには美しい景色が広がっていた。

澄み切った青空と永遠に続く真っ白な雲、地平線の山々の向こうには、蓬莱山がそびえ立っている。

その付近には、空に浮かんでいる空雲都市が幾つか浮いている。

そして、太陽の光がそれらを光照らしている。


いつもと変わらない光景だけど、僕には全く別物に見えた。


スッーーーーーーー


冷たく綺麗な空気が、そっーと体内に取り込まれる。


「なぁ、コノハ。今から僕達はこの美しい世界を旅するんだ!凄くワクワクしないか」


「えぇ、とっても楽しみよ」


そう言うと、コノハは僕の右手を握りしめ、軽く目を閉じた。


「あぁ、リドベキア様。私は、今日から途方もない旅に出ます。それも全てあなた様のため。リドベキア様の願い、必ずや叶えて見せます。そして、この白雲世界を真の平和な世界にしてみせます。

なので、どうか、どうか・・・

どうか、天から私たちをお守りください」


フーーーっと深い息をつくと、コノハはそっと顔を上げた。


「えーっと、今のは?」


「まだ叶人には早いことだから、今度教えるわ。それより、叶人。先ずどこに行くか決めてあるの? 私、この都市について何も分からないんだけど・・・」


「あぁ、先ずはこの白雲世界に詳しい友人に会いに行くよ。いいかい?」


「助かるわ、有難う!」


コノハはコクリと頷いた。


そうして、僕らは長い雲を歩き出した。


歩く最中、叶人は地図を見せてコノハにこの都市について色々と説明をし始めた。


「この都市シウダー ペルディーダは長方形の形をしていて、今いる所はここ。ちょうど左下の所だ。で、今から向かう目的地はここ」


「右上。滅茶苦茶離れてるわ」


「そう、滅茶苦茶離れてる。だから、僕もその友人に最後に会ったのは数年前だ。で、今日はここまで歩こう」


叶人は、地図上のある場所に指をさした。


光泉街こうせんがい?」


「ここは、この都市の中心街。ありとあらゆる情報 が溢れていて、とても栄えている。そして、この街の真ん中、つまりこの都市の真ん中には、光る泉がある」


「街の名前、その泉が由来してるの?」


「よく気づいたな。その通りだ!」


「こんなに分かりやすい地名、誰でもわかるでしょ。でも、初めて聞いたわ」


「この街は光る泉だけど、残りの空雲都市の泉はそれぞれ異なる名前なんだ。

燃える泉、 芽吹く泉、 凍る泉、 眠る泉…………」


「ふーん、色々な泉があるのね。

というか、眠る泉って何なの? 謎だわ」


「眠る泉は、第5の空雲都市のヒュプノス ツクヨミ、通称眠る都市にあると言われている。

詳しい事は分からないが、眠る事を得意とする民族が住んでいることは分かる。

あっ、言い忘れていたけど、各都市には数字が付いていて、それは空雲都市が形成された順に付けられている。この都市は前にも言ったように最初に形成された都市だから、第1の空雲都市だよ」


「初めて聞くことばかり、勉強になるわ。

ねぇ叶人、1つ質問があるんだけど」


「何でも質問していいよ」


「第5の都市は眠ることが得意な民族って聞いたけ

ど、この都市の民族は何が得意なの?」


「よくぞ聞いてくれた!

我が空雲都市の民族が得意な事、それは・・・


農業だ!!!!!」


「しょぼいわね」


コノハは嘲笑した。


「しょぼいとは何だ。この都市の農家で作った野菜は、全都市に送られている。

つまり、この都市こそ1番重要な都市なんだぞ!」


「まぁまぁ、そんなに熱くならないでよ」


2人は話に夢中になり、何時間も歩き続けた。

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