第4話ー醜い人間
「今よりもずーっと前にある一人の男の人がいた。彼は人一倍争いを嫌う者だったそうで、何故人は争うのか 何故人は殺しあえるのかという事をいつも考えていたという。
争いの絶えない邪悪な村に住んでいた彼は、ある日一族から離れて一人旅を始めたの。
その旅の真の目的は、人々が争うことをやめるにはどうすれば良いのか という事を考え、答えを出すというもの。
彼はただ、そのことを追求した。
ある日、彼はいつもと同じように山を登り、山頂で瞑想をしていた。
そこで、彼はふとある物に目が留まったの」
「ある物って何だ?」
説明の途中、無意識のうちについ質問してしまった。
「まって、今から説明するから」
「あ、分かった。ごめん、つい気になっちゃって」
僕は、無造作に頭をかいた。
「じゃあ、続けるね。
そのある物とは、岩に突き刺さっている青く光り輝く石だっという。
あまりの美しさに彼はその石に手を触れてしまった。
その瞬間、彼が瞑想をしていたその山の標高が一気に上がったという。
地上から、何m、何十m、何百m、何㎞・・・
勢いよく上がっていくその山には、激しい風が打ち続けた。
轟々と風の音が鳴り響き、何本もの木がその豪風によって、飛ばされた。
やがて、物凄く厚い雲の中を突き抜け、その山は止まった。
後に彼はその青く輝く石の半分を粉々に砕いて地上にまいたという。
粉がかかった地上の人々は宙へ上がり、雲という土地と食糧を彼に与えられた。
やがて、宙へ上がった人々は大きな都市を造り上げたという。
その都市が第1の空雲都市、そう今私たちがいるシウダー ペルディーダ、今話した青く輝く石が最初の仙命石、山が蓬莱山とされていると言われている」
コノハの長い説明が終わった。
その話を聞き終えた後、一つの疑問が浮かび上がった。
「なぁコノハ、その話が本当だとしたら、何故仙人は仙命石を手に入れる必要があるんだ?
話を聞く限り、平和な話だったと思うんだが…」
「ねぇ、私たち人類は仙人、天空人関係なく欲望に満ち溢れた、強欲の塊なの」
「えーっと、どういう事だ?」
「空雲都市を築き上げた最初の天空人は、本来争っていた領土と食糧の問題が解決したから、一見平和な世界を築いていくのかと思われた。
しかし、彼らは所詮欲望に満ち溢れている化け物
人々は生活が安定すると、次は高い地位が欲しくなった。
つまり、仙人になろうとしたの。
仙人になろうとした彼らは、長く遠い雲を何十日間もかけて渡り切って、最初の仙人を殺そうとしたの。
そう、あの誠実な男を。
彼らはナイフで仙人の胸を突き刺し、腕と足をバキバキに折った。
何回も、何回も、何回も・・・
あぁ、狂気に満ち溢れた人類は実に怖いものね。
醜い行為がすんだあと、ここまで残虐な暴力を受けた仙人は流石に死んだだろうと彼らは思ったの。
でも、驚くことに仙人は無傷だったの。なんでか分かる?」
「もしかして、不老不死だったから?」
「正解。そこで醜い彼らは蓬莱山の何処かにその仙人を閉じ込めた
と言われてるの。
当時、仙人が使える仙術といったら、雨を降らせることや不老不死くらいで人を傷つけるような術はなかったから、仙人は抵抗など出来なかった。
この事から、今の仙人の先祖を辿ると最初の仙人を閉じ込めた化け物に辿りつき、今ある膨大な仙術は、その化け物によって創られたものであるとされているの。
そして今、化け物の血を受け継いだ者達がある恐ろしい企てを試みている。詳しい内容は分からないけど、大量の仙命石が必要だって聞いたわ」
大量の仙命石……叶人は妙にその言葉に引っ掛かった。何処かで考えたことがあるような、無いような。
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