第5話プレゼント

 次の土曜日、3時過ぎに日菜子のマンションに輝幸が来た。

「いらっしゃい、きょうは泊っていくんでしょう」

「ああ、泊まるよ」

「嬉しい、夕食はごちそうを作るわね」

「いいなあ、ひなちゃんの作る料理はいつもおいしいもんね」

「腕によりをかけて作るからね」

 日菜子は、ポークピカタ・キャベツの千切り・鳥のカラアゲ・おでんを作った。

「ポークピカタおいしい」

「うまくできたわ」

「これなら充分結婚できるね」

「結婚してくれる」

「するする、いつでもするよ」

「嬉しい」

輝幸「じつはねえ、明日ひなちゃんにプレゼントしようと思っているんだ」

「何」

「それは、開けてのお楽しみだけど。明日、梅田の阪急百貨店に一緒に行こうよ」

「何を買ってくれるの」

「秘密」

「何だろう楽しみだわ」

 日菜子はワクワクしながら寝入った。

 翌朝、日菜子と輝幸は阪急百貨店に行った。

 輝幸はまっすぐ宝石売り場へ行った。

 暫く指輪を眺めたあと店員に

「エメラルドの指輪をください」

 と、言った。

 日菜子はびっくりした。まさか、指輪を買ってくれるとは思ってもみなかった。

 店員が輝幸の言った金額の指輪を出してくれた。

 日菜子がはめてみてピッタリの指輪が二つ有った。

日菜子「8万円のがいい」

輝幸「遠慮するなよ、12万円のにしなよ、そっちの方がおしゃれだぜ」

「いいの、こんなに高いの」

「いいよ、ひなちゃんのためだ」

「嬉しい」

「はめてかえります」

 と、店員に言った。

「嬉しいわ、今まで生きて来て一番嬉しい」

梅田界隈をブラブラ歩いた。フコクビル地下街にある『喫茶オーエス』に入った。

「どう、気に入った」

「突然のサプライズで、頭が混乱して、何を言ったらいいのかわからないわ」

「良かったね」

「よかったわ、ありがとう、本当にありがとう。生きてて良かったわ」

「そんなに喜んでもらって嬉しいよ」

「私もまさかてるくんが、婚約指輪をくれるとは思わなかったわ」

「びっくりした?」

「びっくりした」

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