3-2
低学年、高学年ともに右辺で激しい戦いとなった。それは、僕が立っている側だった。さらには上辺の操作もせねばならず、ほとんど僕が駒を動かしていた気がする。
「あそこ、駒曲がってる」
「はぁい」
大盤操作というより、福田さんに操作される人のようになっていた。控室に戻り、机を抱きかかえた。休憩の後は、プロの対局もあるのだ。
そういえばこの様子も話題になっているのだろうか、とタイムラインを確認する。棋譜中継もされているはずだし、ネタにされているかもしれない。
と思ったものの、小学生大会だったからか、いつもよりおとなしかった。美鉾も特につぶやいてはいなかった。
「ネタ将も休息中、か」
「ねたしょうが何ですって」
「わっ、ふ、福田さん」
いつの間にか背後に少女がいた。慌ててスマホを隠す。
「なに慌ててるの。いやらしいこと? そんなんだから四段になれないのよ」
「いやいや、SNSを確認していて。お客さんが喜んでくれていたらなー、と」
「そんな顔してなかったけど。なんか残念そうな感じだった。ね、ねたしょうってなに」
「いや、その……将棋を見ながら面白いことを言う人たちがいてですね。切磋琢磨しているというか」
まさ福田さん相手にこんなことを説明する日が来るとは。まあ、興味ないだろうけど。
「加島君はそれにはまってるのね」
「いや別に……そもそも僕は……」
「私もやってみましょう」
「……は?」
たぶん、今僕の目は生まれて一番点になっていることだろう。福田さんがネタ将? 最年少女流棋士で、およそネタなど興味なさそうな人が?
「そのねたしょうとやらが将棋の上達にいいものなのか、弊害になっているのか、見極めないと。あんたには何としてもプロになってもらわなきゃ困るんだから」
「は、はあ」
「いい、私がねたしょうを極めたら、連絡するからね」
「極める……」
まさか自分の周りに、二人もネタ将を極めんとする女子中学生があらわれるとは思わなかった。まあ、福田さんはすぐにあきらめるか忘れる気がするけれど。
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