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パソコンのモニターには、きれいな庭に立つ、二人の着物姿の男性が映っていた。どちらも、よく知っている顔だ。
「美鉾、お前ついに将棋に興味持ってくれたのか」
「……」
思わず、涙がこぼれそうになった。
幼い頃父は、僕と美鉾に熱心に将棋を教えた。かつて自分が諦めたプロ棋士という夢を、子供たちに託したかったのだ。けれども美鉾は、次第に将棋から離れていった。僕だけが続けて、奨励会に入った。
妹も将棋してくれたらなあ。せめて僕の挑戦に興味持ってくれたらなあ。いつもそう思っていた。
「何がいいんだ、やっぱり振り飛車か、お前中飛車指してたよな。いつでも僕に聞くんだぞ」
「……お兄様、私、指すことにはまったく興味ないんです」
「……え?」
「私、観ることというか……その……」
なんかもじもじしている。いつも落ち着いてしっかりしている印象なので、ちょっと違和感がある。
「その? なんだ?」
「こう、いろいろ見てですね、それをもとにこう、面白いこととか気の利いたことを投稿するということを楽しむですね……」
「何の話だ?」
美鉾は突然床の上に正座した。習性で、僕もその前に正座した。
「私、目標としていることがあります」
「おお、なんだ」
「100リツイートです」
「……は?」
「私、ネタ将になりたいんです」
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