究極ふじたのたまご祭り②

その② 【藤田のたまごパニック!】



かがり町の記憶 『ふじたの秘密』


 この数日間ほど。

 たまごの日のために、藤田はたくさんのたまごを集めていました。


 朝、起きて……たまご拾い。

 昼、教室で……たまご瞑想。

 夕、帰宅後……たまご探し。

 夜、就寝前……たまご祈願。

 深夜、……………ねてる。


 ふじた山の、いたるところに産み落とされた謎のたまごを、拾っては集め、拾っては集めて、おうちの中で大切に保管していました。が、だんだんと保管場所に困ってきましたので、今度はふじた山のあちこちに隠し始めたのです。

 本当は、つまみ食いでぱくりと食べてしまいたかったのですが我慢しました。全ては、たまごの日に来てくれるであろうご近所の人たちに、新鮮でおいしい「ふじたのたまご」を、ふるまうためです。


 しかし、今――その大切な「ふじたのたまご」たちが、ころころころがり、山頂へと吸い寄せられていく!



ふじ田「まってー! まってよー !」



 地面をころがりのぼっていく、大量のたまご。藤田ひとりでは、とうてい拾いきれません。

 この洞窟内、温泉にも、藤田はたくさんたまごを隠していたのです。



ふじ田「しのちゃん! たまご! しのちゃん、たまご!」



 忍も、たまごも、その全てが山頂へとのぼっていくのです。藤田は今、生まれてからいちばんの、大パニックちゅうです。



ふじ田「わーん。たまごどろぼ―――っ ……わ!」



 ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ はじめ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ ころころころ 「しのちゃ…」 ころころころ ころころころ ころころころ ×∞


▼ 押し寄せた大量のたまごに のまれる藤田




その③ 【藤田の助っ人】



▼ ころころ ころろろ ろろろろ……


鬼頭「気をつけろ! たまごだッ」

鷹史「踏んだらやばい、踏んだらやば~い」

森屋「たまご?(万有引力 ぇ)」

厳蔵「ナント奇妙な光景か。人間がたまごに恐怖する日がくるとは……」


こだま先生「たま……し……」


▼ 大量のたまごがころころころがり、集団移動していく


鬼頭「もはや生き物だわ」

鷹史「斜面を転がりながら、登ってりゅ」

森屋「坂を駆けるたまご……」

厳蔵「いったい何千、何万の、たまごだろう。ふじた山というか、たまご山ですね!」


おとな一同「は……?」


顰蹙ひんしゅくをかう、山形厳蔵


鬼頭「ずいぶんとお気楽なゴリラだなw」

鷹史「お山ピクニックじゃねぇんだぞ!」

森屋「ありえない。真面目にして下さい」

厳蔵「Σなっ…………厳蔵、恐縮の極み」



――たまご~ たまご~



鬼頭「……ん? 何だこの、かん高いガキの声」

鷹史「……すっごい聞き覚えのある声」

森屋「……たまご病患者でしょうか」

厳蔵「……近いですよ!」



――たまご~ たまご~ うわ~ん



鬼頭「ふじた!」

鷹史「ふじた!」

森屋「ふじた?」

厳蔵「ふじた!」



 ―たまご~ たまご~ たまごだよ~



鬼頭「たまごの中か……どこだ探せ!」

鷹史「辺り一面、たまごまみれだぜぇ」

森屋「あ、先生! あそこに、こどもの手が」

鬼頭「でかした森屋! ……ちと、降りろ」

森屋「あ、はい」

厳蔵「肩貸すよ」

森屋「あ、すいませ…… Σ背高っ(肩の位置 ぇ)」


▼ 厳蔵を、見上げる森屋


鬼頭「ちょっくら見てくるわ」

鷹史「さっすが。頼りになる中年ヤンキー★」

鬼頭「Σテメー、アゲげてんのか、サゲげてんのか」

厳蔵「鬼頭先輩、そろそろ中年っすから準備体操は入念に!」

鷹史「中年★ 中年♡」

鬼頭「Σウルセェな!」

森屋「先生」

鬼頭「Σア何だよ⁉」

森屋「気をつけて下さい」

鬼頭「Σあ、ありがとう……」


▼ たまごを避けつつ藤田へ接近してく、鬼頭




その④ 【藤田の救出】



▼ ふじた温泉、配置図



藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田



   藤田→★


 ≪想像を絶する、たまごの海≫

 

   ≪巨大たまご≫


鬼頭現在地→●


 ≪ふぞろいな、たまごたち≫


 ≪ヤジ担当、森屋・厳蔵・鷹史≫


こだま先生→☆



藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田



鷹史「右右、左~! からの直進!」

厳蔵「そのままそのままっす(棒)」

森屋「先生ファイトです」


鬼頭「ウルセェウルセェ外野どもッ」


鷹史「ほらほら、前見て前、特大たまごが行く手を塞いでる」

厳蔵「先輩、それ何のたまごです?」

森屋「先生ファイトです」


▼ 巨大たまごをぐるりと避けて進む、鬼頭


鬼頭「ふぅ……っ何あれ今の怪獣か怪獣のたまごかデカすぎじゃね、かがり町の特撮かw」


鷹史「あ!」

厳蔵「あ!」

森屋「あ!」


油断した鬼頭「ア? Σエ……⁉」


▼ ドッポン(水と、たまごしぶき)


鷹史「……っぶな~い!」

厳蔵「……っぶない、先輩!」

森屋「Σ先生―――っ!」


▼ たまごに隠されし温泉へ、綺麗に滑り落ちた鬼頭



びしょぬれ鬼頭「……っ!!!!!!」



▼ ぷかぷか浮かぶ鬼頭の、強烈ガン飛ばし


鷹史「ごめ~ん、そこ温泉って言うの遅れちゃった♡」

森屋「先生ご無事でしょうか」

厳蔵「鬼頭先輩! ひとまず藤田の救出は、“俺に任せて” くださいー!」



▼ その後。山形厳蔵がドジしましたが、藤田くんは無事に、鬼頭精一郎により、サルベージされました。



傷心のふじ田「うう…… ぐすっ」

鬼頭先生「異常なし。たまご病もなし。さすが藤田!」

助手森屋「はい先生。極めて健康です」


▼ 鬼頭先生の簡易診断、終了


鷹史「……で、お前は何がしたかったんゴンゾー」

厳蔵「面目ない。まっすぐ行って、それで届くと思ったんです」


▼ たまごのてっぺんに頭をぶつけただけの厳蔵(完)




その⑤ 【藤…… 松雪の決意】



 ――その頃、古代遺跡群。


まつゆき「な、なんだよこれ」


▼ ころころ ころころ ころころ


まつゆき「どっさり、たまごが流れてく!」



▼ 遺跡をよじ登り、避難する松雪


まつゆき「……やばい」



▼ だんだんと、足場がなくなっていく


まつゆき「たまごハリケーン。やばい」



▼ ぽつんと、心細くなる松雪


まつゆき「……」



――しの……づか、


まつゆき「?」


――しの……づか、しの……づか、



虚ろな・しのぶ「しのづか……」



▼ たまごとともに、いずこかへと歩いていく忍



まつゆき「おい、しの! しのぶ! 待って、待って、しの――っ」


▼ そして忍は、消えてしまった



まつゆき「……しのぶ。」


▼ 意を決する、松雪深




その⑥ 【藤…… 鷹史の逆襲】



しのぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ !


▼ 洞窟内に響き渡る、鷹史の悲痛な叫び



鷹史「そんな……ここに……ついさっきまで、この温泉にいたなんて」

鬼頭「ほんの僅かなタイミングの差ってか;」

厳蔵「ひとまず忍くんの “たまご病” は、治ってたんだね?」


ふじ田「うん……でも、消えちゃったんだー」


▼ ぱた……(倒れる鷹史)


鷹史「たまごを食べて、それで治るなんて……」

鬼頭「鷹史?」


鷹史「は、発病した夜に、たんと食わせてやりゃあ良かった……」

厳蔵「鷹史さん;」


鷹史「そ、そんな簡単な事に気づけないなんて……俺、俺はさ……」

鬼頭「落ち着け鷹史、ゆっくり呼吸しろ!」


鷹史「鬼頭さんみたいに機転が利かない……判断できない、慌ててばっか……」


鬼頭「鷹史、すぐ会える。大丈夫だ」

鷹史「すぐ会える? “すぐ、会える” だと?」

厳蔵「あ、それ……(禁句)」


こだま先生「たま……し……」


森屋「あの先生。この患者さん容態が……」

鬼頭「あ、何?」

森屋「確認して下さい。“たまご……”から、“たまし……”と」

鬼頭「たまし……え、魂っ!?」

森屋「放置しすぎました。たまご病、恐らく究極の進行です」


▼ 看護師(仮)森屋の見立て『たまご病→たましい病』


鬼頭「まさかだろ森屋。ひとまず、“たまご”を試してみ――」

森屋「はい先生」


▼ ペンを差し出す森屋


鬼頭「ア?」

森屋「僕が右手を頂いたんで、あの……できれば今回は、左手にして下さい///」

鬼頭「Σじゃなくて! 下見ろ、下、地面。たまご落ちてんだろがッ」

森屋「Σあっ……あああ/// ……ハイ。」


▼ 耳まで赤くなる森屋


森屋「どうぞ、た、たまごです。本物の……」


▼ できてたホヤホヤ・ふじたの温泉たまご(かたゆで)


鬼頭「はい。こだまさーん、たまごですよ」


こだま先生「たま……し……」


鬼頭「(ぐいぐい)オラオラ、お望みのたまごだぜ」


▼ たまごに無反応な、こだま先生


鬼頭「チッ……ダメだな。森屋、ペン貸せ」

森屋「はい先生!」


▼ きゅ(たまごに“魂”とサインする鬼頭先生)


鬼頭「魂だ! 食え!」

森屋「こだまさん、魂です」


▼ “たましい”にも無反応な、こだま先生


鬼頭「ノすぞオラ。食えや!」

森屋「せ、先生……」


▼ 大人の馬鹿力(たまご押し込み)


こだま先生「たまっ」


鬼頭「あ、やべ……蘇生蘇生ッ」

森屋「こ、こだまさんしっかり」


▼ 鬼頭医院の蘇生術(しばし続く!)




いっぽう・鷹史「しのづか……?」

いっぽう・厳蔵「え?」


――しの……づか、しのづか……



鷹史「何だこれ。頭の中、“しのづか”って声が聞こえてくる」

厳蔵「ええっ、俺には何も聞こえませんが」


ふじ田「しのづか……うん。しのづかって呼んでるー」


鷹史「しのづか……つーか篠塚は、ここ・ここ、俺だっつの!」

厳蔵「どういう事だ(……藤田の子は論外として)おーい、鬼頭医院のふたり!」


鬼頭「ア? 今忙しいッ」

森屋「そうそう。こだまさん良いですよ。ひとまず、容態安定ですね先生」


やすらか・こだま先生「たま……し……」


厳蔵「そっち、“しのづか”……って、聞こえてます?」


鬼頭「ハア? しのづか?」

森屋「いいえ」


こだま先生「たま……しの……」


▼ たましの


鬼頭「たましの?」

森屋「たましの? こだまさん、はっきり発音して下さい」

鬼頭「オイ、こだま。……“しのづか” か?」


頷くこだま先生「しのづか……」


鬼頭「しのづか!」

森屋「しのづか!」


もっと頷く・こだま先生「しのづか……」


鬼頭「(!)」

森屋「(!)」


▼ じっ (鷹史を見やる鬼頭医院のふたり)


鬼頭「ちょっと鷹史、こっちへ来い」

鷹史「うえ?」

森屋「篠塚さん、ちょっとこちらへ」

鷹史「なになに……?」


▼ すとん。(こだま先生の正面に座らされる、鷹史)


鬼頭「こだまサーン。お望みの“しのづか”さんデース」

鷹史「Σえ何?」

森屋「そのままで!」

鷹史「あ、はい……」


こだま先生「しのづか……?」


鷹史「え? え?」

鬼頭先生「(無表情)……やれ、森屋」

助手森屋「(無表情)……はい、先生」


▼ ぴと。



その瞬間・厳蔵「そうそう、都心の方で先生をやってるんだ…… Σんなッ!」

その瞬間・ふじ田「そうなんだー……からの、 Σわお!」


▼ こだま先生の口元に、鷹史をくっつける森屋


半ギレの鬼頭「森屋くん、やりすぎです」

確信犯の森屋「(ぐいぐい)すみません。頬なんでギリOKかなと」


鷹史「えー……と。何コレ」


▼ 困惑するしのづか(鷹史)


こだま先生「しのづか……?」


鷹史「し、篠塚です……タカシのほう」


こだま先生「本当に、しのづか……?」


鬼頭「篠塚篠塚」

森屋「篠塚篠塚」


こだま先生「しのづかじゃないと、しのづかにするぞ……!」


鬼頭「(きたきた……)篠塚篠塚」

森屋「(きたきた……)篠塚篠塚」

鷹史「つーか何! お世話になってます先生、篠塚ですッ」


目覚めたこだま先生「ふっかつ! ……Σって、わあああああ!!!! ?」


鬼頭「(しれっ)こだまさん、復活です」

森屋「(しれっ)こだまさん、おめでとうございます」


うな垂れる厳蔵「ああああ……畜生ッ! しのづか病、罹りてぇ~」

ふじ田「わおー 究極の、ちじょうのもつれ!」


鷹史「え何コレ、何コレねぇ何コレ説明ちょうだい鬼頭医院」


鬼頭「アー……ワクチン?」

森屋「なるほど、ワクチン」



▼ ……しのづか(涙)



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る