しあわせ森屋のたまご祭り
前回までの、あらすじ🥚🥚🥚
かがり町に蔓延する謎の奇病「たまご病」。
住民たちの奮闘もあって、だんだんと解明されてきました。
① 藤田の「たまごの日の招待状」を貰うと発症。
② 藤田の「たまご」を求めてふじた山へと来る。
③ 藤田の「たまご」を食べると、とたんに治る。
★ たまご病の時の記憶はないです(byしのづか忍)
藤田は、考えていました!
こんどの日曜日、たまごの日のパーティを大成功させたい、と。それから毎晩、夜空に輝く星星へお願いしました。そのつど、星は流れ落ち、砕けていきました。かがり町発祥のヘンテコ奇病の「たまご病」とは、「たまごの日」に、何としてでもお友達に遊びに来て欲しい藤田のお願いを、きらきらと光る星々が、その星の命とひきかえに、叶えてくれたものなのです。
★★ やっぱり藤田。ふじたがふじたした、事件(byまつ雪しん)
それはそうと。
かがり町の上空には「なぞの浮遊物体」が遊びに来ています。消滅した星々よりも、もっと大きい【何か】です。それは大きすぎで、彼方からやって来ただけでお疲れのもようです。それはちょうど真下に位置する、かがり町にてひと休みさせて貰おうと、今――だんだん町におちていく。
★★★ あの、あの、みんな逃げて……!(byまんがあおば)
それでは、しあわせふじたのたまご祭り改め、真題――
『さよなら、かがり町』
はじまり、はじまり。
藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田
なのですが。今回はまるまる1エピソード「たまご病」に罹ってしまった、鬼頭医院の助手・森屋くんのお話です。
藤田藤田森屋 森屋森屋森屋 森屋森屋森屋 森屋森屋森屋
その① 【藤田の樹海のお客さん:森屋守護】
かがり町の記憶 『森屋くん』
学生の頃。
『このご時世に不良』、『もしやこれはカツアゲなるもの』と、眼鏡のブリッジを指で押し上げて、森屋はどこか他人事のように観察していた。
都心の学習塾で勉強をした帰りであり、ある程度のお小遣いが財布の中に入っていた。それを、彼らにやればいいのだろうか。こんな時どう対応すればいいのだろうか。と森屋は本当にわからなかった。あまりにも涼しい顔で、スクエア秀才眼鏡をクールに押し上げまくる森屋少年の不敵な態度に、不良らが苛立った。彼らは『2、3発いっとく?』とか、指を立てつつ示し合わせると、にやりと笑った。森屋は首を傾げて、尋ねようとした『目的って、お金ではないんですか?』と。
――声が、出なかった。
やっと気づいた。どうやら森屋は恐怖していたのだ。気づいたとたんに、身体が強張り、何も考えられなくなってしまった。この異変に気づいた不良らは面白がって、森屋の学生服のポケットやら鞄の中身を漁り始めた。次第に髪や頬まで撫でられて、彼らに馬鹿にされているのだと思うと、カッと恥ずかしくなって、涙まで出そうだった。
『これは今日の記念に貰っとくね~、仲良くしような森屋クン?』
学生証を奪われると、ぺしぺしと頬を叩かれた。今どんな顔をして突っ立っているのだろう。森屋は今日まで、自分のこんな情けない姿、想像だにしなかった。
『チッ。――なんだガキかよ』
不良の集団に、別の声が交じった。
森屋を取り囲んだ集団とは別に、大人の男の声がした。
人通りなんて絶望的にない場所だったため、誰も来ないだろうと、助けはないだろうと、森屋はずっと思っていた。でもひとり。離れた所に、別の男が立っていた。
長身、そして細身だが鍛え抜かれた身体。ぴたりとしたジャージを纏う姿はランニング中のストイックなボクサーを連想させた。ひと目見て、この情報量――つまりこの場の誰よりも強そうだ。もっとも印象的だったのは、深く被ったフードの隙間から――光る、銀色!
『鬼頭精一郎って、知ってる?』
知ってる!
森屋よりも何世代か前の、かがり町の【超有名人】だ!
さらりとした、銀色の髪――鬼頭精一郎。
いっぽうで、森屋に絡んだ不良らは、この町の出身ではなかったようだ。
挑んで、ぼこぼこに打ちのめされた後も、逃げる事が許されなかった。
『なんだ知らねーのか。俺なんだけど、憶えといてな――』
彼らにも、森屋にも、男はフードを外すと、笑いかけてきた。
鬼頭精一郎。どんなに恐ろしい風貌なのだろうと思ったが。
意外にも【女顔】というか、鬼頭精一郎は、とても端麗な顔立ちをしていた。
『 』
ねえ、先生。
あの日から。
僕はちゃんと憶えていましたけど。
先生はどうでしょう。
僕の事なんか覚えていないんでしょう……
▼ 眠る森屋は泣いている
――いっぽうで現在の、鬼頭精一郎は。
鬼頭「森屋ーッ! 森屋かッ?」
▼ ふじたの巨大かぼちゃ
鬼頭「なんだカボチャかよー…… Σハッ、森屋かッ?」
▼ ふじたの巨大にんじん
その② 【藤田のお花畑】
新・ふじたの図鑑 『ふじたの畑』
ふじたの畑は、いっぽいそだててます。
ぼくほ、ふじたほじめです。
かがり小学校にいってます。
夏休みに、あさがおできました。
あさがおできなので、まっと、そだてようと思いましな。
お花をそだてると、ふじたのおかあさんが、ほぬてくれます。
(◎ よくできました。ままより)
やさいをそだてると、ふじたのおとおさんが家にかえれない日、よるこびます。
(○ おいしいよ。ぱぱより)
一年たちました、お花畑になりました。
やさいは大きくなりまもた。やったー わーい。
たべたら、ふつうでした。
ふじた ほじめ 妙子 寄大郎 しのさゃん たこ史くん(※ふじたの落書き)
――そして、ふじたの花畑で。
鬼頭「ついに、日暮れか……」
▼ 日没とともに、かがりマボロシ夜花が咲き乱れる
鬼頭「なるほど分かった。ここは “昼は野菜畑” で “夜は花畑” へと変わるんだ!」
▼ 日没とともに、野菜は地中へ潜っていきました
鬼頭「……もう俺は、この山の【何に】対しても驚く事をヤメる!」
――止める~ 止める~ 止める~ やっほ~
▼ 山頂方面でこだまする、鬼頭の叫び
鬼頭「――てなわけで。やっと見つけたぜェ、森屋」
眠る森屋「……」
鬼頭「お前まで、たまご病とは。どうすりゃ治るかな」
眠る森屋「たまご……」
▼ 花畑に沈む森屋に、寄り添う鬼頭
鬼頭「たまごを与えてみるとか?」
眠る森屋「……たまご?」
鬼頭「ん?」
眠る森屋「……」
鬼頭「うん?」
眠る森屋「……」
鬼頭「た・ま・ご・を、与えて、みるとか?」
眠る森屋「……たまご?」
閃きの鬼頭「たまごか!」
▼ 握りしめた拳に “たまご” と書いてみる鬼頭
鬼頭「なんていや、まさかな。バカげた発想ではあるものの……」
眠る森屋「……」
▼ 握った拳に、祈る鬼頭
鬼頭「おい森屋ァ! お望みの、たまご、だぜ!」
眠る森屋「ほんとに、たまご?」
鬼頭「おう、たまご。たまごだ、読んで字の如し!」
眠る森屋「たまごじゃないと、たまごにするぞ……」
▼ ゆらりと、無意識ながらも起き上がる、森屋
鬼頭「おうおう。たまごにしてみろや……おらよッ!」
森屋「た……まご……」
▼ ぱく (鬼頭の差し出した拳を、はむはむする森屋)
鬼頭「……。(何ともいえない感覚だが、治療中)」
眠る森屋「Σたまごじゃないっ!」
鬼頭「いや、たまごたまご」
眠る森屋「……たまご?」
▼ ぱく (鬼頭の差し出した拳を再び、はむはむする森屋)
鬼頭「……。(いいか右手はたまご、右手はたまご)」
眠る森屋「たまごじゃないから、たまごにするぞ……」
鬼頭「いやいや、まじたまご。たまごだ、つってんだろ! 鬼頭精一郎の右の拳よ……たまごたまご……俺はたまご……俺がたまご(※鬼頭の自己暗示)。
Σってぇ、アホかァァァ! めんどくせぇな、ゆとりの森屋ッッッ」
▼ 森屋の胸倉を掴む、鬼頭
鬼頭「アァオイ! たまごと書いた俺の拳に、テメエの歯形をつけたな。ハイーここ、たまご。ここ、たまごでーす。お前はたまごを食ったぜ。俺の手ェ借りといて、『出来ません』『ダメでした』とか、通じねぇんだよ。きっちり返せや、森屋!
▼ 胸倉を掴まれる森屋の……、
森屋の大声「 ふっかつ! 」
鬼頭「Σおおお⁉ でかしたァ~森屋ッ!」
▼ 鬼頭渾身のガッツポーズ!
▼ からの、ハグ待機の鬼頭✧
森屋「はい、先生。どうしたんです……?」
▼ 森屋くんの真顔
鬼頭「アー……いつもの森屋だわ。どっと疲れた……しんど。モヤシのくせに、手こずらせやがってよォ」
森屋「もやし」
鬼頭「テメェ……オイ森屋ァ! めんどくせぇ、ゆとりの森屋ァ」
森屋「は、はい先生」
鬼頭「……帰っぞ」
森屋「はい」
▼ すとん (立てない森屋)
鬼頭「お前ェ……」
森屋「大丈夫です」
鬼頭「ちょっと、見せてみろ」
森屋「だ、大丈夫です」
鬼頭「いいからゴラ!」
森屋「だい、大丈夫です!」
▼ 花畑を這って逃げる、森屋
鬼頭「Σ芋虫か! じゃなくて、見せろつってんだろが!」
森屋「大丈夫です、大丈夫です」
鬼頭「あコラ! 待ちやがれ……ッ!」
▼ 花畑で追いかけっこをする、鬼頭医院のふたり
鬼頭「って、アホかー! 俺は医者だ、見せろっつの!」
森屋「!」
▼ 鬼頭先生のタックル、からの強制触診
森屋「い、痛い……っ」
鬼頭「ハーイ森屋くん、捻挫デスネー」
森屋「はい……(内科のくせに)」
鬼頭「帰る!」
森屋「はい。 Σえ……ちょっ、何を!」
鬼頭「麓までおぶってくから、暴れんなよ」
森屋「はい」
鬼頭「腹減っただろ、森屋」
森屋「はい」
鬼頭「風呂入りてぇな、森屋」
森屋「はい先生……今更ですけど、何だか、泥くさいですね」
鬼頭「それな。鬼頭医院ってのは、どうせ泥臭ぇビョーインだろ。気にすんなや」
森屋「そう……ですね。そうですよね……がんばります」
鬼頭「おう! 来週から採血、注射、その他諸々特訓だからな✧」
森屋「はい先生。……え。僕出来ますよ?」
鬼頭「Σいや出来てねぇだろまじゆとり、ぶっ飛ばすぞゴルァ!」
森屋「はい先生。ところで、……猫被るのやめたんですか?」
鬼頭「はい森屋くん! 先生、とうとうテメーに猫被るのやめました、覚悟しろや✧」
鬼頭医院ふたりの再会。
辺り一面。
いつの間にか「かがりマボロシ夜花」が、まっしろに染めていました。
ただのふじたのたまご祭りへ🥚つづく
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