もっとふじたのたまご祭り
前回までの、あらすじ🥚🥚
藤田もびっくり!
かがり町では奇妙な事件が起こっています。住人たちが「たまご」と言ってふらりと消えてしまうのです。「たまご病」「たまご失踪事件」として、かがり町の警察も調べているみたいです。藤田のお友達も、ご近所さんも、ちょびちょびといなくなりました。
★ みんなどこに行ってしまったのでしょう。
こんどの日曜日、たまごの日のパーティを開催しようと頑張っていた藤田はしょんぼりです。消えてしまった住人たちは、藤田から「たまごの日の招待状」を貰った人ばかりなのでした。
★★ なぜでしょう、へんてこですね。
そしてそして。関係性は分かりませんが実はこの数日間、かがり町の上空には「なぞの浮遊物体」が確認されています。「かがり天文台」では現在、秘密裏に解析が進められています(担当:万賀さん)。
★★★ あっちもこっちも、たいへんです。
それでは。もっとふじたのたまご祭り、改め真題――
『かがり町滅亡の日』
はじまり、はじまり。
藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田
その① 【藤田家へようこそ】
ふじたの図鑑 『ふじたのおうち』
大自然、ふじた山。太古の時代よりフジタ一族が暮らす(らしい)、神秘の(ふしぎな)ふじたの森が広がる、かがり町の秘境。山頂には星見の祭壇があり、そこを囲むように清らかな泉が湧き出でていて、この水が溢れて滝となり、川となって麓の町へと流れていく。これが “偲び川” です。
藤田家は、ふじたの森で一番大きな、古代樹のうちにあります。玄関はやや小ぶりの木の扉で、まんまるのノブがちょこんとついています。そこを開けると、ふきぬけの天井から木漏れ日の降りそそぐ、ふじたの中庭が現れます。
▼それがふじたの森の、ふじたのおうち
ふじ田「よいしょ、よいしょ」
▼ 眠る忍をおぶってふじたの中庭を歩いてく、藤田
眠るしのぶ「……」
ふじ田「しのちゃん。どうやって、ふじたの家まで来たんだろう」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「おともだちがふじたの家に来てくれるなんて、はじめてだよー」
眠るしのぶ「……」
▼ 忍は、ずっと目覚めない
ふじ田「うーん。しのちゃんねぼすけ、ぜんぜん起きないや」
眠るしのぶ「たまご」
ふじ田「たまごの日は、明日だよー」
眠るしのぶ「た……まご」
ふじ田「明日だってばー」
▼ ぐぅ。(おなかの音)
ふじ田「えへへ。おなかすいちゃった。しのちゃんごめんね、今日はふじたの家にだれもいないんだー」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「それにしても……しのちゃん泥んこ、だな」
▼ ごはんかお風呂で悩む、藤田
その② 【藤田のごはん】
ふじたの図鑑 『ふじたの食卓』
藤田家の食卓は、大きな木が横にどでんと寝そべって、育ったテーブルです。
昔々、フジタが楽しそうに団らんしているのを羨んで、この寝そべりの木は、わざわざ森の神様である大樹のおうちに、地下からぐにゃりと割り込んで伸びてきたらしいのです。
当時のフジタは、しょうがないから、この寝そべりの木のおなかを使ってあげる事で、団らんにまぜてあげたのでした。
▼ それが大きな、ふじたの食卓
ふじ田「しのちゃん。たまごごはんでいいかなー」
▼ 忍を席につかせて台所に立つ、藤田
眠るしのぶ「……」
ふじ田「へへへ、しのちゃん。ごはんが出たら、おなかがなってきっと起きるよー」
▼ 籠に山盛りにされた何かの産みたて卵に手を伸ばす、藤田
ふじ田「あ! いっけない、たまごは明日つかうんだった」
眠るしのぶ「たまご」
ふじ田「しのちゃんごめーん……たまごはだめなんだー」
眠るしのぶ「たまご……」
ふじ田「あ! ふじたの木の実がちょうど旬なんだ、ちょっと採ってくるねー」
▼ そう言い残して飛び出たものの数秒後に戻ってくる、藤田
ふじ田「ただいましのちゃん。しのちゃんいるの、うれしいなー」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「原生の森まで行っちゃった。これが、ふじたの木の実だよー」
▼ 眠るしのぶの口元に謎のくだものを押しつける、藤田
眠るしのぶ「…う゛」
▼ 眠りながらも謎のくだものを嫌がる、忍
ふじ田「(ぐいぐい)ふもとの樹海のほうが、さわがしかったなー。だれか来たのか、父さんが迷っちゃったか、どっちだろう。追っかけられたり、イタズラされたり、食べられていないといいなー」
▼ 微笑む藤田 vs 顔を歪ませて拒否し続ける忍
その③ 【藤田のくだもの攻防戦】
ふじたの図鑑 『ふじたの木の実』
ふじた山。山頂付近一帯の貴重な原生生物たちの生息する、始祖の森。年に一度、ほんの僅かな春先には過酷な寒さを耐え抜いた樹木たちが花開き、実を結びます。この実こそが、ふじたの木の実。伝説では不老不死を叶える奇跡の果実として、ふじた山の神が食していたと、かがり町に伝わっています。尚、許可無くふじたの森から持ち出すと、霞のごとく消えさり山へと還ってていくのだそう。
ふじた ふじた ほじぬ 寄太郎 妙子 むも しのさゃん(※ふじたの落書き)
▼ それが幻の、ふじたの木の実
ふじ田「しのちゃん口あけて、おいしいよー」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「たまにすっぱいのあるけど、たぶん甘いから、だいじょぶだよー」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「これさえ食べれば体力全かいふく! げん気になって目ざめるよー」
眠るしのぶ「……!」
ふじ田「しの、ちゃ……」
▼ 藤田が根負けするまで、しばし、つづく!
その④ 【藤田の樹海のお客さん:篠塚鷹史】
いちばんの迷い人 『鷹史の走馬灯』
も、もうだめだ……!
絶対ここ、忍は絶対に、このふじた山に攫われたんだ。
そう確信してやって来たんだけど、無理だよ、・・・!
この山……いやこの森は、おかしい。麓から見上げた時はずっと一本道で、山頂のほうのデッカくて太っい木(?)まで、続いていたはずなんだけど。いざ山に入るじゃん? 百均のコンパス、ぐるぐる狂ってるじゃん? 「え」って思って振り返るじゃん?
道が、消えてんだぁ……!
俺、慌てて前方確認をするも、山頂まで見えていたはずの一本道が、緑の草木でざぶんと覆われてしまっている。ねぇここダレ? おれはドコ? もうダメ! タカシパニック★
お願い、・・・。
お願い、・・・。
俺の人生が、ここで終わるのなら。
魂だけは、迷いの森を抜け出して、・・・の、もとへ逝けますように。
▼ 一筋の涙を流す、とても綺麗な鷹史
鷹史「はぁあぁん美少年薄命。美青年も薄命。どうやらタカシ……美中年、になる前にオダブツしちまうぽいわ~」
▼ ずる……ずる……と謎の植物の太い蔦に、ねっとりぬるぬる絡まれ、引きづられて、どこぞへと運ばれてゆく鷹史
鷹史「だが最期にこれだけは言っておく、藤田ァァァア死んでも許さねェェェエ!」
▼ ぜんぜん元気な、篠塚鷹史
その⑤ 【藤田の螺旋階段】
ふじたの図鑑 『古代遺跡群と洞窟壁画』
ふじた山の最深部、地底洞窟。
ここにひっそりと超古代文明の遺跡が存在します。まだ、ふじた山がほんの小山だった頃の事。緑生まれるいのちの山として、これを崇める民たちの、ふしぎの国がありました。けっこう文明が発達していて、その時代には考えられないような知識が、ころころころりんとしていたようです。すごい施設跡や、ふしぎな道具がたまに発掘されています。そういえば洞窟内の壁画からは当時の民たちの暮らしぶりと、細かな天体記録、失われた王朝の歴史などが、まあまあ描かれていました。
何よりも驚くべき事があります、この場所に暮らしていたのは、人類に近いけれどそれではない異形の者――か、ただ単に当時の民の絵がとっても下手なのか、そのどちらかです。今では、ふじたの森にのまれており、静かに眠っています。残念、確認しようがありませんね。
がっかりー(ふじたの落書き)
▼ ふじたの家の
――B10F~20F。
ふじ田「しのちゃんごめん。うちのおふろは、とーっても地下なんだ」
眠るしのぶ「……」
ふじ田「よいしょ、しのちゃんほんとに起きないねー」
眠るしのぶ「たまご」
ふじ田「へへへ、待っててしのちゃん! とっておきの温泉たまごを用意してるんだー。実は明日のぶんなんだけど、特別にいっこあげるよー。みんなには、ないしょだよ」
▼ こくりと眠る忍をおぶって、もっと降りてく藤田
――B20F~40F。
ふじ田「わ! かがりもぐらむし」
▼突然、壁から頭をひょっこり出してきた【何か】
ふじ田「だめっ! またうちのかべに穴あけてー」
▼藤田に怒られ、哀しそうに戻っていく【何か】
ふじ田「まったくもう! しのちゃんごめんねー」
眠るしのぶ「……」
▼ 忍は何も、見ていない
その⑥ 【藤田の地底温泉】
ふじたの図鑑 『ふじた温泉』
かがり町には天然の、秘密温泉があります。
それがふじた山の最深部、地下というか地底の洞窟に沸く、ふじた温泉なのです。昔はぐつぐつと燃える激熱の若い温泉でしたが、ふじた山もだいぶおとなになってきて、ひとが入って気持ち~ぃと感じるほどの適温を保つようになりました。
ぷちぷちの炭酸ぽかったり、どうしても白かったり、しあわせに七色だったり、どんよりとろとろとしてたり。山の、うっとり夢心地でころころと日変わり気分をします。朝には山が疲れて干からびている事もあります。
ふじた山に暮らす動物や、植物、虫たちが常連さんです。
飲み水としても栄養満点なので、ここのお湯を吸い上げて、山の大きな植物たちは美しく育つのです。山頂の星見の泉も、ここのお湯と関係があるようです……が、しっかり調べたフジタは、今のところ0人です。
いつかやろー(ふじたの落書き)
▼ 藤田と忍は、最深部へ到達した
――B100F。
ふじ田「わーい! 今日はいいお湯だよー」
ちょっと熱そうな眠る忍「!」
ふじ田「しのちゃん、おふろで、泥んこ落そー」
▼ 白の湯気が、もくもく
ふじ田「その前に、たまごー」
眠る忍「たまご」
ふじ田「たまご、たまごー♪」
▼ 温泉に、ぶんと放り投げておいた卵を探す、藤田
ふじ田「ほえ。たまごどっかへ行っちゃったー……」
▼ 白の湯気の中から、巨大な【何か】が現れる
ふじ田「わ。かがりひぐまむし。もう温泉つかりに来てたんだねー、え?」
▼ 何かを藤田に伝える【何か】
ふじ田「たまごドロボー? ふむふむ。じゃなくて、たまご集めてくれたんだー」
▼ 藤田は【何か】から温泉たまごを受け取った
ふじ田「おりがとお! 明日のぶんも、たまご番よろしくー」
かがりひぐまむし「イイヨ」
▼ そして静かに温泉の奥地へ潜ってゆく【何か】
ふじ田「しのちゃん! ふじたのたまごは栄養ばつぐん!」
眠るしのぶ「たまご……」
ふじ田「さあさあたまごをたくさん食べてよー!」
▼ 眠るしのぶの口元にたまごを押しつける、藤田
眠るしのぶ「…う゛」
▼ 眠りながらもたまごを嫌がる、忍
ふじ田「(ぐいぐい)しのちゃーん、たまごもイヤなの? たまごだよ」
眠るしのぶ「たまご……?」
ふじ田「たまごー」
眠るしのぶ「ほんとにたまご?」
ふじ田「たまごだってばー」
眠るしのぶ「たまご、じゃないと、たまごにするぞ……!」
▼ ついにたまごをぱくぱくと食べはじめる、忍
▼ ぐぅ。(これは藤田のおなかの音)
目覚めたしのぶ「Σふっかつ!」
ふじ田「!」
しのぶ「あれ、なにしてたんだろ。ここはどこだろ。ついでに、なんか口の中パサパサする……ていうか、ふじ田?」
ふじ田「!!」
しのぶ「ふじ、田……っ」
▼ 飛びつく藤田&飛びつかれる忍
どた! ばた! どすん!
しのぶ「ん……重いよ、ふじ田。なに……なんだよ?」
ふじ田「し、し、しのちゃんー! わああああああん」
しのぶ「Σえ どうしたの、ふじ田」
ふじ田「しのちゃんが、もとに戻ったよー。ぐすっ」
しのぶ「は?」
ふじ田「ず、ずっとしのちゃんが……たまごだったら、どうしようって」
しのぶ「……たまご?」
ふじ田「Σえ、まだたまご? まだたまごなの?」
しのぶ「……たまごって、なに?」
ふじ田「(ほっ、)たまご病にかかってたんだよ、ふじの病だよ……よかった」
しのぶ「……。」
しのぶ「……。」
しのぶ「……そ、そう。(ふじたの病?)」
ひとまず頷いておく、忍 ▼
ふじ田「いま、かがり町は、たまご病がまんえんして……キケンなんだ」
しのぶ「Σふじ田の口から、蔓延!」
ふじ田「しのちゃん。ここなら安全だよ、ずっと一緒にいよう?」
しのぶ「まって。いま、なんじ?」
ふじ田「昼ごはんくらいー」
しのぶ「いつから、この……どうくつ(?)にいたの」
ふじ田「さっきー」
しのぶ「ここはどこ」
ふじ田「ふじたの家だよー」
しのぶ「Σふじ田って、ほらあなに、すんでたんだ……お邪魔してます」
ふじ田「うん! え? まあいっかー。あそぼー」
しのぶ「いいけど……どうして、こんな泥んこなんだろ」
ふじ田「温泉はいろー」
しのぶ「え……いやだよ?」
ふじ田「Σええっナンデ?」
しのぶ「だって、なんか……、
【よくわからない生物(?)】が、いっぱいいるから;」
▼ 温泉に浸かりながらびっくりする【何か】たち
たじろぐふじ田「しのちゃんしのちゃん、マボロシだと思うなー」
困惑するしのぶ「そうなの?」
誘導するふじ田「目をつむって、ごしごしこすってー」
ただ従うしのぶ「うん……(ごしごし)」
うながすふじ田「いまいちど、あけてごらんよー」
不安がるしのぶ「うん……(どきどき)」
▼ 地底洞窟の先へ広がる、太古の深い緑と、かがり町古代遺跡群ビューの奇跡の絶景
微笑むふじ田「ふ、ふじた温泉へようこそ……!」
感動のしのぶ「わあ、こんなの、はじめて……!」
▼ 手をつなぎ、温泉まで駆けてくこどもたち
その⑦ 【藤田の樹海のお客さん:鬼頭精一郎】
にばんの迷い人 『鬼頭先生の走馬灯』
な、何故こんな事に……!
俺はただ、森の入り口から真っ直ぐのびた一本道を歩いてたはず。それが、突然ぐにゃりと……ぬかるむ足元。「え」と驚いた時には、辺り一面が謎の湿地帯に。そのままズブズブ沈んでいって、この……この……沼なのだろうか、池なのだろうか……水辺にハマってさあ大変ッ! ん、抜けねッ、と必死してたら、池のカエルどもが寄ってきて、あっという間に取り囲まれて同情されマシタ。
カエルどもめ、そんな目で見るな――ん?
今、目の前をスッゲーデッケーカエルが泳いでったんだが、何あれ。え。巨大生物っつーの? よく育ってんなー……さすがは、かがり町UMA出現スポット、ふじたの域だわ。
それにしてもゲコゲコ、ウルセーウルセー! 繁殖期か? つーか嘘だろ。ホント全然身動き取れないんだけど。雑魚過ぎねぇか、鬼頭精一郎。
▼ ハア……(溜息)
え、死ぬの……?
え、死ぬの、俺?
人生、ヤリ残しが、多過ぎねぇ?
忍を探し出せてねぇし、鷹史も消えた。
ドジ鷹史め、ここへ迷い込んでねぇか心配だ。
うちの森屋も、樹海のどこかへいるはずだし。
Σダメだ~森屋つったら完全モヤシだろォ、ここじゃ真っ先に脱落すっぞ。比べて鷹史は、悪運だけは強いからな。鷹史、森屋、ほんとドジな奴らだわ。
いや一番ドジなの、俺だわ。
何スッポリ、池ハマってんの?
イケメンが、池ハマってんの?
ウケルー。
……俺どっちかってと、セメるし、ハメるほうデスガ。
まじドジなの? 雑魚なの? ドジで雑魚なの? ドジ雑魚なの?
アー!
翌週に迫った見合いを蹴りきれてねぇー。
忍世代のガリコーバスケ部も、見届けられねぇー。
鷹史とハッテンできてねぇー。
▼ 精ちゃんの走馬灯
思えば、ひたすら鷹史に振り回された人生だった。
まだ鷹史にハメ―― モノにしてねぇ!!!!
鬼頭精一郎まじかァ、腑抜けのボケがァァァ。
そうだ!
森屋に、事務職させたままだわ。
採血ド下手な看護師とか、技術と根性叩き直してやるつもりが、できてねぇ~。
週明け、薬屋のアポだろ。
銀行屋も来るんだな。
目障りなゴリラも密林へ還せてねぇ。ゴリラは還れ。
Σやべェ! ガトーの店のプリン祭りも翌週か。
Σ死ねねぇ、このまま死ねねぇ……!
あと藤田奇太郎に貸し付けたままのカネも未回収。利子ハネ上げてやんねーと。
そうだぜ、鬼頭精一郎ッ!
地獄の
▼ なぜか池のカエルたちに見染められてしまう、鬼頭先生♡
鬼頭「そういや松雪の倅、は……どうした⁉」
その⑧ 【藤田の樹海のお客さん:松雪深】
松雪手稿 『しのぶさがし』
ふじた山の入り口からまっすぐのびた道を歩いていた。
きとう先生と、いつのまにかはぐれた。とりあえず歩く。そのうちまた会えると思う。ふじ田はまだ出ない。しのぶも見えない。あおばもいない。森屋さんもいない。
とにかく一番見つけたいのは、しのぶ。
そう思った瞬間、“のぼり”が“くだり”になった。
洞窟の中にいるようだ、何だかあたりが暗い、まるで地の底へ降りてくみたいだ。でも決して真っ暗でないのは、いつの間にか目の前を飛んでる、“光ってる白い蝶”が群れてたからだ。先へ先へ、奥へ奥へまるで案内するかのように飛んでいく。ふしぎな現象。もしかしたら、しのぶのもとへ続いてるかも。
まつゆき「しの、しの……!」
ずっと名前を呼んだ。
ひっしだったと思う。
このまましのぶと会えなくなるのはいやだ。
さいごに喋ったのは、もう何日も前。
まつゆき「しのぶー! 返事をしろー… Σしの!?」
▼ けれども現れたのは
行き倒れてるこだま先生「たまご……」
▼ 地面に突っ伏した、こ・だ・ま・だった。
まつゆき「なんだ。たまごのこだまかよ」
▼ こだま先生の指先が、地面に何か書いている
『――この先、ふじた温泉。 byこだま』
まつゆき「この先、ふじた……温泉? Σう、なんだけむりが!」
▼ 突然の湯煙もくもく
その⑨ 【藤田のバスタイム】
ふじ田の声「わーい! しのちゃんとお風呂、うれしいなー」
しのぶの声「ぬいだ服はちゃんとたたみなよ、ふじ田」
ふじ田の声「へへへ。しのちゃんの足、くすぐっちゃえー」
しのぶの声「あっ、や……っ、ちょ、くすぐったい……ふじ田」
▼ パシャ パシャ(楽しげな水音)
まつゆき「……え」
ふじ田「え」
しのぶ「え」
まつゆき「……え?」
ふじ田「え」
しのぶ「え」
まつゆき「何してんの……?」
ふじ田「Σぼ、ぼくとしのちゃんで、裸の付き合いを」
しのぶ「えっと……こっちは足湯だけど;」
ふじ田「しのちゃん、えんりょしないでよー」
しのぶ「だって……は、はずかしいから////」
ふじ田「(きゅん)」
しのぶ「ふじ田?」
ふじ田「しのちゃん。大好きだよ」
しのぶ「え……あ、ありがとう?」
ふじ田「ふじたの家は、しのちゃんちも同然だよー」
しのぶ「そ、そうかな」
まつゆき「……」
ふじ田「ところで、まつゆきくんどしたー」
しのぶ「しんくん、よくここがわかったね!」
まつゆき「……きらい。」
▼ 走り去ってく松雪
しのぶ「Σえ……え」
ふじ田「わお。ちじょうの、もつれ……!」
しのぶ「Σえ……!?」
▼ 全力疾走リターンの松雪に踏まれる行き倒れの、こだま先生
こだま先生「Σたまっ ご!」
その⑨ 【藤田の樹海のお客さん:山形厳蔵】
さんばんの迷い人 『厳蔵と据え膳』
鬱蒼とした森の奥。
カア、カアとカラスが不気味に鳴いている。
……やってきました、ふじた山。その樹海!
いかに町民といえど気軽に立ち入れない魔境ですよ。俺も初めて足を踏み入れる訳なのだけど、何というか……森に対して敬意を払わないといけない気がする。しっかりと体を清め、不要なものは持ち入れない、そして持ち出さないを念頭に山頂を目指す。道らしき道がないのだけど、先へ来てるはずの鬼頭先輩たちはどう進んだのだろうか。……なんて、探検隊ぶってたらですね、
泣き?声「う……っ」
どこからともなく、切なく哀しげな声が聞こえてきて……。
それが聞き覚えのある声だったから、駆けつけました。
いや~、そしたらもう……!
泣き?声「あ……っ」
た、鷹史さぁぁぁぁぁぁぁん……!!!!
コレいったいどういう事なんですか……!
どうしてこうなったの展開ですよ~……!
いやもう“絶景”というか、“ラッキー”というか!
Σじゃなくて! 助けなくては、ですよね。凄くまずい状況ってのは、頭では分かってるんですけど……体がいう事きかなくてですね。やべぇな、見すぎか俺! 目のやり場に困るな!
いや~、下手に手出しして俺まで捕まってしまう可能性もある訳じゃないですか! それは避けたい、
▼ 何本もの太っいツタにヌルヌル絡まれ吊るされてる、囚われの鷹史
綺麗な鷹史「ご……んぞ……」
いやちょっと、
落ち着け、 俺。
どうしてそんな潤んだ目で見てくるか、鷹史さん。ていうかですね、何故こんな事になってるんです、鷹史さん。うわ、這われてるよ身体中。まるで植物自体に意思のあるような不審な動きだ。鬼頭さんの言葉を借りるなら――『エロい』まさにこれ。
緑のツタよ、グッジョブ!
じゃなかった、そこ替われ!
じゃなかった、けしからん!
綺麗な鷹史「はっ、見てないで……助けろよぉ……っ」
あ! はい!
それ以上服が溶けてしまう前に、助けます!
……夢、かな?(拝)
▼ しっかりと目に焼き付けてから行動する厳蔵
厳蔵「えーっと、ナメクジみたいな奴ですね」
鷹史「ナ、メクジ……っ! やだ~……あっ」
厳蔵「塩とかあれば撃退でき……? そうだ、ラーメンのお供にコショーを持ってたぞ!」
▼ ジャージのポケットから胡椒(調味料)のビンを取り出す、厳蔵
厳蔵「ひとまず、チャレンジしてみます!」
鷹史「はやく、何とかしろぉ! ギャーッ、ネトネト背中入ってきた!」
厳蔵「Σツタコノヤロっ! 鷹史さん、目と鼻と口を瞑って下さい!」
鷹史「え? え! この状況で無理じゃね?」
▼ 厳蔵は辺りに胡椒を振り撒いた
鷹史「Σヘ、ヘ、ヘック…」
▼ ヘックショ―――――ン ッ(森のくしゃみ)
鷹史「Σお。ほどけた~! からの、落ちる~!」
厳蔵「受け止めます!」
▼ 鷹史、まんまと危機一発★
厳蔵「あの、とりあえず状況が分からないので説明を貰えますか」
鷹史「一息ついてからでいい?」
厳蔵「いいですよ、鷹史さんが落ち着くまでいくらでも待ちます。(是非このままの体勢で!)」
鷹史「……」
厳蔵「……」
鷹史「何があったの?」
厳蔵「いや、あの……謎です。(汗)」
その⑩ 【藤田の全員集合!】
ふじたの図鑑 『ふじたの地図』
もしも、ふじた山に迷い込んでしまったら。
ここには地図なんてありません。じぶんの心に素直になりましょう。そして山に尋ねてみましょう、きっと応えてくれます。会いたい人や、会いたい場所、今はもうないかがり町の思い出たちも、山はずっと覚えています。
山頂の泉のこどもはすやすや眠って待っています。
誰か気づいて、想ってくれる事を待っています。
地底の泉のこどもは気づいてもらって安らいでます。
もう何も怖くありません。
遺跡のこどもは嘆いてます。
誰か気づいて、寄り添ってくれる事を待っています。
洞窟のおとなはお疲れです。
誰か心配してくれるのを、倒れながらも待っています。
花畑の青年は花花の香りに包まれ眠ってます。
思い出に浸りながら、たぶん誰も来てはくれないだろうと泣いています。
藤田父「ふじたのおうちはどこだっけ~♪ どこだっけ~♪」
▼ ふじたの迷子唄
藤田父「はあ。ぐるぐる迷っちゃった。はじめちゃんいないと家帰るのも一苦労だよぉ」
▼ もう何時間もふらふら山を彷徨っている、藤田父
――オ~イ キタロ~ キタロ~……
藤田父「ふにゃ? このおどろおどろしいうなり声はなんだろな」
――キタロ~ キタロ~ テメ~……
泥だらけの鬼頭「Σぐはははは捕まえたぞテメー! 藤田の一匹目ッッッ」
藤田父「Σほぎゃああああああおばけ~!」
泥んこ鬼頭「誰がお化けだ誰が、このボケ藤ボケ太郎ッ!」
▼ ポカンっ(鬼頭精一郎のゲンコツ★)
藤田父「Σふにゃ! 全身泥んこ、きみは……精ちゃん!?」
鬼頭「良く聞ェェェ、ふじた山の化け物ども! 藤田父はこの鬼頭精一郎が預かったッ 野郎を返して欲しけりゃ、攫ったかがり町民を全員無事な姿で返しやがれ――ッ!」
藤田父「Σなにがどうしてこうなったの? 穏便に、穏便に!」
鬼頭「もう日が暮れる、コッチァ一刻の猶予もねぇんだよ!」
藤田父「僕も、ふじたの家に帰りたいよぉ~…」
▼ 藤田父の鬼頭にお願い(うるむ瞳)
鬼頭「(無視) 篠塚忍、森屋守護、松雪…なんだっけ…深! あとアオバってガキ、そして俺への利息分… 耳揃えてキッチリ払えや、藤田ァァァ」
藤田父「えーと、えーと、現実問題ですね、一番最後のもの以外ならふじたはご用意立て出来ると思いま~す… ――あれ? ちなみにそれって一向に元金減らないタイプだよね、精ちゃんの円ショップ悪徳だねぇ!」
鬼頭「(もっと無視) 吐け、ガキども全員どこにいる。ちなみに鷹史は来てるのか? 他は? グーかパーか両方か、好きなの選べよな。俺ァ気が短いんだよ……、ア?」
藤田父「ちょ、ちょ、ちょうちょ……じゃなくて、ちょっと待ってゆっくり、ゆっくり」
鬼頭「取リ急ギ頼ミマース」
藤田父「えーとね、僕ね、今日…なんか変わったでしょ」
鬼頭「(笑顔)」
藤田父「床屋さんいったのね」
鬼頭「(笑顔)」
藤田父「久しぶりに、妙子さん――あ、僕の大切なお嫁さんね――に、会えるんだ~!」
▼ ポキポキ指を鳴らす精ちゃん
藤田父「それで帰ってきたものの、中々家までたどり着けなくて。ぐるぐるお山をまわってたんだ~… モリノモリモリくんなら、中層かな? ふじたの畑で見かけたよぉ」
▼ ぴたりと止まる精ちゃん
鬼頭「――畑?」
藤田父「はじめちゃん“たち”が、いろいろ育ててるんだけど。この先に “ふじたの池” があってね……」
鬼頭「――池? 沼ならあったぞ、俺はそっから這い出てきた✧」
藤田父「源流は偲びの泉……池に流れ込む川をずっと辿っていって、二又に分かれてる所があるのね、そこをもうひとつの流れの方へ歩いて行くと “ふじた畑” が現れるよ~」
鬼頭「そこへ行けば、うちの森屋がいるんだな?」
藤田父「お昼寝してたみたいだから、そっとしておいたの」
鬼頭「ひとまず森屋を回収だな。それで、残りの――」
▼ ゲコ
鬼頭「?」
藤田父「?」
▼ ゲコゲコ
鬼頭「ゲッ! 胸元に一匹紛れ込んでやがった!」
藤田父「ふにゃ! 池のカエルさん……あわわ」
▼ 藤田父、騒ぎに乗じて、しんだふり
鬼頭「おい奇太郎! あ~あ。こうなったらテコでも起きねぇよコイツ……貸しっぱの金、利率だけ跳ね上げとくからな」
▼ 藤田父の額に5 。%と書いておく、鬼頭
鬼頭「ひとまず中層、世話のかかる事務員だぜ全く……」
――いっぽう、樹海では。
鷹史「何」
厳蔵「あ……いえ」
鷹史「ゴンゾーよ。今、“彼シャツみたい♡” とかつって、イケナイコト、考えしてるっしょ?」
厳蔵「いや~……え~…ハイ。俺、このルートで良かったっす(役得!)」
▼ 山形厳蔵のシャツ(着替え)を借りて、ひらひら歩く鷹史
▼ さりげなく拝みつつ歩き、拝みつつ歩く、厳蔵
鷹史「しのぶ~! タカシ生きてるぜ~返事をくれ~!」
厳蔵「忍くん~! 三人で一緒に篠塚家へ帰りましょう」
――いっぽう、地底温泉では。
ふじ田「もぐもぐ」
しのぶ「いったい何個食べてるの、ふじ田」
ふじ田「えへへ。ななこです!」
しのぶ「食べすぎだよ。明日のぶんなくなっちゃうよ」
ふじ田「Σはっ……温泉、たまご~!」
しのぶ「はいはい、たまご……」
――いっぽう、遺跡群。
まつゆき「……迷った」
まつゆき「……くっ、」
まつゆき「……きらい。」
――いっぽう、ふじたの洞窟。
こだま先生「たまご……」
しあわせふじたのたまご祭りへ🥚つづく
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