ふじたのたまご祭り

「しのちゃん!」

「ふじ田……」

「たまごをくれないと、いたずらするぞー!」

「す、するぞー……?(困惑)」



ぽかぽか陽気の、かがり町の春。

ふしぎなふしぎなふじたの森で、たまご祭りが開催されます。

住民たちは大あわて。なぜなら主催者が、あの藤田なのですから。


※これはかがり町のおとぎ話です。


日記のようにちょっとずつ書いていきます。

ふじたのご近所の、いろんな住民・猫たちが出てきます。

4月21日がおわるまで、しょうしょうおつきあい下さい。(主役・藤田)



藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤田 藤田藤田藤




その① 【藤田の招待状】


れんらくノート 『かがり町のみんなへ』


 こんにちわ。ぼくは、ふじ田です。

 かがり小学校、二年一組です。

 こんど、ぼくの家でたまごの日をやります。

 たまごの日をやるので、あそびに来てください。

 ぼくは、にちよう日にとっても待っています。

 しのちゃんは、きっと来てくれます。

 まつ雷くんも、たぶん来てくれます。(× 雪だから。 松雪深)

 あと、こなまは来ます。


 今日、図書しつでイースターについてべん強しました。

 たまごをくれないと、ふっかつするぞ!

 いたずらするのはハロウィンでした。


 ふじた はじめ より


▼ つづく



――かがり小学校、2-1教室。(※2-1=美少年組)


しのぶ「え?」

ふじ田「え? とは」

しのぶ「イースター? ってなに?」

ふじ田「わかんない」

しのぶ「ふじ田…、図書室でべん強したんだろ?」

ふじ田「うん! うさぎとたまごと…うさぎとたまごー」

しのぶ「そ、そう…。(謎)」

ふじ田「今度のにちよう日! あそびに来てねー」

しのぶ「う、うん…。とりあえず行くよ…しんくんも行くよね?」


まつゆき「え?」


しのぶ「え」

ふじ田「え」


松雪を取り囲むクラスの女子たち「まつ雪君は行かないわよ!」

松雪を取り囲まないけど信者の女子たち「まつ雪君はヒマじゃないの!」


しのぶ「ご、ごめんなさい…」


松雪を取り囲むクラスの女子たち「ごめんね、しのづか君じゃないの!」

松雪を取り囲まないけど信者の女子たち「みんなふじ田に言ったの、ごめんね!」

全ての松雪派女子「ふじ田よ!!!!」


ふじ田「しょっく!」


まつゆき「……え。(行くつもりだった)」




その② 【藤田の星にお願い★】


ふじた家の絵本 『星のおかしりょこう』


 いちばん星は、クラッカーです。

 にばんの星は、ビスケットです。

 さんばん星は、チョコクッキーです。

 少年は星星をめぐり、おかしをどっさり手に入れました。


 ふわ~あ (藤田のあくび)


 気づけば、青い星へ帰るロケットがはっしゃしようとしています。

 少年はあわててとび乗ったので、おかしをすべてほうり投げてしまいました。

 せっかく手に入れたのにざんねんです。

 何年もかけておねがいした旅行だったのに、またいちからやり直しです。

 おとうさんやおかあさん、ともだちに、なにも持って帰れませんでした。


▼ おしまい



――その夜、ふじた家(山奥)。


ふじ田「この絵本みたいに、ぼく、まいばん星にお願いするよー」


▼ 手と手をあわせ、ぎゅっと目を瞑る藤田


ふじ田「にちよう日のたまごの日、みんな来てくれますようにー!」


▼ 一緒にお祈りするふじたの森の虫たち(※ほんの一部)



 ひらひらかがりげら (とんでる)

 かがりほうじゃく (とんでる)

 かがりひぐまむし (だっこしてる)

 かがりぴょこぴょこばった (まだはねてる)

 かがりこけこっこーむし (もうねてる)

 はっこうかがりしろちょう (ぴかぴかとんでる)



▼ このとき。

  かがり町上空(ふじた山の真上)に、ひとつめの星が流れました。




その③ 【藤田のたまご洗脳】


忍のれんらくノート 『しのづかさんへ』


 こんにちわ。たか史くん、おげん気ですか。

 ぼくもげん気です。ふじ田です。


 こんどの、にちよう日にたまごの目をやります。(× たまごの日。 しのづか忍)

 しのちゃんと、あそびに行てください。(× 来てください。 しのづか忍)


 たまごは、もちよりでわないです。げんちちょーたつです。

 なんでもつかってだいじょぶです。

 あと。よかったら、たまごで、なにか作ってください。


▼ たまご



――その夜、篠塚家。


しのぶ「あの。ふじ田から……おうちの人へのメッセージが」

綺麗な鷹史「え、藤田? コワっ、犯行予告かっ!?」


しのぶ「……たまご」


綺麗な鷹史「たまご?」

頷くしのぶ「たまご」


▼ 首を傾げながら連絡ノートに目を通す鷹史


綺麗な鷹史「何これ、たまごの目?」

しのぶ「たまご」


綺麗な鷹史「た、たまご?」

困惑するしのぶ「たまご?」


忍の目に引き込まれそうな綺麗な鷹史「たま……ご」


▼ たまご……?


綺麗な鷹史「Σハッ たまご教!? しっかりしろ忍ッ!!!!」

ぐるぐる目の忍「たまごたまご」

綺麗な鷹史「Σしのぶぅぅぅぅ!!!! 誰かぁぁぁ助けて下さぁい!」




その④ 【藤田(父)の心】


――その夜、鬼頭医院。


鬼頭先生「胸ですか…………?」


藤田父「ウン。胸がぁ、ずきずき痛むんだぁ」

鬼 頭「藤田さん、もうね、うち営業外なんですけど」

藤田父「でも僕とせいちゃんの、仲じゃぁない」

鬼 頭「誰が精ちゃんだボケタロー」

藤田父「ふにゃ!」


鬼 頭「仲とか無ェわ、いい加減どついたろかボケフジボケタロー……(ヤン座)ア?」


藤田父「Σあわわ! お医者の白衣が特攻服に見えるよぉ!」

鬼 頭「カチ割るぞゴルァー!」



事務員・森屋「あの先生、篠塚さんから先生宛てのお電話ですー」


鬼 頭「ギャアアア!」



▼ ぽぽぽぽーい ガシャン(医療用品放り投げてすっ転ぶ音)


森 屋「はいはい、わっしょい」

鬼 頭「ゴホンッ ま、まだ帰ってなかったんですか…森屋くん?」

森 屋「いけませんか?」


▼ 森屋くんの真顔


鬼 頭「残業とかいいから! 残った仕事なんか、明日やればい――」

森 屋「一度帰って、先生に差し入れっていうか、お夕飯を持ってきたんですけど」


▼ 森屋家の晩ごはんinタッパ


鬼 頭「Σア゛(俺の好物、目玉焼きハンバーグ)」

森 屋「差し出がましい事をしました。持ち帰ります」

鬼 頭「Σあ、あ……そんな」

森 屋「冷めたうちの食事よりも、【たかしの】さんのご飯のほうがいいですよね……ではこれで。僕、“実家へ帰らせて頂きますので”」


鬼 頭「も、森屋くん! おい、ちょ……」


▼ 森屋くん退室


藤田父「精ちゃ~ん。残念だったねぇ」

鬼 頭「テンメェ……藤田奇太郎ッ!」


藤田父「ふにゃ!」


鬼 頭「Σ森屋の機嫌損ねちまったじゃねぇか! あのガキ難しいんだよ、ゆとりっつーの? クッソ生意気だし、愛想無ぇし、残業しねぇとか宣言ぬかしたワリに毎日ずるずる居残りやがるし、何考えてんか、わかんねぇんだよ! 鬼頭院の大切なコミュニケーションの機を奪いやがって、テメーの心臓なんざ、どうにも知るかってんだ、ボケェ! どうせ草むらの、変な腐ったモンでも、食ったんだろが――ッッッ!」


▼ 荒ぶる精ちゃん👹


藤田父「なんだろうぅ~」

鬼 頭「知るかァァァ!」

藤田父「僕のお嫁さん、妙子たえこさんでしょ」


鬼 頭「奇太郎には勿体無ぇ、半端なく勿体無ぇ、素晴らしく良く出来た、恐妻よめッ」


藤田父「 妙子さんに逢えない間はね、僕、心がずきずき痛むんだぁ~」

鬼 頭「……」

藤田父「お嫁さんって、いいものだよぉ」

鬼 頭「ア?」

藤田父「Σふにゃ!」

鬼 頭「ノロケかテメー? 誰の差し金だ」

藤田父「えーとえーと…鬼頭家のままから、ケッコンの素晴らしさを説くようにって」

鬼 頭「あんのオニババー! 見合いはしねぇぞ!」

藤田父「藤田の伝達、おしまい」


鬼頭「――で。見返りに何貰ったよ?」


藤田父「まわらない、おしながきのない寿司シースーをご馳走になりました」

鬼 頭「つーか。身近な既婚者で、よりによって藤田を選ぶか?」

藤田父「エヘヘ」

鬼 頭「他にいんだろ、世代なら松雪とかよ… まあ、奴は寿司じゃあ落ちねぇか」

藤田父「第一の刺客として選出されたのが藤田だよ」


鬼 頭「……はぁ(大溜息)」


▼ 気落ちする鬼頭先生




その⑤ 【藤田(父)の布教】


――その後、鬼頭医院前。


暗がりに佇む森屋「……」


藤田父「ふにゃ。きみは受付くん!」

森 屋「あ、森屋です。看護師でs……今は事務職ですが」

藤田父「泣いてるの」

森 屋「ち、違いますよ!」

藤田父「つかってえ~」


▼ ぼろぼろのタオル


藤田父「鬼頭くん本当は優しいから、頑張ってね」

森 屋「Σえ。いえ、ナンの事でしょ……う!///////」

藤田父「うん? お勤めのこと」

森 屋「Σですよねハイ」

藤田父「ああそうだモリノモリくん。日曜はここ休診日だよね。これねうちの息子が主催なんだけどね…」

森 屋「森屋ですが……は、はい?」


▼ スッ……藤田の招待状


藤田父「元気がないキミもどうぞ~たくさんたまごを食べて、元気なろうね」

森屋「え……たまご?」

藤田父「うんたまごね」

困惑する森屋「たまご?」

藤田父「ふじたの森で、待ってるよぉ~ばいばい」


▼ 藤田父、帰宅


ぐるぐる目の森屋「たまご……」


▼ たまご




その⑥ 【藤田の出席簿】


――翌日、かがり小学校。


2-1担任・こだま先生「篠塚忍くーん……は、欠席と」


ふじ田「ほえ。しのちゃんかぜかなー」

あおばくん「ふじたくん!」

ふじ田「どしたー あおばくん」

あおばくん「ふじたくん、あの……!」

ふじ田「ピピピ……ピピピ(ふじたの通訳:しのづかくんは、たまご病) Σえ! たまご?」


ちょっと離れた席・まつゆき「?」


ふじ田「はてな。よくわかんないやー」

あおばくん「ふじたく―――ん!」

ふじ田「はーい(おなかすいた)」


怪訝な目で見つめる・まつゆき「……」


ふじ田「そうだ あおばくんにも、しょうたいじょう」

あおばくん「!」


▼ 信じられないといった戸惑い&喜びの表情で受け取るけれどもデカ眼鏡で表情のわかりづらい、あおばくん


ふじ田「にちよう日だよ。たのしみー」

あおばくん「ふ、ふじたくん! た まご……くん!」

ふじ田「うん? ぼくはふじ田だよー」

困惑するあおばくん「ふ、ふ、じ た た まご… たまご」

ふじ田「ふじ田だってばー」

ぐるぐる目のあおばくん「たまご」


驚愕する・まつゆき「……え。(たまご!)」




その⑦ 【藤田のたまご病】


――その頃、鬼頭医院。


鬼頭先生「Σ森屋ァァァ! 出勤してねえ~~~やっぱ昨夜、ヘマしたかァァァ!」


綺麗な鷹史「Σねぇうちの子治るの? 治るよね? 俺に出来ることなら何でもするから」

しのぶ「た、たまご……!」


鬼頭先生「しかしなァ……忍。紹介状書くから、都心の病院でMRIとってもらうか?」


綺麗な鷹史「Σやだやだ、コワい―――!」

しのぶ「Σたまごー!」


鬼頭先生「ひとまず忍は、内科的には健康そのものですから……」


綺麗な鷹史「ううっ、うっ……原因不明。忍がかわいそう。俺が代わってあげたい」

しのぶ「たまごー……」


鬼頭先生「俺の気のせいか? お前ら普通にコミュニケーション取れてるよな」


▼ たまご?




その⑧ 【藤田のもっと星にお願い★★】


ふじた家の絵本 『もっと星のおかし旅行』


 いちばんの星は、ロボットがいました。

 にばんめの星は、へいたいさんがいました。

 さんばんの星は、天使さまがいました。

 そのむかし星星をめぐった少年は、おかしどろぼうさん、といわれてました。



 ふわ~あ (藤田父のあくび)



 どの星でも「どろぼうさん」と追いかけられ、ついにつかまってしまいます。

 そんなつもりはなかったのに。少年はわんわん泣きました。

 星のひとびとは困ってしまいます。


 そのとき、まっしろな天の川から七色に光る小ビンが流れつきました。

 なかには手紙が一通あって、こきょうの青い星からのメッセージです。


「星のおかしを、かってにとってしまってごめんなさい。

 おわびに青い星のおかしを食べにきてください。

 たくさん作ってまっています。

 だからみんなのために旅してくれた少年を、ゆるしてください」


 星のひとびとはおどろき、やっと少年にたずねます。

 青い星は長いあいだ、おかしのざいりょうがなく困ってたはずなのです。

 みんないそいでロケットにのりこんで、青い星へおりたちました。


 青い星はにんげんの星。

 ありったけのざいりょうを集めて作った青い星のおかしを見て、星のひとびとまで泣いてしまいます。どれもかなしく、ひんそうなものばかりでした。


 星のひとびとは天の川で運んで、それぞれとっておきのおかしをプレゼントしてくれました。これは少年が、おとうさん、おかあさん、ともだちに食べさせてあげたかった、おかしたち。

 むかし少年が何年もかけて星におねがいしたすばらしいこと。

 それがついに叶ったのでした。


 それから夜空に星が光って流れるとき。

 ひろい宇宙の星星からそれぞれがおかしをもって、青い星へあそびに来るようになったのです。


▼ おしまいおしまい



ふじ田「わーい 父さん、もういっかい読んでー」

藤田父「Σふにゃ! はじめちゃん、もう24回目だよぉ!?」

ふじ田「あのね… だって父さんが、ふじたの家にいる夜はとてもレアだから…」


▼ 冷めた目で藤田奇太郎を見つめる、ふじたの虫たち


藤田父「おさまりたまえ、ふじたの森の虫たちよ~」

ふじ田「へへへ。今夜はたっぷり読みだめてもらうんだー」

藤田父「Σあわわ。よーし、24+1回目、レッツゴ~」

ふじ田「もちろんシリーズ一作目からだよねー」

藤田父「Σはじめちゃん、天使の笑顔でグイグイくるぅ!」

ふじ田「あ。そんなことより、今夜も星にお願いしなきゃー」

藤田父「え」

ふじ田「みんな、しゅうごう」


▼ 輪になってお祈りする、藤田と藤田父とふじたの虫たち


ふじ田「にちよう日のたまごの日、うまくいきますようにー」


▼ このとき。

  かがり町上空(ふじた山の真上)に、ふたつめの星が流れました。



――その頃、篠塚家。

無意識に寝床を抜け出す、しのぶ「たまご……」


――その頃、森屋家。

無意識に寝床を抜け出す、森屋「たまご……」


――その頃、万賀家。

無意識に寝床を抜け出す、あおばくん「たまご……」



▼ ふしぎな森の景色を夢見ながら、玄関を出て、いずこへと歩いていく




その⑨ 【藤田の事件簿】


ローカル版・トップニュース 『かがり町住民・失踪事件』


 昨夜未明。かがり町におきまして、住民数名が行方不明となり、いまだ発見に至りません。現在も、警察の必死の捜索が続いています。行方が分からなくなっているのは、かがり町のこどもから大人まで。最後に目撃された場所と時間にも、ばらつきがあります。事件か事故か、判断しかねるといった状態です。



――騒然のかがり小学校、2-1教室。


2-1担任・こだま先生「ふぅ……もう知っていると思いますが、このクラスでも何人かの児童が行方知れずなのです。今日からしばらく帰りは集団下校になります。放課後は、ひとりでは外へ出ないこと。そして何でもいいです。何か見たり聞いたりして知っている人がいたら、職員室まで教えに来てください」



しょんぼりふじ田「しのちゃん……」




その⑩ 【藤田のお誘い】


――放課後、2-1下駄箱にて。


まつゆき「ふじ田」


ふじ田「ほえ? まつゆきくんだー」

まつゆき「なにか知ってる?」

ふじ田「なにお?」

まつゆき「……しの、だよ。うちより、近所でしょ」

ふじ田「ううん」

まつゆき「ひそひそ……家にかえったら、しのぶの家しゅうごう」

ふじ田「え。いえに、かえったら、しのちゃんち、しゅうごう?」

まつゆき「し、しずかに」

ふじ田「いいよー!」

まつゆき「Σいいのか」

ふじ田「じゃあ まつゆきくん またすぐあとでねー!」

まつゆき「ばかっ、しーっ!」


背後からこだま先生「うんうん。松雪深くん。ちょっとお話聞かせてもらえますでしょうか」


まつゆき「Σわ  ぁ!(驚)」

ふじ田「あ。そうそうまつゆきくん。そろそろこれあげるよー」


▼ でた! 藤田の招待状


まつゆき「ついに来たか……;」

こだま先生「こどもちゃんたち。これは先生が預かります。早く、みんなと帰りなさい」


ふじ田「えー」

こだま先生「えー、じゃありません」


ふじ田「先生、たまごチケットほしかったの? ふつうにあげたのにー」

こだま先生「はい? いりません」

ふじ田「にちよう日、こいびとさん、と来てねー」

こだま先生「い・ま・せ・ん」

まつゆき「あは。別れた?」

こだま先生「わ・か・れ・た・はやく帰りなさい」


ふじ田「さよなら~」

まつゆき「さよなら」


さよならがグサッときた・こだま先生「Σまったく。帰りがけに、こんなもの配っちゃだめたまご……」


▼ たまご……(涙)




その⑪ 【藤田の家庭訪問】


鬼頭精一郎 『心の声』


 あー…… やばい。

 あー…… まーじやばい。

 これ、完全タイミングだよな。

 これ、完全絶妙なタイミングだよな。

 何で泣いてるだけでこんなエロいの、コイツ。

 落ち込んでるところにつけ込むような「アレ」ではあるが、

 ここでやらんと、また長らく後悔するはめになるだろう。

 ……勝負!(ごくり)



――篠塚家。ソファに浅く腰掛け、塞ぎ込む鷹史。


鬼頭「鷹史ー、泣いてんじゃねぇよ」

綺麗な鷹史「は?」

鬼頭「は? じゃねぇだろ」


▼ 冷静を装い隣に座る、鬼頭


綺麗な鷹史「何だよ……(ぐす)」

鬼頭「お前の事だし、ウザがられるほど一晩中、ずっと忍にくっついてたんだろ?」

綺麗な鷹史「当ったり前だろ! ……お?」


▼ 鷹史の頭を掴んで強引に自分の肩へと引き寄せる、鬼頭


鬼頭「休めよ。鷹史、お前までおかしくなっちまう……」

鷹史「……」


鬼頭「……////」

鷹史「……ぞ」


鬼頭「あ何?」

鷹史「……泣くぞ」


鬼頭「もう泣いてんだろ」

鷹史「……もっと泣くぞ」


鬼頭「いいぜ」

鷹史「……ううっ、しのぶぅぅぅぅ、うわぁぁぁ」


鬼頭「✧(ひとまず素数を数えてる)」

鷹史「忍までいなくなったら、俺、今度こそ死ぬから……」


鬼頭「ア? いいや許さねぇぞ鷹史。馬鹿な真似ができねぇように、痛めつけてやってもいいんだぜ」


▼ 鬼頭の手が悪さをはじめる


ゾワゾワきた鷹史「え……っ!」

額をくつける鬼頭「それよりさ、鷹史……俺ら、そろそろ」



♪ ピンポーン



鬼頭「無視」

鷹史「う、うん……」


♪ ピピーンポン


鬼頭「つーか鷹史さ、今日もまた一段と……(ドエロい服だな)」

鷹史「……ちょ、いやだ(背中を不自然に這ってくるのは鬼頭さんの、手……!)」


♪ ピピピピピピン ポーン ピンポーン


鬼頭「えええええ、勘弁しろよ。何?」

鷹史「藤田、くん……かな?////」

鬼頭「まさか、アレ、永遠に鳴る?」

鷹史「鳴る。」

鬼頭「エー……ちなみに、玄関の鍵は」

鷹史「かけてない。」


♪ ピンポン ガララ……


遠くのふじ田の声「わーい げんかんあいてたー」

遠くのまつゆきの声「無用心だな」

遠くのふじ田の声「でわ、おじゃましまーす」



鬼頭&綺麗な鷹史「!!!!」


▼ どた! ばた! どすん!




その⑫ 【藤田のマウント】


鬼頭「Σウギャアアアテメェー鷹史! いきなり突き飛ばす事ねぇだろ、今のでシャツのボタンが吹っ飛んだじゃねぇか!」


鷹史「鬼頭さんこそ、俺の超超超大大大好きなシャツ、背中から引きちぎっただろッ!」


鬼頭「知るかァァァ! 似たようなクソ豹柄シャツ、たくさん持ってんだろが」

鷹史「ヒョウじゃないですぅ~。これはゼブラ柄です~バ~カ」

鬼頭「ウッワ、腹立つ……だいたい泣き腫れまくって顔、ドブスだっつーの、鏡見ろやボケェー」


鷹史「Σあああああ゛⁉ ついさっきまで、そのドブスにセクハラしてたのは、ドコのドノ医者……えっ。タカシ今日そんなにドブスだった? Σじゃなくて、うるせぇなエロ医者!」


鬼頭「エロいのはテメェだろが、毎日毎日ピラピラの服着やがって、真っ昼間から頭おかしいの? 誘ってんの? 応えちまったんだけど、未遂だけど!!!!」


鷹史「Σおまっ、ひとを痴漢のように……」



物陰から見つめる・ふじ田「わおー! ちじょうの、もつれ」

物陰から見つめる・まつゆき「ちじょうの、もつれ? って何」


▼ みつめあう、こどもふたり


オトナな・ふじ田「まつゆきくんは、まだ知らなくておっけー」

ピュアな・まつゆき「?」



鬼頭「ガキども何だ、何か用かっ⁉」

鷹史「こどもの前で、荒い言葉は使いやめろよ」


ふじ田「やっほー せんせい&たか史くん」

まつゆき「しのぶ、さがしに来た」


鬼頭「しのぶ? ア? いねぇよッ・・・・・

鷹史「ガーン」


▼ 改めて言葉にされたショックで気絶する、鷹史


鬼頭「Σ鷹史―――ッ!!」



ふじ田「わおー」

まつゆき「会話にならないな」

ふじ田「とりあえずここで、“ひみつ会ぎ” をします!」

まつゆき「というより、“ふじ田の取り調べ”をする!」


ふじ田「……あれ?」


まつゆき「きとう先生もいるしちょうどいい、かがり町で一番あやしいふじ田を調べる!」

ふじ田「そんなー! えんざいだー」


鬼頭「おお。藤田の口から冤罪!」


▼ 藤田の急展開




その⑬ 【藤田の取調べ】


松雪手稿 『たまご洗脳および、たまご病について』


第一日目:水曜日

 二年一組の異変:教室にて、藤田が「たまごの日の招待状」を配布し始める。(※たまごの日とは、イースター(復活祭)の事を指すらしい。)

 町の異変:この夜、かがり天文台にてふじた山頂上付近に隕石の落下が確認された。



第二日目:木曜日

 二年一組の異変:クラスメイトが「たまご病」を発症し始める。藤田から「たまごの日の招待状」を受け取った直後に発症。それを目撃。(※この日、篠塚忍が欠席。のちに鬼頭医院の鬼頭先生により、たまご病(仮称)であった事が判明する。)

 町の異変:住民複数人が失踪。この夜も、かがり天文台にてふじた山頂上付近に隕石の落下が確認された。



第三日目:金曜日

 二年一組の異変:欠席者=たまご病=「たまごの日の招待状」を受け取った人。集団下校になった。

 町の異変:


▼ ここで松雪の手が止まる



まつゆき「まずいんだけど。さっき……こだまが、招待状パクったよな」

ふじ田「こだませんせい? うん!」

まつゆき「こだま! きっと今ごろ、たまご病じゃん……」


鬼頭「すまん、ちょっとすまん、どういう事なんだ?」


まつゆき「今、かがり町が大変になってる!」


鬼頭「あ、ああ。分かるんだ、分かるんだが……たまご病って『たまごたまご』言って、それしか喋れなくなる、あの症状だよな? ……で、『こだま』に『たまご』は関係あんのか? 新種? こだま病?」


まつゆき「は? ちがうから」

鬼頭「Σそうかよ!」


まつゆき「見たんだ」

鬼頭「何を」

まつゆき「クラスメイトが『たまご』しか言えなくなった」

鬼頭「!」

まつゆき「ふじ田から招待状をもらったあと、だ」

鬼頭「うわ……まさにそれ。何だ、原因藤田かよ~!」


ふじ田「ぼく、なにかしちゃったのかな? てがみ書いただけなのに……」


まつゆき「思い出せ。絶対にヘンテコな事したはず」

ふじ田「うーん」




その⑮ 【藤田の保釈(執行猶予付き)】


鬼頭「あのさ、警察が捜してるからひとまず今日は家に帰りな。送ってくから」


まつゆき「ダメ。しのを……しのぶを、探さないと!」


鬼頭「それで突っ走ったガキから、更なる失踪者が出てくれても困るんだわ。わかるか、松雪深?――せいぜい、たまご病とやらに罹らんように気をつけるのが、お前に出来る唯一の事。ほらほら松雪父がブチ切れて乗り込んで来る前に、帰んぞー」


まつゆき「……きらい。」

鬼頭「ア?」


ふじ田「あ。そうだー きとう先生にも、しょうたいじょうを……」


▼ 全力で取り押さえられる、ふじ田


まつゆき「だから、ふじ田!」

鬼頭「藤田は俺らの話、聞いてたか?」


ふじ田「あ りとる」


まつゆき「……おまえ、絶交予備軍」

ふじ田「しょっく」


鬼頭「な、ガキどもこうしよう。藤田は今日一日、“たまご招待状”を送りつけるのを禁止な。他、宿題以外、何もしない事」


ふじ田「はーい」

鬼頭「松雪深は、今日一日、家でおとなしくしてる事な」

まつゆき「……はい」


鬼頭「約束な。明日は土曜で学校休みだな? 何か変化があったか、鬼頭先生と調査しよう」

まつゆき「はい!」

ふじ田「わーい!」


▼ ゆびきりげんまん


鬼頭「鷹史、ちょっくらガキどもを送ってくっから」

鷹史「……忍が帰ってきた以外の報告いらない」

鬼頭「そうかよ」




その⑯ 【藤田のもっとたまご病】


――その夜、かがり町駅前コンビニ。


帰宅途中の厳蔵「あ~新商品、味噌豚骨! クーッ! 山菜高菜めんたいメーン、かがり製麺も新作キターっ! 厳蔵感動の極み、こんな幸せで良いのだろうか今日の品揃え最高っ。鷹史さんに怒られそうだが…、大型連休は部活指導頑張るし…、景気づけに一杯、いや二杯、うーん、まとめて棚のこっからここまで(一列)全部買うぞー!」


▼ どっさりカップ麺を買い込んで出てくる高校教師・山形厳蔵


厳蔵「鷹史さんの店行く前に、自宅寄ってこれ置いて。ひとつ食っとくかー!」



……ご


……まご



厳蔵「?」


夜道をふらふら放心状態で歩く・こだま先生「たまご……」


厳蔵「Σうわコワっ! 何だ、クスリでもやっているのだろうか。いや病気という可能性もー……(葛藤)……おい、あんた大丈夫か!」



……ご


……まご



こだま先生「たまご……!」


▼ 突然の強風


厳蔵「Σう……何だ」


▼ 風に煽られて、かがり町の木々がざわめく


厳蔵「今夜は町中が変だな――と、おっと?」


▼ こつぜんと消えた、こだま先生の姿


厳蔵「えーと。疲れてるのかな、俺……(どきどき)」


▼ たまご~👻




その⑰ 【藤田の星にお願い……しない】


――その夜、ふじた家(山奥)。


ふじ田「しょんぼり」

藤田父「はじめちゃん、今日はご本読まなくていいの~?」

ふじ田「うん……」

藤田父「はじめちゃん、今日はお星さまにお祈りしなくていいの?」

ふじ田「うん……今日は、だめなんだー」

藤田父「元気ないねぇ。じゃあ、ぱぱと眠ろうかぁ」

ふじ田「ううん。それは、だいじょぶー」

藤田父「Σそ、そうなんだぁ~」

ふじ田「おやすみなさーい!」


▼ なんと! この夜は。

  かがり町上空(ふじた山の真上)に、星は流れませんでした




その⑱ 【藤田の土曜日】


貼り紙 『忍を探す旅に出ます。 たかしの・店主』


 いつものお客様各位

 誠に勝手ながら、無期限休業と致します。

 ご迷惑をおかけしますが何卒ご了承下さい。

 

 だいじなしのぶへ

 いれちがいで、かえって来てたらごめんね。

 もし、おうちにダレもいなかったら、森屋さんちへ行っててね。

 れんらくもちょうだい、タカシのケータイ番号かいとくからね。

 ぶじでいてね。


 ○○○-★★★-♡♡♡♡ (※鷹史の個人番号)


▼ 涙でぐしゃぐしゃの鷹史直筆(※超絶達筆)



――篠塚家前。


鬼頭「Σ鷹史―――ッ!!」

厳蔵「あれ、先輩。おはようございます。土曜の朝っぱらからどうしたんですか?」

鬼頭「ゴリラか! 読め、これ!」

厳蔵「え? (嫁…?)」

鬼頭「しくじった~……今度は鷹史まで失踪だ;」

厳蔵「え? え? 何です、それ……」


▼ たまご事情を知らない厳蔵


厳蔵「ええっそんな事が! だから昨日は店休だったのか~」

鬼頭「鷹史が凹んじまって、一晩中泣き通し……疲れたわ」

厳蔵「――はい?」

鬼頭「朝方……俺が一度帰宅したその隙に、出てっちまいやがった」

厳蔵「はい? 先輩、篠塚家に泊まったんデスカ?」

鬼頭「あ……泊まったというか、傍についてたというか、何というか」

厳蔵「ちょっと……おい、包み隠さず吐いてもらうぞ」

鬼頭「いや別に、何したとかそういう訳ではなく~……あ、でもまあ✧」

厳蔵「――その歯切れの悪さ、何だ、何なんだ?」



まつゆき「あれ、ゴンゾー? たまご探し参加するの?」



鬼頭「よぉ、松雪の倅! 定刻だな」

厳蔵「松雪くんか、おはよう! 参加って、何だい?」


まつゆき「今日、しのぶ探す。きとう先生と、あとふじ田で」


鬼頭「ゴリラは、今日はオフか?」

厳蔵「いや~、部活があるんで夕方まで学校っすね~」

鬼頭「働き者のゴリラだな」

厳蔵「部活持っちゃうとね~」

鬼頭「今、どこまで行ってんだっけ」

厳蔵「都心ですよ、都心」

鬼頭「へぇ。都心のゴリラ」

厳蔵「でもそろそろ、“地元に赴任希望” 出そうかなと思ってて」

鬼頭「地元ってまさか……かがり高校? え、お前がガリコー教師に?」

厳蔵「母校ですしね。あそこでバスケ部指導できたら、念願叶ったりです」

鬼頭「つーか。ゴリラって何のセンコーだっけ、体育?」

厳蔵「Σ国語ですよ! そして、バスケ部の顧問」

鬼頭「へ~」

厳蔵「今ってほら、男子バスケが落ち目じゃないですか」

鬼頭「弱い。本当に勝てなくなったわ……」

厳蔵「俺、トライしたいんすよ! でもガリコーって毎年の倍率が高くて~」

鬼頭「あ…そう? ちょっとコネ使ってやろうか?」

厳蔵「はい?」

鬼頭「お前、根回しヘタそうだもんな。つっても卒業生だし、いけるだろ」

厳蔵「はあ」

鬼頭「それで、来年からガリコーでいい?」

厳蔵「え?」

鬼頭「松雪も――親父に、それとなく頼んどけよ。今期、初当選だろ?」


まつゆき「別に、いいけど?」


厳蔵「あの~今すぐには無理ですよ。俺、一年生を受け持ったばかりなので」

鬼頭「ガリコー・バスケ部。また全国区になる日も近いかもな!」

厳蔵「聞いてます?」


まつゆき「きとう先生も、うちの父と同じバスケ部だったの?」


鬼頭「あー……俺は、問題起こして【除籍】。それに実家が外科医だったし、手に怪我ができなくてな✧」

厳蔵「怪我って……喧嘩は、当時から散々してたでしょうに」

鬼頭「ハッハッハ! ウルセーゴリラだな」


まつゆき「バスケか……」


厳蔵「おや、興味ある? 今度、“みかづき公園” で教えるよ。忍くんもバスケをやりたいって言ってくれたし」

鬼頭「おお、忍がか⁉ さすが血筋だな」


まつゆき「しの? じゃあやる……////」


鬼頭「纏まるもんだな」

厳蔵「おお、いいじゃないか。きみたちが高校へあがる頃に、ガリコー赴任しよう」


まつゆき「やった。しのと一緒……!」




その⑲ 【藤田のたまご情報】


厳蔵「おおっと、もうこんな時間か。鷹史さん……ひと目だけでも見たかった、


  ――あ。」


鬼頭「何ゴリラ、あ。って」


厳蔵「あの~そういえば、昨夜なんですけど。駅前のコンビニ出たところで『たまごたまご』とボヤきながら徘徊する不審者を見かけたんですよ。一瞬の事なんで、幻かもなんですけど……」


まつゆき「それ、たまご病だ!」


厳蔵「やっぱり? しかもそいつ雰囲気的に、俺と同業っぽいんすよね~」

鬼頭「ブハッ……ゴリ語の教師?」

厳蔵「(無視) 服装は洒落ていて、上はセーター、下はスラックス」

鬼頭「――洒落てんのかそれ?」

厳蔵「かがり町では、俺は見た事ない男でしたね~」


まつゆき「ねえ! セーターって白だった? ここにボーダーと、腕にワッペンとか入ってた? ズボンは灰色?」


厳蔵「Σえ? 確か…うん」


まつゆき「どんなかお? ネムそうだった? いつも半目なかんじ?」


厳蔵「そ、そこまでは;;;」

鬼頭「何だ松雪、知ってんのか」


まつゆき「ぜったい、こだま! クラスの先生!」


厳蔵「小学校の先生だったか~! ……不思議な事に、よくよく思い出してみるとその人、道なりに歩いてた訳じゃないんだな。何かに引き寄せられるように、直進していた。しかし建物だったり塀だったり、当然障害物があるわけで。そこを無心に、真っ直ぐ、真っ直ぐに行こうとしていた……あ! 思えばその先、遠くにあったのは【ふじた山】だ! そうか。たまごのこだまは、ふじた山の山頂へと引っ張られてた事になるんだな!」


鬼頭「またふじた」

まつゆき「ふじた」


▼ ふじた




その⑳ 【藤田の包囲網】


鬼頭「何だ、また藤田かよー。目的地が絞れたわ」

まつゆき「やっぱり、ふじた。出発しよ」


鬼頭「問題は【ふじたの樹海】が開かれてるか、だ」

まつゆき「……(ごくり)」

鬼頭「最悪の場合、遭難な……」

厳蔵「Σふじた山へ入るんですか――うわ、正気?」

鬼頭「おそらくだが他の行方不明者も、ソコだろ。忍も、うちの森屋も……あと、たまごのセンコーだっけ?」


まつゆき「こ・だ・ま!」


慟哭の鬼頭「俺らが戻らなかったら……あとは頼んだぜ、ゴリラ」

慟哭のまつゆき「じゃあね」

慟哭の厳蔵「先輩の事は嫌いですけど、そういうとこだけは尊敬してるっす!」


▼ 厳蔵の敬礼




――その頃、藤田家(山奥)のいりぐち。


ドタバタふじ田「ちこく、ちこくー! ……あれ?」


▼ ちょこんとうずくまって眠る、忍


ふじ田「えっ。しの……ちゃん?」


▼ ひとまず、ぽむぽむと頬をつついてみる藤田


ふじ田「まちがいない、しのちゃんだ! わーい」




 もっとふじたのたまご祭りへ🥚つづく




 ふと書いていて思ったこと。

 ふじたのたまご祭り=ふじたの黙示録。

 

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