ジョン・ウー版「君の名は」(大嘘)……「フェイス/オフ」

 ――FBI捜査官のアーチャーは、かつて息子を射殺した凶悪なテロリストのトロイを追っていた。テロ計画を実行寸前であったトロイを逮捕したアーチャーだったが、彼は昏睡状態に陥ってしまう。計画をトロイの弟から聞き出すため、アーチャーはトロイの顔を移植し彼に成りすまして弟と接触を図るが、昏睡状態から目覚めたトロイは関係者を殺害しアーチャーの顔と地位を奪い、成り済ます事に成功する。テロリストがFBI捜査官に、FBI捜査官がテロリストに入れ替わり、アーチャーはトロイとして追われながら宿敵の逮捕と奪われた地位と顔を取り戻すため奮闘する――


 ニコラス・ケイジ大暴れトリロジー第三弾。香港アクション映画の巨匠にして「二挺拳銃の生みの親」であるジョン・ウーがメガホンを取った壮烈な「成り代わりアクション映画」だ。ニコラス・ケイジとジョン・トラボルタの二大スターを主役に据えて、入れ替わったテロリストとFBI捜査官が死闘を繰り広げる壮大なストーリーが展開される。


 悪役が多いジョン・トラボルタが正義の役を、正義漢役が多いニコラス・ケイジが悪役を演じるという意外性のあるキャストから始まり、2人の立場が逆転するという話は意外性があり、2人がそれぞれ「一人二役」を見事に演じているのがまず面白い。物語においても「悪党だが正義の身に置かれる男」と「正義の身ながら悪党にされてしまった男」の野心や苦悩を描いている。


 主人公は法機関の人間なので、テロリストとして刑務所に入れられて以降はかつての同僚や警察組織と戦わなければいけなくなるジレンマを抱えている。一方でテロリストであるトロイはFBI捜査官の肩書きを手に入れてからは自分のかつてのコネや知識をフル活用し、ゲシュタポと批判される程の強引捜査でより高い権力を誇示していく、この対比も面白い所だ。

 2人が争う過程で、互いにどのような肉親がいるのか、そしてどんな問題を抱えていたのか、等と真相を知っていく所や、2人の対峙や関係を比喩するような演出(鏡ごしに互いを撃ち合う銃撃戦とか)をモリモリ入れていくのも際立っている。


 ジョン・ウー特有の「燃える男のアクション節」が炸裂している今作は90年代のニコラス・ケイジ主演アクション映画の最後を飾るにふさわしい映画だろう。

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