アルカトラズは男たちの死闘で燃え上がる……「ザ・ロック」

 ――アメリカ合衆国海兵隊のハメル准将は、非合法の秘密作戦で部下を政府に見殺しにされ、散って行った部下を弔う事も、遺族への賠償もないという現実を前に武装蜂起。VXガスを強奪し部下と共にアルカトラズ島を占拠、サンフランシスコ市民を人質に政府へ遺族への賠償と戦死した部下の名誉回復を訴える。これを前に政府は対策チームを組織し、事態の鎮圧と人質解放を目的に精鋭部隊ネイビーシールズと、化学兵器のスペシャリストのグッドスピード、そしてアルカトラズに熟知した囚われの老スパイ、メイソンを送り込むが――


 1990年代後半に現れた最高のアクション映画だ。あのマイケル・ベイ監督と、ジェリー・ブラッカイマーという黄金コンビと、名優ショーン・コネリー、エド・ハリス、ニコラス・ケイジという豪華キャストが共演している、盆と正月が一挙に来たような傑作である。個人的にはこの後の「コン・エアー」「フェイス/オフ」と続けて「ニコラス・ケイジ大暴れトリロジー」と呼びたい所。


 かれこれ20年前の映画なのだが、正直今見ても未だに面白いの映画である。あらすじはシンプルな勧善懲悪に陥っておらず、「義」によって決起した軍人と、それを鎮圧しようとする政府、そして事態を解決しようと現場で戦う孤立無援の男2人という3者の物語が違和感なく混ざっている。三者は「毒ガス搭載ミサイルの発射」「発射阻止のための無差別爆撃」という二つのタイムリミットに追われているので物語の疾走感もかなり良い。


 キャラクターたちの造詣も秀逸で、悪役の筈のハメル准将は芯が通った男で悪役なのに応援したくなるし、戦闘が不得意だが化学兵器のプロであるグッドスピードと、戦闘のプロである老兵という凸凹コンビがミサイル発射阻止のため協力し、理解と信頼を得ていくという展開は見ていて心地が良いぐらいだ。特に老スパイのメイソン役に往年のボンド俳優のショーン・コネリーを起用しており、味わい深いキャラになっている。


 アクションも面白く、今や観光地となった監獄島アルカトラズで盛大なドンパチが繰り広げられる。戦闘のプロである海兵隊員たちとの死闘は銃撃戦、肉弾戦とバリエーションに富んでるし、シャワー室でのシールズVS海兵隊の悲壮感たっぷりな戦闘や、割れたらアウトな毒ガス兵器を抱えながらの銃撃戦、トロッコに乗っての戦闘など見所沢山だし、爆発の火薬量もめちゃくちゃ多い。マイケル・ベイ節が炸裂しているのが最高である。


 また、今見ると映画の構成も目を見張るものがある。アルカトラズで死闘を繰り広げる映画であるが、実は肝心のアルカトラズへの潜入は映画のぴったり真ん中という結構遅いものになっている。前半は登場人物のバックグラウンドや、潜入するまでの準備に割かれているが、カーチェイスや小ぶりなアクションを適度に挟みつつ、テンションを下げずに物語を牽引していて、かなりよく出来た映画だと関心する。


 90年代アクション映画のイコンたる作品と言っても過言ではないだろう。

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