ゾンビはいるけど人生凄く楽しそう……「ゾンビランド」

 ――ゾンビが蔓延し地球は生ける死人たちの楽園と化した世界。冴えない大学生だったコロンバスは生き残るためのルールを厳格に設定し、厄災を切り抜けていた。道中出会ったゾンビ狩りとトゥインキー(アメリカの菓子)中毒のタフガイ、タラハシーと出会い行動を共にする。更に詐欺師姉妹のウィチタとリトルロックも旅に参加、4人はゾンビがいないとされる遊園地パシフィック・プレイランドへと向かうが――


 近年は「ヴェノム」の監督で知られるルーベン・フライシャーの監督デビュー作品。ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、 アビゲイル・ブレスリン、エマ・ストーンら豪華キャストが出演している。ゾンビだらけの世界になったアメリカを舞台に、癖のある登場人物が楽しそうな逃避行を行うゾンビロードムービーだ。


 ゾンビ映画であるが、ホラーなのはリアル気味なゾンビのメイクぐらいで、激しいゴア描写も無し、ソフトでホラー映画入門者には丁度いいくらいのスナック感覚な映画に仕上がっているが、ショーン・オブ・ザ・デッドのようなゴア山盛りのコメディゾンビホラーを想像すると肩透かしを食らうかもしれない。ハリウッド映画だし。


 ゾンビ映画であるが、主役の生存者たちのキャラクターが立っていて面白い。冴えない大学生主人公はあからさまに童貞くさいがサバイバルのルールを課して器用にゾンビ世界を生き残っている、タフガイでゾンビ殺しのプロではあるけど過度なトゥインキー中毒の親父、生き残るために詐欺をしているが根は悪くない詐欺師姉妹など、物語を賑やかす事間違い無しな連中が、ケンカしたり結束したりしながら目的地を目指していく筋書きで、何とも見ていて楽しい。


 ゾンビにより世界は崩壊しているが、なぜかそこら中電気が通ってたり武器弾薬満載の車が唐突に手に入ったり、とりあえず二度撃ちしとければ殺せるぐらいゾンビの耐久値がゆるかったりとご都合主義的な世界が広がっているが、逆に言えばこれくらいゆるーい舞台設定で無ければこれだけの笑いやお気楽さは生まれなかっただろう。ウォーキング・デッドのような殺すか殺されるかの殺伐とした荒廃しまくり世界観や、ロメロ作品の様な寒く閉塞的な世界だと逆に浮く作品だ。


 物語も、ロードムービーの楽しさに合わせて登場人物の成長や変化、寄り合いの他人同士が結束していく団結感もあったりと王道的な面白さが用意されているので見ていて楽しい。ポップで飲みやすいゾンビ映画だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る