いつだってデスマーチで血を流すのは現場の人間……「遠すぎた橋」
――1944年の西部戦線。連合軍はノルマンディー上陸作戦を成功させ、ドイツ軍をクリスマスまでに降伏へ追いやる「マーケット・ガーデン」作戦を立案する。イギリス・アメリカを含む連合軍の戦力を総動員し、ドイツ占領下の国家を解放するための作戦が実行へ移された。しかし、連合軍将校たちの予想とは裏腹に、作戦は思わぬ方向へと転げ落ちていく――
連合国の戦争映画はほとんどが勝ち戦の映画だが、今作は超大作にも関わらずボロッボロに負けた作戦、それも周到に準備して大量の兵員を投入した癖に作戦成功に至らなかったマーケット・ガーデン作戦を描いている。
オールスターの戦争アクション映画として見る事も出来る映画だが、個人的にはこの映画はジャンルとして「デスマーチ映画」がぴったりだと思う。むしろそういう映画として見ると一番しっくりくるし納得出来るだろう。
連合軍の将軍たちが立案した作戦が、一見完璧なように見えて実は少しの不手際で容易く瓦解する代物だった、という光景は「少しのミスで役に立たなくなるプロジェクト」と置き換えれば会社や組織に身を置く人間なら痛いほどその怖さが実感できるだろうし、それらの強行軍に付き合わされる現場の人間――すなわち前線の兵士たちのやるせなさや悲壮感も、末端で働く人間であれば共感できるはずだ。
連合軍の進撃スピードが落ちてドイツ軍相手に苦戦していき戦況が悪化していく様は、不手際やミス・計画の遅延が雪だるま式に事態を悪化させ、自分が携わった仕事がボロボロになっていく様を経験した人なら「あるある」と思いたくなる事必至だ。
華々しくドラマティックな成功話とは程遠い「負け戦」の話ではあるが、不思議と後味は悪いものではないのは悲壮感と勇壮感が入り混じる今作のメインテーマの力もあるかもしれないが、そういった状況に対して共感を呼ぶこその結果ではないか、そう思えて仕方なくもある。
もちろん、通常の戦争アクション映画としても十分に楽しめる力作だ。まだCG技術も無かった時代、迫力と物量のある戦争映画を撮るのは相当の労力と予算が必要な時代であった。今作もまた、実物兵器や本物の爆発を駆使した戦闘シーンを、潤沢な予算とすさまじい数のエキストラを用いて実現している。
また、予算が殆どギャラに消えてるのではないかと思うほどの俳優が、湯水のごとく投入されているのも特筆すべき所だろう。ロバート・レッドフォード、ジーン・ハックマン、アンソニー・ホプキンス、エドワード・フォックス、マイケル・ケイン、ショーン・コネリー……など列挙するとキリがない。まさに超大作と言って差し支えない映画だろう。
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