個人的にスパイ映画で1、2を争う傑作……「スパイ・ゲーム」
――引退間際のCIA工作員ネイサン・ミュアーの元に、彼の教え子でもあった工作員のトム・ビショップが中国で捕らえられたとの情報が届く。刑務所でのスパイ活動中に逮捕されたビショップは、政府とCIAの意向により見殺しにされようとしていた。この事件で証言を求められたミュアーは、スパイとしての引退前最後の仕事として、ビショップ救出のために中国、そしてCIAをも欺く行動に打って出る――
好きなスパイ映画と言えば?と聞かれると「007シリーズ」「ミッションインポッシブルシリーズ」「ジェイソン・ボーンのシリーズ」数多の作品を抑えてダントツで一位か二位に挙げたい映画が「スパイ・ゲーム」だったりする。
何で順位を迷ったかというとその後に現れた「裏切りのサーカス」とかいう超傑作も同じくらい好きなのが理由だが、まあそのタイトルについては追々語るとしよう。
で、「スパイ・ゲーム」は正直世間ではそんなに語られてない部類の映画だと思う。スパイ映画の話題が出ても正直身の回りではあまり語っている人は居ない。トニー・スコット監督の映画を話題にすると大抵出てくるのはトップガンだろう。
でも激烈に押したい理由が目白押しの映画で、自分の琴線をはちきれんばかりに刺激する映画でもあるのがコレだ。
そう、色々と良い要素が満載だ。
まず主役2人の関係。主人公のミュアーはCIAで長年勤務していたベテラン工作員で、CIA長官から表彰を受ける程のスパイ・マスターであり、任務の為ならどんな非情な判断も下せるスパイの中のスパイのような男だ。
そして、ミュアーの元で工作員として鍛え上げられたもう1人の主人公、若手のCIA工作員ビショップはスパイとしての高い素質を持ちながらも人としての「情」を捨てきれない人間臭い男として描かれる。
情で任務をトチりかけたビショップをミュアーが非情なスパイの矜持で説教する下りから、スパイとしての頭角を現し、いつしか師匠に匹敵するスパイになりつつあるビショップの活躍、そして保を分つ事になったある事件……そんな2人の関係に惹かれまくってしまう。
基本的に物語は現代と過去、そして刻一刻と進んでいく状況がすべて同時並行で展開される。トニー・スコット流のチャカチャカした演出で「ベトナム戦争」「東西ベルリン」「ベイルート」「ソ連」などのスパイ物に欠かせないような単語や状況がメリーゴーランドのように駆け巡るのも好きな人にはたまらないだろう。
また、(政治的な面についてはさておいて)地味ながら凄いスパイの活躍も淡々と描いているのが好きな所の一つで、現地に潜入し敵に欺き、段ボールをかぶりながらCQCを駆使して暗殺や破壊工作をする事はなく、裏で手を引き協力者を利用して情報や成果を引き出したり、状況を分析したり情報や重要人物を移送したりと、比較的リアリティ寄りのスパイ描写が展開されるのも渋くて良い。
実際、ミュアーは映画が始まってから終わるまでの間、CIA本部から一歩も外へ出ずに電話回線とコネクションと手に入った情報だけを武器にビショップの救出という無理難題をクリアしようとする。文字通りの情報戦で攻めるスパイ戦の映画だ。
ラストシーンで伏線とそれまでの展開が集結するシーンもスッキリするし、ロバート・レッドフォードの渋さとブラッド・ピットのカッコよさを心行くまで堪能できる。自分にとって最高のスパイ映画だ。
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